管理費・修繕積立金41 原告が、被告からなされた本件敷地及びその上にある本件マンションに係る建物退去土地明渡等請求事件による強制執行につき、被告の管理費償還請求権と原告の各不当利得返還請求権との相殺を主張して強制執行の不許を求めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、原告が、被告からなされた本件敷地及びその上にある本件マンションに係る建物退去土地明渡等請求事件による強制執行につき、被告の管理費償還請求権と原告の各不当利得返還請求権との相殺を主張して強制執行の不許を求めた事案(東京地判平成29年2月24日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、被告から原告に対する東京地方裁判所平成20年(ワ)第14972号建物退去土地明渡等請求事件及び同第33354号建物退去土地明渡等請求事件の判決主文第1項に基づく強制執行について、同項に基づく被告の原告に対する区分所有法19条に基づく管理費償還請求債権と原告の被告に対する不当利得返還請求債権との相殺を主張して、その不許を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 区分所有建物の一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た使用料のうち、各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権は各区分所有者に帰属するから、区分所有者の団体のみが上記請求権を行使することができる旨の集会の決議や規約の定めがあるといった場合を除き、各区分所有者は、上記請求権を行使することができるものと解される(最判平成27年9月18日)。
本件マンションについては、上記のような集会の決議や規約の定めがあるとは認められないから、原告は、被告に対し、本件マンションの区分所有者の一人として、被告が本件マンションの共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち、各区分所有者の持分権割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権を行使することができる。

2 本件駐車場は、本件マンションが所在する法定敷地であり、「建物の敷地」に当たるから、原告は、自己の専有部分を所有するための「専有部分に係る敷地利用権」として本件敷地の賃借権を準共有している。
建物の敷地が区分所有者の共有又は準共有に属する場合、区分所有法21条により同法19条が準用され、各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、建物の敷地の負担に任じ、建物の敷地から生ずる利益を収取する。
したがって、原告は、本件駐車場を第三者に賃貸することによって得られる利益をその持分割合に応じて収取することができる

3 原告が本件駐車場の使用収益権を有しないとの認識を昭和53年の本件賃貸借契約締結当時から持っていた認められる証拠はなく、原告の主張するように、原告は、法的な知識を十分に有していなかったため、本件駐車場の使用収益権を有するとの認識を持つことができなかったものと認められる。
そうすると、本件相殺の意思表示が信義則上許されない又は権利濫用に当たり許されないということはできず、この点に関する被告の主張は採用することができない。

4 以上の検討によれば、被告から原告に対する東京地方裁判所平成20(ワ)第14972号建物退去土地明渡等請求事件及び同第33354号建物退去土地明渡等請求事件の判決主文第1項に係る区分所有法19条に基づく管理費償還請求権は、平成16年7月20日から平成23年6月19日までに発生した不当利得返還請求権と対当額で相殺されて消滅した。

上記判例のポイント1の最高裁判例や区分所有法の十分な理解がないと反応できないと思います。

ややレベルが高いところですが、知っているのと知らないのでは大きな差が出る分野です。

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管理会社等との紛争42 被告が原告の居住するマンションの一室の玄関前まで侵入し、玄関をノックしたり、玄関を傘で叩いたりするなどの行為をしたことにより、原告が抑うつ、不安、不眠の症状を悪化させたにもかかわらず、慰謝料請求が認められなかった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、被告が原告の居住するマンションの一室の玄関前まで侵入し、玄関をノックしたり、玄関を傘で叩いたりするなどの行為をしたことにより、原告が抑うつ、不安、不眠の症状を悪化させたにもかかわらず、慰謝料請求が認められなかった事案(東京地判平成28年9月28日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、被告に対し、被告が原告の居住するマンションの一室の玄関前まで侵入し、玄関をノックしたり、玄関を傘で叩いたりするなどの行為をしたことにより、玄関に損傷を受け、原告の抑うつ、不安、不眠の各症状を悪化させたなどとして、不法行為に基づき損害賠償として728万2000円(玄関扉等交換工事費用162万円、慰謝料500万円及び弁護士費用66万2000円の合計金)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

