メンタルヘルス16 休職期間満了による退職を有効と判断した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、休職期間満了による退職を有効と判断した事案について見ていきましょう。

東日本電信電話事件(東京地裁令和7年3月14日・労経速2592号30頁)

【事案の概要】

(1)Xは、Y社に対し、定年後再雇用制度に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、令和5年4月から本判決確定の日まで毎月20日限り18万8500円の賃金+遅延損害金の支払を求めた。
(2)また、Xは、Y社に対し、上記(1)の前提として、主位的に、定年前に休職期間満了を理由として退職扱いとなったことについて、休職の原因となった精神疾患は治癒しており復職可能であったと主張して、雇用契約の終了を争い、令和4年2月から令和5年3月31日まで毎月20日限り39万1550円の賃金+遅延損害金の支払を求めた。
(3)さらに、Xは、Y社に対し、上記(1)の前提として、予備的に、定年前に休職期間満了によって雇用契約が終了していたとしても、Y社が設ける再採用制度によって、Y社との間で改めて雇用契約が締結されていたと主張して、令和4年10月から令和5年3月31日まで毎月20日限り39万1550円の賃金+遅延損害金の支払を求めた。
(4)このほか、Xは、Y社に対し、Y社による復職拒否、退職扱いが不法行為に当たると主張し、慰謝料等110万円+遅延損害金の支払を求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 E医師は、令和3年11月26日、Xについて同月27日から職場復帰可能な状態であるとする診断書を作成し、同月30日、Xにつき、症状は改善傾向にあって、同年8月からは不安や抑うつ気分などは軽快しており、同年12月より復職可能であるとする病状調書を作成した。
さらに、E医師は令和5年7月3日、「回答書」と題する書面を作成し、一般的にうつ病の疾患を有する者が復職可能と判断するには寛解に至っていることに加え、生活機能や知的能力が十分に改善し、休職に至った職場での原因が解決される必要があるとし、Xについては、前2者の条件は満足するものの、職場の受入れ態勢及びX本人の覚悟という側面があるため、「Ptさえ覚悟を決めれば書きます」と説明したものであり、Xについては、その後、症状が寛解していたこと、リワークプログラムや野鳥の会に参加して生活機能や知的能力が十分に改善していたことのほか、Xに復職意向があり心理的準備が進んでいたことから復職可能と診断したと説明している。

2 しかしながら、E医師は、令和4年8月29日付けで、Xの障害者年金の受給に関する「診断書(精神の障害用)」を作成し、現症日である同日以前1年程度の原告の状況について、要旨、「抑うつ状態」「思考・運動制止」「憂うつ気分」が見られ、「抑うつ気分や意欲低下が続いている」状況にあり、「不変」「変化なし」であり、「他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行える」か否かについては「助言や指導があればできる」にとどまり、「精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。(たとえば、習慣化した外出はできるが、家事をこなすために助言や指導を必要とする。社会的な対人交流は乏しく、自発的な行動に困難がある。金銭管理が困難な場合など。)」に当たり、「現在、抑うつ気分や意欲低下がつよく労働能力が低下している。」状態にあり、予後についても「不明」と診断した。
上記診断によれば、Xは、「他者とのコミュニケーションがほとんどできず、近所や集団から孤立しがちである。友人を自分からつくり、継続して付き合うことができず、あるいは周囲への配慮を欠いた行動がたびたびあるため、助言や指導を必要とする。」「医療機関等に行くなどの習慣化された外出は付き添われなくても自らできるものの、ストレスがかかる状況が生じた場合に対処することが困難である。食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために、助言などの支援を必要とする。身辺の清潔保持が自発的かつ適切にはできない。対人交流が乏しいか、ひきこもっている。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。ストレスが大きいと症状の再燃や悪化を来たしやすい。金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。」状態にあったといえる。

