管理会社等との紛争25 エントランスの自動扉にオートロック設備を導入したにもかかわらず管理組合及び管理会社がオートロックを解除するオートロックキーを交付しなかったことによる慰謝料請求(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、エントランスの自動扉にオートロック設備を導入したにもかかわらず管理組合及び管理会社がオートロックを解除するオートロックキーを交付しなかったことによる慰謝料請求(東京地判平成30年8月24日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、建物の区分所有者である原告が、①同建物のエントランスの自動扉にオートロック設備を導入したにもかかわらず被告管理組合及び管理会社である被告会社がオートロックを解除するオートロックキーを原告に交付しなかったことにより精神的苦痛を被った、②本件訴訟の期日において被告管理組合代理人から暴言・侮辱を受けたことにより精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為に基づき、①については被告らに対して連帯して125万2000円+遅延損害金、②については被告管理組合に対して360万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告に対して205号室分のオートロックキーが交付されたのは平成27年5月26日であって、本件運用開始(平成26年7月1日)から約11か月経過後である。
オートロック工事に伴って一つの専有部分(地下の専有部分を除く。)に対して3本のオートロックキーが交付されていることからすると、被告管理組合又は被告管理組合から委託を受けた被告会社は、原告に対し、本件運用開始までに205号室分のオートロックキーを交付すべきであった。なお、本件運用開始までに原告に205号室分のオートロックキーが交付されなかった原因は、各被告において主張が異なるところであるが、いずれにせよ、各被告のいずれか又は双方に原因があるといわざるを得ない

2 しかし、被告管理組合の主張によれば被告会社と被告管理組合の認識が共通でなかったことであり、被告会社の主張によれば205号室の室内インターホンの設置・接続に関する目時工務店との打合せ未了によるものであるから、いずれの主張によっても、被告らにおいて、原告に苦痛を与えることを意図して(原告が主張する「嫌がらせとして」)205号室分のオートロックキーの交付をしなかったということにはならない
また、被告らにおいて、原告に苦痛を与えることを意図して205号室分のオートロックキーの交付をしなかったと認めるに足りる証拠はない。
また、Eは、平成26年4月18日、本件建物エントランスの集合ポストの602号室のポストに602号室分のオートロックキー3本を投函しており、その後、原告及び原告の家族からオートロックキーの交付がないのでエントランスの出入りやごみ置場の出入りに支障がある旨の申入れがなかったことからすると、原告及びその家族において、エントランスの出入りやごみ置場の出入りに支障が生じていたと認めるには足りないというべきである。
そうすると、原告に対して205号室分のオートロックキーが交付されなかったことによって、原告に具体的な支障が生じていたと認めることはできず、権利侵害の程度との関係において、205号室分のオートロックキーの交付が遅れたことが違法とまでは言い難い
また、原告に賠償を要する精神的苦痛が生じたと評価することはできない。

オートロックキーを交付しなかったことが不適切であると認定されましたが、具体的な支障が生じていないこと、苦痛を与える意図まではなかったこと等を理由に「違法とまでは言い難い」と判断されています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。