被告は、原告に対し、5万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 原告は、被告の本件行為により損傷された本件玄関扉を復旧させるために162万円の負担を要するとして、甲8号証の1~3を提出するが、本件玄関扉等の損傷状態及び本件マンション管理組合作成の「X様への回答書」に鑑みても、本件玄関扉の復旧として、玄関枠交換工事及び玄関錠取替工事が必要とは認められず、その他本件全証拠からも上記各工事が必要とは認められない。他方、上記各工事は必要ではないが、本件玄関扉の復旧のためには、玄関扉を新しい扉に交換し、玄関枠の傷については塗装によって補修し、既設の玄関錠を新しい扉に付け替えることを要し、上記工事費用として65万5560円を要するから、同額を原告の損害とするのが相当である。
原告は、消防法に基づく共通仮設計画作成及び届出の費用として30万円(税別)並びに建築基準法に基づく共通仮設計画作成費用として25万円(税別)の支出を要すると主張するが、本件全証拠によっても、本件玄関扉の復旧のために上記計画作成及び届出等を要するとは認められない。
そして、被告は、65万5560円及びこれに対する遅延損害金を供託したから、原告の請求には理由がない

2 被告は、本件建物のインターホンを鳴らしたり、本件マンションに侵入し、本件建物のチャイムを鳴らし、玄関扉をノックしたり、傘で叩いて本件玄関扉を損傷させたりするなどしているが、被告は、原告が本件建物を所有していることや同建物に居住していることを認識しておらず、原告に何らかの危害や不安を与えることを意図して行ったのではないこと、本件玄関扉の損傷については上記のとおり財産的損害は填補されており、被告は原告の支払った治療費及びこれに対する遅延損害金も供託したところ(第2の1(3))、上記の被告の行為態様を考慮しても、上記財産的損害の填補により、原告の精神的損害は賄われたものと認めるのが相当であることからすると、慰謝料を求める原告の請求は理由がない
なお、本件マンションへの被告の侵入が建造物侵入に該当するとしても、本件建物に対する住居侵入には当たらず、本件マンションへの侵入をもって原告の利益が直接的に侵害されたものではない。また、原告は、被告の本件行為により鬱病になったとして、診断書を提出するが、被告が原告の支払った治療費及び遅延損害金を供託したことは上記のとおりであり、同診断書は、その記載からして、原告の供述に基づき記載されたものと解され、同診断書により被告の本件行為により原告が鬱病となったとは認められないことからすると、被告が供託した治療費以上に原告の精神的損害を認める理由はない。

3 上記のとおり、原告の求める損害賠償のうち、認められる損害賠償額は65万5560円及び遅延損害金であるが、他方、被告は、平成28年2月25日以降、同額及び遅延損害金を弁済する旨申し出ており、同年3月2日に供託したことに鑑みれば、本件において認める弁護士費用は5万円とするのが相当である。

本件では、特にうつ病に関する診断書が証拠として提出されていますが、裁判所は、治療費や工事費用等に限り損害賠償請求を認め、慰謝料請求は棄却しています。

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名誉毀損15 管理組合の理事長の名誉を毀損する内容を記載した文書を配布した行為が名誉毀損にはあたらないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合の理事長の名誉を毀損する内容を記載した文書を配布した行為が名誉毀損にはあたらないとされた事案(札幌地判平成28年10月7日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの区分所有者によって組織される管理組合の理事長の地位にある原告が、本件マンションの区分所有者である被告らに対し、同人らが本件マンションの区分所有者のうち原告を除く全員に対し、原告の名誉を毀損する内容が記載された文書を送付又は配布したとして、不法行為に基づき、慰謝料500万円及び遅延損害金の支払を求めるとともに、本件マンション内に謝罪文を掲示すること及び全区分所有者に通知文を送付することを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 文書の意味内容が他人の評価を低下させるものであるかどうかは、当該文書を読む対象者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきものであるところ、本件各記載は、いずれも原告が理事長を務める本件組合が、原告の夫が代表を務めるa社に対し、本件マンションの工事を直接又は間接的に発注したことが、違法行為(犯罪行為)とみられる利益相反行為に当たる旨を指摘する内容であり、本件各文書が配布された本件マンションの区分所有者からみて、本件組合の理事長である原告の評価を低下させるものといえることから、被告らが本件各文書を配布したことは、原告の名誉を毀損する行為といえる。

2 ところで、事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、上記行為には違法性がなく、仮に上記事実が真実であることの証明がないときにも、行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される(最判昭和41年6月23日第1小法廷判決、最判昭和58年10月20日)。
一方、ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合には、上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、上記行為は違法性を欠くものというべきであり、仮に上記意見ないし論評の前提としている事実が真実であることの証明がないときにも、事実を摘示しての名誉毀損における場合と対比すると、行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定されると解するのが相当である(最判平成元年12月21日、最判平成9年9月9日)。
上記のとおり、問題とされている表現が、事実を摘示するものであるのか、意見ないし論評の表明であるかによって、名誉毀損に係る不法行為責任の成否に関する要件が異なるため、当該表現がいずれの範ちゅうに属するかを判別することが必要となるが、当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは、当該表現は、上記特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相当であり、上記のような証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議などは、意見ないし論評の表明に属するというべきである。

