Category Archives: 有期労働契約

有期労働契約97(グローバルレギュラリーパートナーズ事件)

おはようございます。

今日は、有期雇用労働者に対する解雇の意思表示は、雇用期間満了後の契約更新拒絶の意思表示を含むとされた裁判例を見てみましょう。

グローバルレギュラリーパートナーズ事件(東京地裁令和元年10月17日・労経速2414号39頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXがY社に解雇されたところ、同解雇は解雇権の濫用により無効であると主張し、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、雇用契約に基づき、平成30年3月分の未払賃金22万5806円(日割計算による未払額)及び同年4月から本判決確定の日まで毎月末日限り100万円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、平成30年3月末日限り22万5806円、同年4月から同年8月まで毎月末日限り100万円及び同年9月末日限り50万円並びにこれらの金員に対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 Xのその余の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 平成29年11月13日のやり取りにおいて、Xは、製品標準書が本件機器の届出時に必要であることを主張していたのに対し、Bは本件機器の輸入、販売時期が先であることを説明していたというのであるから、Xの認識が誤ったものであったとしても、BからXに対し、本件機器の届出時に製品標準書が必要とされていないことについて、Xの認識を正すための的確な説明、指導がされていたものとは認められない。また、Y社は、Xの同日の言動に対して本件警告書により警告を与えたと主張するが、Bは、Xの同日の言動について机を手でひっくり返すような動きをした旨供述するのに対し、Bが同日Cに対して送信したメールにはXが机を蹴った旨の記載があるなど、同メールによる報告は正確さを欠くものといえる。
他方、Xは同日Cに対して送信したメールにおいてBとの関係等について電話で話すことを希望していたにもかかわらず、Y社はXから事情を聴くことなく一方的に警告書を送付しているのであり、本件警告書による警告についても、Xに対する適切な指導がされたものとはいい難い
Y社は、Xの上記やり取りのほか、XがBや自らの前任者を非難する旨の言動を行っていたことを縷々主張するが、これらのXの言動について具体的な経緯や態様を的確に認めるに足りる証拠はなく、また、BやCからXに対して行われた指導等の有無,内容も明らかとはいえない
そうすると、Y社の指摘するXの言動は、指導等により改善の余地があったものというべきであり、本件解雇の有効性を基礎づける客観的合理的理由に当たるということはできない。

2 Xは、本件契約が期間の定めのある契約であるとしても、本件契約には自動更新条項が付されていることから、平成30年9月15日の期間満了をもって自動更新されたと解すべきである旨主張する。
しかしながら、前記前提事実によれば、Y社は、平成30年3月9日、同月23日付けでXを解雇する旨の意思表示(本件解雇)をしたことが認められるところ、同意思表示は、Y社においてXとの雇用関係を継続させる意思がないことを表示したものと考えられるから、同意思表示には、同年9月15日の期間満了後の更新を拒絶する旨の意思表示が含まれると解するのが相当である。

本件は、指導・教育等が不十分であった、もしくはそのエビデンスが不足していた事案です。

また、上記判例のポイント2の考え方は理解しておきましょう。

有期労働契約96(博報堂事件)

おはようございます。

今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

博報堂事件(福岡地裁令和2年3月17日・労判ジャーナル99号22頁)