3 以上のとおり、E医師は、Xにつき、生活機能等が回復し、令和3年11月27日から復職可能であると判断する一方、令和4年8月29日以前1年程度にわたり、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを要する程度にあるとも診断していたのであって、このような相矛盾したE医師の診断によって、同年1月29日までに原告が復職可能な程度に治癒・寛解していたとまでは認めることはできない

心療内科の主治医は患者との関係性を考慮し、本件同様の診断書を提出することが珍しくありません。休職期間中は長期にわたり復職不可の診断書を書きつつ、休職期間満了直前になって、突如、復職可とする診断書を書くというのもよく目にします。

会社としては、主治医の診断書を鵜呑みにすることはできませんのでご注意ください。

使用者としていかに対応すべきかについては、顧問弁護士の助言の下に判断するのが賢明です。

本の紹介2218 脳と心を味方につけるマインドハックス勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

習慣化=継続することがいかに大切であるかが説かれています。

勉強に限らず、あらゆることが「継続は力なり」です。

三日坊主で成果が出るわけがありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

最も重要なメリットは、ブログで『アウトプットする』習慣をつけることで、インプットした内容を覚えておこうという気持ちが強まることです。ブログに教科書を書き写すだけでは、つまらないわけです。自分の記事を、自分の言葉で書こうとすれば、覚えることはもちろん、理解してしまうことも必要になります。」(36頁)

ブログはあくまで一例として、インプットはアウトプットのための手段ですから、アウトプットの機会を意識的に作ることはとても大切だと思います。

インプットそれ自体を目的とするとモチベーションが続きません。

英語を勉強するのであれば、週に1回でもいいので、英会話に通ってみる等。

アウトプットでの反省点がインプットの修正点となるのです。

それを繰り返しながら、少しずつ成長していくのです。

配転・出向・転籍60 急性前骨髄球白血病に罹患した従業員の職場復帰に当たり、配転命令を発令したことが有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、急性前骨髄球白血病に罹患した従業員の職場復帰に当たり、配転命令を発令したことが有効とされた事案を見ていきましょう。

トーカイ事件(東京地裁令和7年2月18日・労経速2591号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、Y社が病院リネンサプライや病院運営の周辺業務を受託していた病院であるA大学病院内のY社の病院駐在事業所において勤務していたXが、Xを本件事業所からY社のシルバー事業本部東部第一営業部東京営業課(勤務場所・Y社東京支店)へ配転する旨のY社の命令は、配転命令権の濫用に当たり無効であると主張して、Y社に対し、Xが東京支店において勤務する本件雇用契約上の義務がないことの確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの職場復帰について、主治医意見は、就労について医学的な問題はなく、感染症のリスクもないというものである一方、産業医意見は、本件事業所が本件大学病院内にあるという特殊性を踏まえ、職場異動が必要であるというものであった。しかるに、本件配転命令発令時点において、本件産業医について、その資格や能力等の点について問題があることをうかがわせる具体的な事情が存在し、かつ、それをY社が認識していたことを認めるに足りる証拠が存在しないことを踏まえれば、Xに対する安全配慮を考慮して本件配転命令を発令することにしたY社の判断は、Xが本件配転命令に強く反対していたことを考慮しても、使用者が負う雇用契約上の安全配慮義務に照らし合理性を有するものであって、事業の合理的運営に寄与するものといえる。
以上によれば、本件配転命令には業務上の必要性が存するものと認められる。