3 本件各記載は、要するに原告が理事長を務める本件組合が、原告の夫が代表を務めるa社に対し、直接又は間接的に本件マンションに関する工事を発注したことが、利益相反取引として違法行為又は違法行為の疑いがある旨を指摘するものであり、このうち利益相反取引として違法行為又は違法行為の疑いがあるとの点については、法的な見解を表明するものであって、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に対する特定の事項に当たらないことは明らかである。
したがって、・・・本件各記載は、上記で判示した意見ないし論評の表明に当たると解するのが相当である。
 
4 本件文書1は、その表題や全体の記載内容に照らし、本件マンションの区分所有者に対して、現在の本件組合の運営に関する問題点を指摘し、総会への出席を求めるものであり、また、本件文書2についても、その表題や全体の記載内容に照らし、本件マンションの区分所有者に対して、総会後に開催された説明会を含むこれまでの事実経過を報告し、本件組合役員の早期解任を訴えるものであると認められ、いずれも本件マンションの区分所有者全体の利害に関する本件組合の運営改善及び管理費等の保全を図る目的で配布されたものであり、公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認められる。
そして、a社による本件マンションに関する工事の受注については、当事者間に争いがないことから、本件各記載の前提となる事実の重要部分について真実と認められる。
加えて、上記のとおり、本件各文書は本件組合の運営改善及び管理等の保全を図る目的で配布されたものであり、その表現をみても、安易に断定することなく、「疑いも有る」、「可能性がある」、「考えられる」等の記載がされるなど、一定の配慮がされており、上記目的を離れて原告個人を誹謗中傷したり、人格を攻撃するような内容の記載はないことから、いまだ意見ないし論評の域を逸脱しているとは認められない。
以上によれば、本件各記載は意見ないし論評の表明として違法性を阻却されることから、不法行為に該当しない。

区分所有建物においては、本件同様の名誉毀損事案が発生することが珍しくありません。

本裁判例では、名誉毀損に関する考え方が非常にわかりやすく記載されているので、是非、参考にしてください。

書面等を配布する際に、どのような点に注意すべきかがよくわかります。

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管理費・修繕積立金40 管理費・修繕積立金等口座自動引落し手続き等請求が認容された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理費・修繕積立金等口座自動引落し手続き等請求が認容された事案(東京地判平成28年10月11日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、管理組合法人である原告が、同マンションの区分所有者である被告に対し、被告は、現在管理費等の支払は行っているものの、その支払日が一定していないことから、本件マンションの管理規約に基づき、支払者被告、被支払者原告、支払金額毎月2万1110円、支払期限毎月27日とする口座自動引落手続を行うことを求めるとともに、本件訴訟提起に係る原告の訴訟代理人弁護士に対する着手金及び報酬金相当額の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、被告名義の金融機関口座から、支払者被告、被支払者原告、支払金額毎月2万1110円、支払期限毎月27日とする口座自動引落し手続をせよ。

 被告は、原告に対し、158万7600円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 被告は、管理費等の支払について本件自動送金手続をとっているが、同手続においては支払期限が毎月31日とされ、本件支払方法の定めに沿った支払期限(毎月27日)が設定されていないから、被告は、支払期限の限りにおいては本件支払方法の定めを履践していないものといわざるを得ない。
よって、被告は、本件規約に基づき、支払期限を毎月27日とする口座自動引落し手続(仮に被告が現在利用している金融機関を前提にすると「自動送金・口座振替依頼手続」)をとる義務を負う
また、被告は、本件規約に基づき、原告に対し、本件委任契約に基づき原告が原告訴訟代理人に支払う着手金及び報酬金(合計158万7600円)を支払う義務を負う。

2 被告は、支払期限が毎月31日であるか毎月27日であるかは極めて軽微な誤差であり本件訴えは不当なものであると主張する。しかしながら、区分所有者全員との関係で画一的に特定の日を支払期限として定めることは、遅延損害金の計算の煩雑化を避け、合理的な会計処理をする上で有用な手法であり、特に、本件のように本来の支払期限より後の日に支払がなされる場合は遅延損害金の処理が必要となり得るのであるから、上記支払期限の差異をもって極めて軽微な誤差であるということはできず、本件訴えが不当なものであるとはいえない