【事案の概要】

本件は、Xにおいて、XがY社との間で、昭和63年4月から、1年毎の有期雇用契約を締結し、これを29回にわたって更新、継続してきたところ、原・被告間の有期雇用契約は、労働契約法19条1号又は2号に該当し、Y社がXに対し、平成30年3月31日の雇用期間満了をもって雇止めしたことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、従前の有期雇用契約が更新によって継続している旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇止め後の賃金として、平成30年4月から毎月25日限り月額25万円+遅延損害金の支払、本件雇止め後の賞与として、平成30年6月から毎年6月25日及び12月25日限り各25万円+遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社は、平成25年4月1日付の雇用契約書において、平成30年3月31日以降は契約を更新しないことを明記し、そのことをXが承知した上で、契約書に署名押印をし、その後も毎年同内容の契約書に署名押印をしていることや、転職支援会社への登録をしていることから、Xが平成30年3月31日をもって雇用契約を終了することについて同意していたのであり、本件労働契約は合意によって終了したと主張する。
確かに、Xは、平成25年から、平成30年3月31日以降に契約を更新しない旨が記載された雇用契約書に署名押印をし、最終更新時の平成29年4月1日時点でも、同様の記載がある雇用契約書に署名押印しているのであり、そのような記載の意味内容についても十分知悉していたものと考えられる
ところで、約30年にわたり本件雇用契約を更新してきたXにとって、Y社との有期雇用契約を終了させることは、その生活面のみならず、社会的な立場等にも大きな変化をもたらすものであり、その負担も少なくないものと考えられるから、XとY社との間で本件雇用契約を終了させる合意を認定するには慎重を期す必要があり、これを肯定するには、Xの明確な意思が認められなければならないものというべきである
しかるに、不更新条項が記載された雇用契約書への署名押印を拒否することは、Xにとって、本件雇用契約が更新できないことを意味するのであるから、このような条項のある雇用契約書に署名押印をしていたからといって、直ちに、Xが雇用契約を終了させる旨の明確な意思を表明したものとみることは相当ではない
また、平成29年5月17日に転職支援会社であるキャプコに氏名等の登録をした事実は認められるものの、平成30年3月31日をもって雇止めになるという不安から、やむなく登録をしたとも考えられるところであり、このような事情があるからといって、本件雇用契約を終了させる旨のXの意思が明らかであったとまでいうことはできない。むしろ、Xは、平成29年5月にはEに対して雇止めは困ると述べ、同年6月には福岡労働局へ相談して、Y社に対して契約が更新されないことの理由書を求めた上、Y社の社長に対して雇用継続を求める手紙を送付するなどの行動をとっており、これらは、Xが労働契約の終了に同意したことと相反する事情であるということができる。
以上からすれば、本件雇用契約が合意によって終了したものと認めることはできず、平成25年の契約書から5年間継続して記載された平成30年3月31日以降は更新しない旨の記載は、雇止めの予告とみるべきであるから、Y社は、契約期間満了日である平成30年3月31日にXを雇止めしたものというべきである

2 Y社の主張するところを端的にいえば、最長5年ルールを原則とし、これと認めた人材のみ5年を超えて登用する制度を構築し、その登用に至らなかったXに対し、最長5年ルールを適用して、雇止めをしようとするものであるが、そのためには、前記で述べたようなXの契約更新に対する期待を前提にしてもなお雇止めを合理的であると認めるに足りる客観的な理由が必要であるというべきである
この点、Y社の主張する人件費の削減や業務効率の見直しの必要性というおよそ一般的な理由では本件雇止めの合理性を肯定するには不十分であると言わざるを得ない。また、Xのコミュニケーション能力の問題については、上記に述べるような指摘があることを踏まえても、雇用を継続することが困難であるほどの重大なものとまでは認め難い。むしろ、Xを新卒採用し、長期間にわたって雇用を継続しながら、その間、Y社が、Xに対して、その主張する様な問題点を指摘し、適切な指導教育を行ったともいえないから、上記の問題を殊更に重視することはできないのである。そして、他に、本件雇止めを是認すべき客観的・合理的な理由は見出せない。
以上によれば、Xが本件雇用契約の契約期間が満了する平成30年3月31日までの間に更新の申込みをしたのに対し、Y社が、当該申込みを拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことから、Y社は従前の有期雇用契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされる

上記判例のポイント1はしっかり押さえておきましょう。

これまでの裁判所の考え方からすれば、特に驚く内容ではありません。

有期労働契約95(学校法人A学園(雇止め)事件)

おはようございます。

今日は、雇用継続の合理的期待がないとして有期労働契約の期間満了時の雇止めが有効とされた裁判例を見てみましょう。

学校法人A学園(雇止め)事件(那覇地裁令和元年11月27日・労経速2407号7頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある労働契約を締結していたXが、Y社の雇止めは、客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性を欠くものであり、労働契約法19条によりXとY社との間の労働契約は従前と同一の内容で更新されたなどと主張して、Y社に対し、地位保全及び賃金仮払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

本件申立てをいずれも却下する。

【判例のポイント】

1 Xは、看護師として採用されたものであり、業務内容は、臨時的なものではなく、継続的に行っていく必要がある業務も含まれていたことが認められる。しかし、Y社が採用している看護師は全て任期制雇用であり、Xの地位は、正職員と記されている場合があるものの、それは、派遣社員との比較における記載で、契約書上も就業規則上も明確に有期雇用であるとされ、更新の可能性は指摘されているが、継続的に更新されるとまではされていない
また、Xは、当初2年の契約期間で雇用され、その後、1回の更新を経て、通算期間2年5月の勤務をしてきたものであり、多数回で長期間の契約期間であったものではない