2 確かに、Xが、令和3年5月6日、本件事業所に関して、時間外手当未払やパワーハラスメントについて、J労働組合への電話を通じて、被告に内部通報を行い、その結果、Y社が従業員に対して約1000万円の未払賃金の支払いをすることになったことが認められるが、本件配転命令には業務上の必要性が存するものと認められるから、前記事実をもって直ちに、被告が原告に対する報復措置として本件配転命令を発令したと推認することはできない。
かえって、以下の事情に照らせば、本件配転命令は、Xに対する報復措置ではない可能性が高いものというべきである。すなわち、Xは、B大学病院のY社の事業所で勤務していた頃から、労働者の権利を守るために様々な活動をしていたが、そのようなXに対して、当時のY社の役員が、本件大学病院は非常に特徴があって、なかなか癖のある大学なので、「おまえ(Xを指す)のようなタフな男でないと務まらないので是非(本件事業所での勤務を)やってほしい」という趣旨の話をしたことが認められる。このような役員の言動は、Y社として、Xの労働者の権利を守るための活動について敵視していたことはなく、Xの行動力について一定の評価をしていたことをうかがわせるものである。この事情に加えて、X自身、本件事業所で勤務するまで、Y社から敵視されているとの認識はなかった旨供述していること、本件配転命令以外にY社がXに対して不利益な措置をしたことを認めるに足りる証拠はないこと等の事情も併せ考慮すれば、Y社がXを敵視していたとはいい難く、本件配転命令が原告に対する報復措置であったと推認することは困難である。
以上によれば、本件配転命令が不当な動機・目的をもってなされたものであるとは認められない。

上記判例のポイント1のように、主治医と産業医で意見が異なることは珍しくありません(むしろよくあることです)。

その場合に、会社としてどちらの意見に基づくべきかを検討する必要があります。

本件では産業医意見に基づき配転命令を行ったことに合理性が認められましたが、どんな場合でもそのような結論になるとは限りませんので注意が必要です。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介2217 もっと効率的に勉強する技術!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

勉強方法に唯一絶対の方法はありません。

勉強が得意な人のやり方を参考に、自分なりの勉強法を確立するほかないと思います。

人生の早い段階で自分なりの勉強を確立できると、その後が楽です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

目標設定することで、つまり、ゴールから逆算し、日々の勉強量を割り出すことで、今日一日、何をすべきかがはっきりとします。行き当たりばったりの時間の使い方が改善されます。ダラダラテレビを見ていた時間が、シャキッと勉強する時間に生まれ変わる。」(21頁)

試験も人生も、短期、中期、長期の目標を設定して、それに向けて日々、準備をすることがとても大切だと考えています。

その日々の準備の積み重ねが人生を構築していると確信しています。

一発逆転を狙って宝くじを買うのではなく、毎日コツコツ、目標に向かって努力をする。

その過程こそが人生そのものなのだと思います。

解雇431 グループホームの従業員の懲戒解雇を有効した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、グループホームの従業員の懲戒解雇を有効した事案について見ていきましょう。

社会福祉法人B会事件(千葉地裁令和7年3月21日・労経速2591号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社がした懲戒解雇は解雇権を濫用したもので無効である旨主張し、Y社に対し、以下の請求をするものである。
 (1) 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
 (2) 賃金請求権に基づき
 ア 解雇に先立つ自宅待機命令後の未払賃金として令和4年7月分及び8月分の合計50万4000円(月額25万2000円)の支払
 イ 解雇後の未払賃金として令和4年9月分から令和5年1月分の合計75万6000円(月額は25万2000円の6割)の支払
 ウ 上記ア、イの各支払日からの遅延損害金の支払
 エ 令和5年2月分以降の賃金として、令和5年3月から本判決確定の日まで、毎月25日限り25万2000円+遅延損害金の支払

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件では、Y社主張の懲戒解雇事由が認められるところ、Y社は、令和3年5月申立てに係る本件仮処分事件において、本件報告書により、勤務時間中の私的行為や食品の紛失を含むXの問題行動を指摘して、上記懲戒解雇事由に該当する行為について問題視していることを明確に伝えており、これに対して、Xは事実を認めなかったこと、令和3年10月の団体交渉に同様の指摘をするも、証拠を出すように求めて、事実を認めない態度に終始したこと、令和4年1月の団体交渉においても、同様の態度であって、「テレビを見たことはない」と明確に虚偽の回答をしたことが認められる。
Xは問題行動があることを再三指摘されながらこれがないと主張し、現認の上指摘されたことがあってもそれ自体を否定し、録画等の客観証拠の証拠がなければ指摘すること自体を名誉毀損であるとして相手を糾弾する態度に終始し、防犯カメラ映像が確認された後のXの対応を見ても、不合理な弁解を展開し、食事の試食やお菓子の持ち出しについてはI氏に責任を転嫁する方向に弁解を変遷させている。このようなXの対応を見ると、Xの基本的な姿勢につき指導・教育により改善をすることを期待し難く、短くない期間にわたって非違行為を継続してきたこと、この期に及んで反省をしていないことを踏まえると、本件懲戒解雇が重きに失するもので懲戒処分としての相当性を欠くものとはいえない。