上記裁判所の判断の第1項のような請求が認められることを知っておきましょう。

また、この訴訟における弁護士費用は158万7600円で、その全額が認められています。

区分所有に関する訴訟特有です。

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管理会社等との紛争41 警備会社が居住者でない者の要請に応じて居室の開錠をしたために居室内の架電が窃取された事案において警備会社の責任が否定された理由とは?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、警備会社が居住者でない者の要請に応じて居室の開錠をしたために居室内の架電が窃取された事案において警備会社の責任が否定された理由とは?(東京地判平成28年10月17日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

控訴人は、マンションの居室を区分所有しているところ、同マンションの管理会社から警備業務を委託された被控訴人が、居住者でない者の要請に応じて上記居室の開錠をしたために、上記居室内に備え付けられていた控訴人所有の家電が窃取され、同マンションの安全管理上の問題が生じたため上記居室を賃貸することができなくなったと主張して、被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償として、窃取された家電の購入代金相当額14万3316円及び賃料6か月分の逸失利益120万円+遅延損害金の支払を求めた。

原審が控訴人の請求を棄却したため,控訴人がこれを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 被控訴人は、警備契約に基づき本件マンションの警備を担当することとなったものであり、契約関係にない区分所有者及び居住者に対して、警備契約に基づく債務を直接に負担するものではない。しかしながら、管理組合は区分所有者によって構成されるものである(マンション管理適正化法2条3号、区分所有法3条)ところ、同組合が管理会社に対し本件マンションの管理を委託し、管理会社が被控訴人に対し本件マンションの警備を委託した関係にあることに徴すれば、区分所有者が管理組合及び管理会社を介して警備会社に本件マンションの警備を実質的に委託した関係にあるともみることができる。
加えて、本件マンションの警備が不十分であるときは、区分所有者ないし居住者の物的、人的安全が侵害される危険性があることを併せ考慮すれば、被控訴人には所有者及び居住者の物的、人的安全が侵害されないようにする不法行為上の注意義務が課せられているというべきであり、要請を受けて居室の開錠を行うに当たっては、所有者ないし居住者以外の者の要請に基づき開錠を行わないようにする注意義務が課されていると解するのが相当である。

2 控訴人は、被控訴人が上記義務を尽くす上で、具体的義務として、緊急連絡先に申請人が居住者として記載されていない場合においては、管理会社に連絡して、居住者か否かを確認すべき義務があったとする。
しかし、被控訴人が警備業務を請け負っている都内マンションでは、住民が変わっても緊急連絡先がその都度、提出されず、実際の住民と緊急連絡先に記載されている者が異なることがままあり、居住者の名前が緊急連絡先に記載がされている者と異なる居住者からの開錠を目的とする出動要請も珍しいことではない。居住者の名前が緊急連絡先に記載されていない場合には常に管理会社に連絡しなければならないとすると、多くの場合には問題がないにもかかわらず、管理会社に連絡して確認ができるまで居住者の入室を拒むこととなり、開錠を求める居住者の便益を損ねる可能性がある
他方、居住者の確認を相当と認められる方法で行うことができるのであれば、区分所有者ないし居住者の物的、人的安全の確保と居住者の便益の確保との調和を図ることができる。
被控訴人は、かかる観点から、身分証明書で居住者であることの確認ができる場合においては、管理会社に連絡をしない取扱いをしていたのであり、かかる取扱いには合理性があり、かかる取扱いをしたことに過失があったとはいえない
そして、居住者の確認方法として、免許証等の写真付きの身分証明書があれば、その身分証明書により、これがないときは公的機関の発行した身分証明書等や公共料金の利用明細書等の2点をもって本人か否かを確認するというものであり、その方法も合理的である。
公的機関の発行する身分証明書は一般に偽造は容易ではないし、これを所持する者が本人である蓋然性が高いからである。また、公共料金の利用明細書も一般に偽造が容易とはいえないし、当該居室の公共料金が申請人名義で支払われていることからすれば、当該居室に申請人が居住している蓋然性が高い。これらを組み合わせて2点で確認する方法は本人確認方法として是認されるというべきである。