2 1回の更新後の契約期間についての意味合いについては、Z4博士によるXに対しての説明内容について、当事者間に争いがあるものの、更新期間が5月であり、クリニックの再開の目途がたった場合に、更新を必ず行うというのであれば、そもそも2年更新を検討するという前提(Y社側の説明に合致する。)だったからこそ、とりあえず年度末まで契約更新して、それまでの間に考え、更新しない方針となったのであれば、更新しないこととすることを考えた上での、更新であったと認められる。
また、契約更新の手続は、システム上で行えるものとなっており、Y社から契約更新の条件を明示され、かつ、それにXが同意すれば更新されるというものであり、厳格なものであった。

3 以上の事情を総合すると、X自身としては、Y社において勤務するにあたり看護師として長期にわたり働く予定であったことはうかがえるものの、あくまで主観的なものといえ、Xに雇用継続の合理的期待があるとはいえず、本件労働契約は労働契約法19条2号に該当しない。

上記判例のポイント1、2のような運用をしている限り、雇止めが無効と判断される可能性はかなり低いといえます。

雇止めが無効と判断されている事案の多くは、運用の稚拙さがその理由となっています。

有期労働契約94(学校法人Y大学事件)

おはようございます。

今日は、特任教員の雇止めについて更新期待の合理的理由が否定された裁判例を見てみましょう。

学校法人Y大学事件(札幌高裁令和元年9月24日・労経速2401号3頁)

【事案の概要】

Y社は、Y大学を設置、運営している。Xは、Y社と、Y社がXをY大学の特別任用教員として雇用する旨の有期労働契約を締結した。本件労働契約はその後6回にわたって更新されたが、Xは、平成29年3月31日をもってその更新を拒絶された。本件は、Xが、同拒絶は労働契約法19条2号に違反すると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同年4月1日から本判決の確定に至るまで、毎月21日限り、賃金月額38万1000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は、Xの請求をいずれも棄却した。これに対して、Xは控訴するとともに、当審において、非常勤講師としての賃金月額21万0560円+遅延損害金の支払請求を予備的に追加した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xは、ロシア語の教職課程では、有期労働契約の教員が専任教員として教職課程の担当になったことは過去になかったことから、教職課程の担当となることを依頼されたXは、平成29年度以降も雇用継続への期待を持つことになった旨主張する。
しかし、Xが主張するような過去の事例と有期労働契約を締結しているXの労働契約の更新の問題とは客観的にみて関連性を欠くといわざるを得ない。加えて、本件教職課程の完成年度は平成28年度までであるから、Xが本件教職課程の専任教員となったことが平成29年度以降における本件労働契約の更新を期待することの合理的理由となるものではない。

2 Xは、平成26年3月19日の本件説明会におけるA3理事の説明は、雇用継続への期待を抱かせるものであった旨主張する。
しかし、A3理事は、本件説明会において、平成29年度以降の雇用の可能性に対する質問に対して、Xを含む特任教員の雇用継続は平成28年度末、すなわち平成29年3月31日までを念頭に置いており、同日までは雇用の継続が確実であるが、労働契約が1年ごとに更新される以上、2年後、3年後の雇用の継続を約束することはできない旨回答しているこのようなやり取りの経緯からすれば、A3理事が平成29年3月末で契約を打ち切ると断言しなかったからといって本件労働契約の更新を期待させることの合理的な理由となると評価することはできない

本件は、5年の雇用上限設定がされている事例です。

当初より雇用期間の上限を設定し、かつ、恣意的な運用をしていない場合には、雇止めは有効と判断されることが多いです。

有期労働契約93(シェーンコーポレーション事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、雇止めの有効性が争われた裁判例を見てみましょう。

シェーンコーポレーション事件(東京高裁令和元年10月9日・労判ジャーナル95号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Xとの間で、期間を平成27年3月1日から平成28年2月28日までの1年間とする有期労働契約を締結してXを雇用し、1度、契約を更新したが、その後、契約更新を拒絶したため、Xは、労働契約法19条により契約が更新されたものとみなされると主張して、Y社に対し、労働契約上の地位の確認を求めるとともに、平成29年3月分以降、判決確定の日までの賃金等の支払を求めた。

原判決は、Xの請求を棄却したため、Xが控訴した。

【裁判所の判断】

原判決取消し
→請求認容

【判例のポイント】

1 労働契約法19条2号該当性について、Y社は、従業員講師とは一律に1年間の有期労働契約を締結しているが、契約の更新を希望する講師との間では、遅刻が多かったり、授業の質が低いなどの事情がある場合を除き、通常は契約の更新をしており、Xとの間でも、平成27年3月1日に1年間の有期労働契約を締結し、その後、Xから授業観察の申出を拒否されたり、前日の午後11時29分になってから翌日のストライキを通知されたり、Xの授業を観察した上司が7項目について改善必要との講評をしたとの事情があったものの、その後の平成28年3月1日、Xと契約を更新し、このような経緯からすると、Xにおいて本件雇用契約の契約期間の満了時に同契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があったと認めるべきである。