懲戒解雇の相当性判断にあたっては、懲戒解雇事由に対する当該労働者の反省の態度の有無、弁解の不合理さ等も斟酌されますので、油断は禁物です。

懲戒解雇をする場合には事前に顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

 

 

本の紹介2216 脳が冴える!朝1分勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

朝1分だけ勉強すればよい、という意味ではありません(笑)

毎朝、1分間、何をしたら人生が変わるかが書かれています。

やっている人は無意識のうちにやっている内容です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

じつは、60%の普通の人と27%の援助が必要だった人を合わせて87%の人は、人生における明確な目標を持っていなかったのです。そして、13%の成功者は目標を持っていたのです。ただそれだけの差ですが、その差こそが、卒業生が40年後に人生で成功したかどうかを分けたのです。」(110頁)

ぼーっと生きていると、もう本当に何にも積み上げられず、ただ時間だけが過ぎていきます。

気が付いたら年だけ重ねて、何の成長もしていない、みたいな状況に陥らないためには、日々、目標を持って、努力することです。

何歳になっても、日々、努力。日々、勉強です。

メンタルヘルス15 パワハラ被害者の休職期間満了退職の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パワハラ被害者の休職期間満了退職の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

TCL JAPAN ELECTRONICS事件(東京地裁令和5年12月7日・労判1336号62頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結して就労していたXが、Y社に対し、
(1)当時のY社の代表取締役、副社長及び直属の上司からパワーハラスメント行為を受けるなどした後に適応障害を発症して休職したところ、Y社が休職期間満了前に休職事由が消滅したと認められないとして就業規則の規定を根拠に休職期間満了日をもって自然退職扱いとしたことについて、Y社のパワーハラスメント行為等により適応障害を発症したものであり、かつ休職期間満了前である令和元年6月17日に復職可能と診断した医師の診断書を提出して復職を求めていたから同日をもって休職事由は消滅した等と主張して、
〈1〉雇用契約上の地位確認、
〈2〉令和元年6月17日以降本判決確定日までの月額賃金+遅延損害金、
〈3〉休日労働に係る未払賃金+遅延損害金
の各支払を求めるとともに、
(2)前記パワーハラスメント行為により適応障害を発症し、強い精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づき、慰謝料、医療関係費及び弁護士費用等合計562万7347円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 Y社は、Xに対し、16万4500円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、令和元年7月1日から令和2年2月29日まで毎月末日限り32万9000円+遅延損害金を支払え。
4 Y社は、Xに対し、令和2年3月1日から本判決確定の日まで毎月末日限り、32万9000円+遅延損害金を支払え。
5 Y社は、Xに対し、45万2205円+遅延損害金を支払え。
6 Y社は、Xに対し、1万9998円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社の就業規則は、社員が同38条各号に定める休職事由に該当するときは休職を命ずることがあり、休職期間満了後においても休職事由が消滅しないときは休職期間満了の日をもって自然退職とする(同39条4項)と定めている。このような就業規則の定めによれば、Y社において、休職命令は、休職期間満了までの間、解雇を猶予するものであるということができる。そうすると、「休職事由が消滅したとき」とは、職員が雇用契約で定められた債務の本旨に従った履行の提供ができる状態に復することであり、原則として、従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合、又は、当初軽易作業に就かせればほどなく従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合をいうと解するのが相当である。そして、休職事由の消滅については、解雇を猶予されていた職員において主張立証しなければならないと解するのが相当である。
同年6月17日に休職事由が消滅したとのXの主張は採用できず、休職期間満了までに休職事由が消滅したとも認められない。