本件マンションでのこれまでの対応状況及び警備会社の居住者の確認方法の合理性から過失が否定されました。

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名誉毀損14 区分所有者兼防火防災管理者である原告に対する名誉毀損行為により慰謝料150万円の支払が命じられた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者兼防火防災管理者である原告に対する名誉毀損行為により慰謝料150万円の支払が命じられた事案(東京地判平成28年11月9日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者であり、同マンションの防火防災管理者である原告が、耐震及び設備改修に関する集会を開催した際に参考資料として参加者に配布した同マンションの建替計画案をきっかけとして、同マンションの居住者の1人である被告が、同マンションの複数名の居住者や原告の勤務先会社、同マンション管理組合が相談していたマンション管理士・行政書士に対して送付した手紙により、原告の社会的評価を著しく低下させ、その名誉権を侵害したと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償+遅延損害金の支払を求めるとともに、人格権(名誉権)に基づく将来の名誉毀損行為の差止めを求め、また、民法723条に基づく名誉回復措置として謝罪文の交付を求めている事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、150万円+遅延損害金を支払え。

 被告は、原告の名誉を毀損する内容を含む文書、図画又は電子メールの配布、送付又は送信をしてはならない。

【判例のポイント】

1 被告は、本件手紙の送付行為は、本件マンションの住民の負担軽減という公益目的に出たものであると主張している。
しかし、本件手紙は、全体の論調としても、本件マンションの区分所有者の中で被告の意見への賛同者を募るための社会的に容認された行為としての相当性を明らかに超えた、邪推に基づく原告に対する誹謗中傷となっていること、管理組合の総会等における正常な議論ではなく、実力で原告の行動を阻止しようとすべく、F管理士や警察署に対処を相談・要請するにとどまらず、真相究明という名の下に、原告の勤務先や国会議員まで巻き込んで原告に対して圧力をかけようとする節が窺われるなど、常軌を逸したものとなっており、原告に対する過度の敵対意識も表れていることに照らすと、本件手紙の送付行為が、専ら公益を図る目的に出たものであると評価することはできない。
よって、本件手紙の送付行為につき、違法性の阻却を認めることはできない。

2 これによる損害額は、①従前の原告と被告との関係、②被告が本件手紙の送付行為に及んだ経緯や動機、③本件手紙の表現ぶりやその真実性の検証の程度、④本件手紙の送付行為の範囲、⑤本件手紙の送付行為の頻度ないし時期、⑥原告が被った社会生活上の不利益の程度、⑦その後の被告の態度等を総合勘案して決すべきである。
・・・以上の諸事情を総合考慮すると、本件における原告の精神的苦痛を慰謝するには、本件手紙の送付行為がいわゆる非マスメディア型の名誉毀損行為であって実際の伝播の程度がさほど高くないことや、被告が本件手紙の送付行為に及んだ当初の目的を考慮してもなお、やや高額の慰謝料が相当というべきであり、本件については150万円をもって被告の違法行為と相当因果関係を有するものと認めるのが相当である。

3  民法723条が、損害賠償のほかに回復処分を規定した趣旨は、その処分により、加害者に対して制裁を加えたり、また、加害者に謝罪等をさせることによって被害者に主観的な満足を与えたりするためではなく、金銭による損害賠償のみでは填補され得ない、毀損された被害者の人格的価値に対する社会的、客観的な評価自体を回復することを可能ならしめるためである。
そうすると、同条に基づき、被告に対して原告への謝罪文の交付を請求することは、その低下した社会的評価を対外的に回復する処分にはあたらないので、認めることができない(原告が関係者に対して本件の顛末を説明するに際しては、本判決の写しを用いてこれを説明することで足りる。)。

同種の名誉毀損事案と比較しますと、かなり高額な慰謝料が認められています。

区分所有建物における紛争として名誉毀損事案は決して珍しくないので、過去の裁判例をチェックするととても参考になると思います。

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管理費・修繕積立金39 水道料立替金を区分所有者が管理組合に支払う旨の本件水道規約の有効性(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、水道料立替金を区分所有者が管理組合に支払う旨の本件水道規約の有効性(静岡地判令和4年9月8日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンション管理組合である被控訴人が、本件マンションの区分所有者である控訴人に対し、管理規約に基づき、①別紙債権目録「未納金」欄記載の平成29年1月から平成31年1月までの間の未払水道料立替金合計5万2395円+約定の年18%の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、②違約金としての原審段階の弁護士費用22万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

これに対し、控訴人は、水道料立替金及び違約金について定めた管理規約は無効であるなどと主張して、請求の棄却を求めた。

原審は、水道料立替金及び違約金について定めた管理組合の規約は有効であるとして、被控訴人の請求のうち、①については全部認容し、②については違約金としての原審段階の弁護士費用22万円+遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し、その余の請求は棄却したところ、控訴人は敗訴部分を不服として控訴した。
一方、被控訴人は、敗訴部分を不服として附帯控訴し、併せて、更に違約金としての当審段階の弁護士費用22万円+遅延損害金の支払を求めて請求を拡張した。

【裁判所の判断】

1 本件控訴を棄却する。

 本件附帯控訴に基づき、原判決主文第2項を次のとおり変更する。
控訴人は、被控訴人に対し、44万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 区分所有法30条1項は「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる」と規定しているところ、「建物」については、文理上、共用部分に限定するものとは解されないから、共用部分だけでなく、専有部分についても、その管理や使用が区分所有者全体に影響を及ぼすような事項については規約で定めることができるものと解するのが相当である。
以上を踏まえて検討すると、本件マンションにおいては、本件マンション敷地内の給水管、受水槽、加圧式ポンプ、子メーター32戸分が本件マンションの共有物として設置され、これらの受水槽、ポンプ等の給排水施設は、管理規約8条別表第2に基づき共用部分とされ、管理規約21条に基づき、管理組合である被控訴人がその負担と責任において管理すべきものとされていること、本件マンションは、当初から親メーターで計量して受水槽により給水を受ける貯水槽水道設置方式で建築され、浜松市上下水道部との間では一括検針一括徴収方式を採用していることがそれぞれ認められる。
したがって、水道水が専有部分である各戸で使用されることから専有部分の使用に関する事項という面があるとしても、上記のとおり、水道水が共用部分である給水施設を経て各戸に供給され、水道水の供給の方式が浜松市上下水道部と管理組合である被控訴人の契約内容により決定されている以上、各戸の水道水の使用は必然的にこれらの施設管理及び契約内容による制約を受けるのであるから、管理組合である被控訴人が区分所有建物全体の使用料を立て替えて支払った上で、各区分所有者にその使用量に応じた支払を請求することを規約で定めることは、建物又はその附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項を定めるものとして、規約で定めることができ、このような内容の規約は有効であるものと解すべきである。

2 控訴人は、専有部分の水道料金は、特段の事情のない限り、区分所有法30条1項の建物又は附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項には該当せず、上記特段の事情とは、個別検針個別徴収方式への変更が法令や水道局の規定上できないことをいうものと解されるところ、本件では、かかる特段の事情は認められないなどと主張する。
しかしながら、水道水が専有部分である各戸で使用されることから、専有部分の水道料金が、専有部分の使用に関する事項という面があるとしても、本件マンションにおいては、水道水が共用部分である給水施設を経て各戸に供給されていることや、水道水の供給の方式が浜松市上下水道部と管理組合である被控訴人との契約内容により定められてきたことなどからすると、被控訴人において、区分所有建物全体の水道料金を一括立替払した上で、各区分所有者に対し使用量に応じた水道料立替金の支払を求めることについて、「建物又はその附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項」として管理規約に有効に定めることができるものと解するのが相当であり、これが上記事項に当たらず、およそ管理規約で定めることはできないと解することは困難というべきである。

原審に引き続き、控訴審においても結論は変わりませんでした(理由付けは異なりますが)。

なお、原審判断はこちらです。

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管理会社等との紛争40 原告が費用を出して修繕工事をしたガス管は専有部分?それとも共用部分?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、原告が費用を出して修繕工事をしたガス管は専有部分?それとも共用部分?(東京簡判平成28年11月18日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が費用を出して修繕工事をしたガス管の一部分(本件係争部分ガス管)について、原告が本件係争部分ガス管は共用部分に属するとして、その修繕費用をマンション管理組合である被告に対し請求したところ、被告が本件係争部分ガス管は専有部分に属するとして、これを争っている事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件係争部分ガス管は、本件居室に関するガスメーターから出て、本件居室の壁に入っていき、本件居室で使用されるガス器具へとつながっていること及び本件居室に供給されるガスを通すのみであることは争いがないところ、この状況からすれば、本件係争部分ガス管は、構造上も利用上も専有部分に属するものと言える。

2 
ところで、管理規約の第7条は、1項及び2項で区分所有権の対象となる専有部分を定めたうえで、さらに3項において、「第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。」と定めている。
そして、本件係争部分ガス管が設置されている場所が倉庫であり、その倉庫が共用部分に属するものであることは、当事者間に争いがないから、結局、本件係争部分ガス管は、共用部分規約により、共用部分に属するものと言うのが相当である。