2 XはY社の業務に起因して適応障害を発症したと認められるから、労働基準法19条1項類推適用により、就業規則39条4項は適用されない。よって、就業規則39条4項に基づきXを退職扱いとすることは許されず、本件雇用契約は継続していると認められる。

3 X自身が反省するというより、婉曲的にGを非難する内容の反省文を提出したこと等が認められ、このような婉曲的に相手を蔑んだり、慇懃無礼であったり、挑発的であったりするXの対応は、XとGとの衝突や関係悪化をより深刻化させる方向に機能したと考えられるところ、そこにはXの気分変調症、境界性パーソナリティ障害又は易刺激性や情動易変性及び社会適応能力の問題が影響していると認めるのが相当である。このような本件の事情を考慮すれば、本件では2割の素因減額を認めることが相当である。

パワハラが原因で精神疾患を発症し、休職した場合、当該傷病について業務起因性が認められ、労基法の解雇制限に該当するとなると、私傷病を前提とする休職期間満了による自然退職の制度は適用対象外となります。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

本の紹介2215 社長がつまずくすべての疑問に答える本(企業法務・顧問弁護士@静岡)

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

今日は、本の紹介です。

成功はアート、失敗はサイエンス」という言葉が登場します。

成功のしかたは人の数だけあるけれど、失敗のしかたは共通する、と。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

最も大切なのは組織全体で『失敗は悪ではなく、成長のための糧だ』という認識を共有することが不可欠です。失敗を個人の責任として厳しく追及するのではなく、なぜ失敗が起きたのかを客観的に分析し、次につなげる姿勢を奨励しましょう。」(425頁)

失敗を0にすることはできません。

どれだけ気を付けていても失敗してしまいます。

できるだけ同じ失敗をしないようにするためにはどうしたらよいかを考え、仕組み化する。

その繰り返しではないでしょうか。

それでも失敗はしますので。

一年の締めくくり

おはようございます。

本日をもちまして、今年の営業を終了いたします。

今年も一年、皆様には大変お世話になりました。

弁護士、スタッフ一同、心より感謝申し上げます。

来年は1月5日(月)より営業を開始いたします。

来年も精一杯、依頼者の皆様のために精進してまいりますので、宜しくお願い致します。

なお、顧問先会社様におかれましては、年末年始のお休み中も対応しておりますので、

ご相談等がありましたら、いつでもご遠慮なく、栗田の携帯電話にご連絡ください。

それでは皆様、良いお年を!

解雇430 解雇を争う労働者の他社での就労開始について、同社での試用期間が経過した時点で黙示の退職合意を認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、解雇を争う労働者の他社での就労開始について、同社での試用期間が経過した時点で黙示の退職合意を認めた事案について見ていきましょう。

フィリップ・ジャパン事件(東京高裁令和7年5月15日・労経速2587号3頁)

【事案の概要】

1 Xは、平成28年9月20日にパラリーガルとしてY社に雇用され、令和元年9月10日、司法試験に合格して司法修習のため休職し、令和3年2月1日に第一子を出産して、産前産後休業及び育児休業を取得し、同年5月1日にY社に復職して法務コンプライアンス部での業務に従事した。部長であったAは、同年7月頃から11月頃まで、Xに対し、業務改善計画(PIP)を実施し、人事本部長であるBとともに退職勧奨をしたが、Xがこれに応じなかったため、Y社は、同年12月13日、令和4年1月15日限りでXを解雇する旨の意思表示をした。Xは、本件解雇後、同年3月1日、C社に入社した。Y社は、その後、本件解雇を撤回したが、XがC社に入社した時点でY社に対する就労意思を喪失し、黙示の退職合意が成立したと主張し、Xは、これを争い、就労意思を喪失したのは令和6年1月31日である旨主張している。
本件は、Xが、Y社に対し、雇用契約に基づき、①本件解雇後の和4年3月1日から本判決確定の日までの月例賃金請求として、毎月25日限り月額51万5300円(基本給41万2200円及びみなし勤務
手当10万3100円の合計額)+遅延損害金及び②和4年分及び令和5年分の賞与請求として、合計125万7835円+遅延損害金の各支払を求めるとともに、③A及びBによる退職勧奨及びそれに伴う各言動が違法であると主張して、A及びBについては民法709条に基づき、Y社については民法715条に基づき、慰謝料300万円+遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