裁判所が管理規約の規定に基づき判断していることがよくわかります。

区分所有建物における紛争においては、安易な拡大解釈や類推適用はしません。

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管理会社等との紛争39 定期総会の開会前における区分所有者による代表理事らに対する暴行事件について裁判所が認めた慰謝料額は?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定期総会の開会前における区分所有者による代表理事らに対する暴行事件について裁判所が認めた慰謝料額は?(東京地判平成28年11月24日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本訴は、本件マンション管理組合法人である原告管理組合、原告管理組合の代表者理事である原告X2及び建築業を営む原告X3が、平成25年7月13日に本件マンションの集会室において開催された原告管理組合の定期総会の開会前、①本件マンションの区分所有者である被告ら夫婦により集会室のドアを壊された、②原告X2及び原告X3が被告ら夫婦から暴行を受け、原告X3は傷害を負った、③被告ら夫婦による警察に対する虚偽の申告により原告X2及び原告X3が逮捕されたと主張して、被告らに対し、共同不法行為に基づき、〈ア〉原告管理組合は、集会室のドアの修理費用相当額4万8090円+遅延損害金、〈イ〉原告X2は、慰謝料500万円+遅延損害金〈ウ〉原告X3は、治療費及び慰謝料合計600万4170円+遅延損害金の各連帯支払を求める事案である。
 
反訴は、被告Y2が、本件総会への被告らの出席阻止を企てた原告X2及び原告X3から暴行を受けて傷害を負い、本件総会出席を妨害され、眼鏡を紛失させられたと主張して、原告X2及び原告X3に対し、共同不法行為に基づき、治療費、眼鏡の時価相当額、慰謝料及び弁護士費用合計34万7190円+遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 被告らは、原告X2に対し、連帯して5万円+遅延損害金を支払え。

 原告管理組合及び原告X3の本訴請求並びに原告X2のその余の本訴請求をいずれも棄却する。

 被告Y2の反訴請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 被告らは、原告X2が本件集会室の中に入ってドアを閉めようとするのを阻止するため、被告Y2において、原告X2の後ろから腰の辺りにしがみつき、また、被告Y1において、原告X2の後ろから首の辺りに腕を回して、原告X2を押さえたことが認められる。これは被告らの原告X2に対する暴行と認められるから、被告らには原告X2に対する不法行為が成立するというべきである。
なお、被告らは、被告ら両名が共に本件総会への出席権を有していた旨主張するが、仮にその主張が原告管理組合の規約50条1項及び51条1項ないし3項の解釈上正当であるとしても、本件総会には被告らのうちの1人しか出席できない旨話をしたにすぎない原告X2に対し、強制力を行使して権利の実現を図ること、すなわち自力救済は許されないから、被告ら両名が共に本件総会への出席権を有していたとしても上記暴行が正当化されるものではないというべきである。

2 上記の被告らによる暴行の際、揉み合いとなったことが認められるが、仮にそのときに原告X2による被告Y2に対する有形力の行使があったとしても、それは原告X2が被告Y2を振り払うための防御的行為であったというべきであるから、原告X2に被告Y2に対する不法行為が成立するとは認められない。
また、原告X3は、被告Y2の後ろから同人の両腋あるいは両脇腹の辺りを掴んで引き離したことが認められるが、上記同様、それは原告X3が原告X2を救うための防御的行為であったというべきであるから、原告X3に被告Y2に対する不法行為が成立するとは認められない。

慰謝料の金額はさておき、このようなケースでは、民事事件のみならず、刑事事件にも発展する可能性がありますので、気を付けましょう。

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管理会社等との紛争38 使用細則に禁止規定が存在しない場合における専用庭で野菜の露地栽培を行う権利を有することの確認の訴え(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、使用細則に禁止規定が存在しない場合における専用庭で野菜の露地栽培を行う権利を有することの確認の訴え(東京地判平成28年11月28日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、自らが区分所有しているマンションの区分所有者等からなる管理組合である被告に対し、原告が自らの所有する居室に接する専用庭において野菜の露地栽培等を行っていたところ、被告が、使用細則では露地栽培等が禁止されていないにもかかわらず、原告に対し上記露地栽培等の中止を要請する文書を送付し、また同内容の文書をマンション内の全戸に交付した上、原告の求めに応じず上記文書を撤回しないと主張して、約定による利用権に基づき、原告が専用庭において野菜の露地栽培を行う権利を有することの確認を求めるとともに、上記文書の交付等により原告が精神的苦痛を受けたとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料47万円の支払をそれぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

1 原告が、別紙物件目録記載の専用庭において、支柱やビニールハウス等の定着物(動産)を使用せずに、野菜を露地栽培する権利を有することを確認する。

2 原告のその余の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 本件専用庭は、原告が所有する本件居室に隣接するものではあるものの、原告が所有するものではなく、本件規約等により、原告に対し専用使用権が認められているにすぎないものである。したがって、専用使用権の範囲等については、基本的に、本件規約等により定められるべきものであり、換言すれば本件規約等により制限を受けるものであることは明らかである。
もっとも、本件居室の価格が2階の同じ面積及び間取りの居室よりも高く設定されていることに照らせば、専用使用権については、これが独立の取引対象とはなっていないことを踏まえても、一定の経済的な価値が認められることは明らかである。
よって、専用使用権の範囲を確定し又は権利を制限するにあたっては、こうした経済的負担を行った専用利用権者の利益にも十分配慮する必要があると解され、制約等をすべて本件規約等に明記すべきとはいえないものの、本件規約等の文言から当該制約等が容易に導かれる必要があると解するのが相当である。

2 本件細則3条1号及び2号の規定に照らすと、専用庭の専用使用者には、原則として専用庭内における芝生(クローバー)の維持管理義務があると認めることが相当である。
もっとも、本件規約等には芝生以外の植栽を明確に禁止する旨の規定がないことに加えて、過去に専用使用権者によりクローバーの撤去が行われた際に被告が異議を述べていないことや、一部の専用庭には砂利が敷き詰められていること、被告は、平成28年2月14日開催の臨時総会において、専用庭に芝生以外のグラウンドカバーを植栽することを認める旨の決議をしたことなどに照らすと、本件規約等が、芝生をはがすことをおよそ禁止しているものとまでは解することができない。
また、本件細則3条6号の規定から、専用庭においてはシンボルツリーの植え替え以外が認められていないとの解釈を導くこともできないし、同4条2項のいう美観の維持が、芝生の維持を指すとの解釈を導くこともできない。
したがって、専用庭における芝生の維持管理義務を理由に、野菜の露地栽培が禁止されているとする被告の主張は採用できない。

3 本件細則は、4条本文において建物の外観や環境を損なうような使い方を、同条2号において専用庭の現状の変更や美観を損なうことを禁止している。
しかし、野菜の露地栽培を行うことが、直ちにこれらの禁止事項に該当するとは認めるのは相当ではなく、野菜栽培の態様が、上記の禁止事項に該当する場合にのみ、そのような態様による野菜栽培が禁止されるにすぎないと解するのが相当である。
また、本件細則4条11号は、被告が本件規約等に違反したものと判断した禁止事項を行うことを禁止しているものの、上記で指摘した専用使用権の制限についての考え方に照らすと、同号の解釈として、被告が違反したと判断した行為のすべてを禁止することができると解すべきではなく、本件規約等に照らして違反行為であるとの判断が容易に導かれる行為に限り禁止することができると解するのが相当である。

4 原告には本件専用庭において野菜を露地栽培する権利を有しているにもかかわらず、被告が、上記権利を否定して使用方法の変更を求める本件書面を原告に対し送付し、また原告の氏名や部屋番号を消去した上で同内容の文書を組合員に対し配布したことが認められる。
もっとも、原告による本件専用庭の使用方法には、本件規約に違反する態様のものも含まれていたことや、本件規約の解釈にあたっては法律的な専門性が求められること、被告は組合員に対し原告の氏名や部屋番号を伏せた上で文書を配布するなど原告に対する配慮を行っていることなども認められる。
このような本件の事実関係に照らせば、被告が、自らの法的見解に基づき、本件規約にのっとり理事会での決議を経た上で、本件書面を送付、配布した行為については、当時における被告の対応としては相当な範囲内のものであったと認められ、これを違法と評価することはできないから、不法行為を構成するものとは認められない。

専用使用権の制限について、その経済的価値を踏まえ、比較的厳格に解釈しています。

本件でも、やはり裁判所の判断の基礎にあるのは、管理規約や使用細則にどのように規定されているのか、という文理解釈です。

区分所有建物における紛争においては、裁判所はこれらの規程の安易な拡大解釈や類推適用はしなせんので、注意しましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。