2 原審は、①の月例賃金請求について、Xにおいては第一子の保育園の入所資格を確保し自らの職歴を確保するとの観点から直ちに就職活動を行う必要性に迫られA社に就職したものであるから、A社に就職した時点でY社への就労意思が喪失したものとは認め難く、Xが就労意思の喪失を自認した令和6年1月31日をもって黙示の退職合意が成立したと認めた上、C社から賃金月額77万9200円が支払われ、XがC社において令和5年7月6日から令和6年8月まで産前産後休業及び育児休業を取得したことから、令和4年3月から令和5年6月までの賃金について毎月25日限り月額51万5300円の6割に相当する30万9180円及び同年7月1日から同月5日までの5日分の賃金について同月25日限り日割計算した賃金の6割に相当する4万9868円+遅延損害金の支払を求める限度で認容し、②の賞与請求について、支給を求め得る具体的な請求権として発生しているとは認められないとして棄却し、③の慰謝料請求について、1審被告丙川による退職勧奨は、PIP の評価結果を踏まえたXの能力や適格性の不足を理由とするものであり、不当な動機・目的の下で行われたと認めるに足りる証拠はない、A及びBの言動も、Xの退職に係る自由な意思決定を侵害する違法があったとは認められず、X個人の力量や人格を非難する趣旨で発言をしたとは認められないなどとして、Xの請求をいずれも棄却した。X及びY社は、これに対し、それぞれの敗訴部分を不服として控訴し、Xは、当審において、①の月例賃金請求の終期を令和5年7月5日までとして不服の範囲を限定した。

【裁判所の判断】

1 Y社の本件控訴に基づき、原判決主文第1項を次のとおり変更する。
2 Y社は、Xに対し、令和4年3月から同年8月まで毎月25日限り月額30万9180円+遅延損害金を支払え。
3 Xのその余の請求を棄却する。
4 Xの本件控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 C社においても、就職後6か月間は試用期間とされており、同期間中にXに社内弁護士としての職務能力があるとはいえないと評価された場合には解雇される可能性もあったから、同期間が終了するまでは、XがY社における就労意思を喪失したということはできない。しかし、C社での6か月間の試用期間中に解雇や解雇予告がされなかったということは、C社においてXは社内弁護士としての職務能力があると評価されたといえるから、その後は職務能力がないことを理由として解雇されるおそれは相当低下したといえる。そして、C社におけるXの雇用条件は、賃金月額77万9200円であるなど、Y社における雇用条件(月額51万5300円)と比較して明らかに好待遇であり、第二子の出産育児のために、産前産後休業及び育児休業も取得できた一方で、Y社においては、PIP の結果、社内弁護土としての能力をいていると評価され、後に撤回されたとはいえ、解雇までされたことを考慮すると、C社での試用期間が終了した時点において、XがC社をあえて退職してまでY社で就労する意思があったと認めることはできない
以上によれば、Xは、C社での試用期間が終了した令和4年8月31日時点においてY社への就労意思を喪失したと認めるのが相当であり、同日時点において、XとY社との間での黙示の退職合意が成立したというべきである。

原審の判断が、就労意思の喪失時期に関する近年の裁判所の判断の主流ですが、控訴審では、原審よりも当該時期を早める判断をしました。

事案の特殊性から、どこまで一般化できるか定かではありませんが、考え方としては参考になりますね。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。