2 Xが有給休暇として取得した休暇について、正当な理由のない欠勤であったと認めることはできず、また、Y社は、Xの勤務内容が不良であるとして、種々の主張をするが、いずれも雇止めをするかどうかの判断に際して重視することを相当とするようなものとは認められないから、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないといわざるを得ず、Y社は、本件雇用契約の内容である労働条件と同一の労働条件により契約締結の申込みを承諾したものとみなされるから、Xは、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び平成29年4月から本判決確定の日まで毎月15日限り25万7800円の賃金の支払を求めることができる。

雇止めの理由として小さいミス等をいくつ積み重ねても、結局、取るに足らない場合には合理的な理由にはなりません。

有期労働契約92(ジャパン・ビジネスラボ事件)

おはようございます。

今日は、育児休業取得後になされた有期労働契約への変更、雇止めが有効と判断された裁判例を見てみましょう。

ジャパン・ビジネスラボ事件(東京高裁令和元年11月28日・労経速2400号41頁)

【事案の概要】

本件乙事件は、語学スクールの運営等を目的とする株式会社であるY社が、育児休業を取得し、育児休業期間が終了するXとの間で平成26年9月1日付けで締結した契約期間を1年とする契約社員契約は、Y社が期間満了により終了する旨を通知したことによって、平成27年9月1日、終了したと主張して、Xに対し、Y社に対する労働契約上の権利を有する地位にないことの確認を求めた事案である。
本件甲事件本訴は、Xが、Y社に対し、ア(ア)一審原告が一審被告との間で平成26年9月1日付けでした労働契約に関する合意によっても、Y社との間で平成20年7月9日付けで締結した期間の定めのない労働契約(以下「本件正社員契約」という。)は解約されていない、(イ)仮に、本件合意が本件正社員契約を解約する合意であったとしても、①均等法及び育介法に違反する、②Xの自由な意思に基づく承諾がない、③錯誤に当たるなどの理由により無効であり、本件正社員契約はなお存続すると主張して、本件正社員契約に基づき、正社員としての労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成26年9月分から平成27年8月分までの未払賃金合計448万8000円+遅延損害金、イ 仮に、本件合意によって本件正社員契約が解約されたとしても、XとY社は、本件合意において、Xが希望すればその希望する労働条件の正社員に戻ることができるとの停止条件付き無期労働契約を締結したと主張して、Xの希望した所定労働時間の短縮された無期労働契約に基づき、正社員としての労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成26年10月分から平成27年8月分までの未払賃金合計337万4800円+遅延損害金の支払を求め、ウ 仮に、XのY社に対する正社員としての地位が認められないとしても、Y社がした本件契約社員契約の更新拒絶(本件雇止め)は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないと主張して、本件契約社員契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同月から弁済期である毎月20日限り賃金1か月10万6000円+遅延損害金の支払を求め,エ Y社が、Xを契約社員にした上で正社員に戻すことを拒んだことやこれに関連する一連の行為は違法であると主張して、不法行為に基づき、慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の合計330万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
 本件甲事件反訴は、Y社が、Xに対し、Xが平成27年10月に行った記者会見の席において、内容虚偽の発言をし、これによりY社の信用等が毀損されたと主張して、不法行為に基づき、慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の合計330万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Xの控訴及びXの当審における追加請求(正社員復帰合意に基づく地位確認請求、債務不履行による損害賠償請求及び信義則違反を理由とする不法行為による損害賠償請求)をいずれも棄却する。

2 Y社の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
(1) Y社は、Xに対し、5万5000円+遅延損害金を支払え。
    Xのその余の甲事件本訴各請求(当審における追加請求を除く。)をいずれも棄却する。
(2)ア Xは、Y社に対し、55万円+遅延損害金を支払え。
    Y社のその余の甲事件反訴請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 正社員と契約社員とでは、契約期間の有無、勤務日数、所定労働時間、賃金の構成(固定残業代を含むか否か、クラス担当業務とその他の業務に係る賃金が内訳として区別されているか否か。)のいずれもが相違する上、Y社における正社員と契約社員とでは、所定労働時間に係る就業規則の適用関係が異なり、また、業務内容について、正社員はコーチ業務として最低限担当するべきコマ数が定められており、各種プロジェクトにおいてリーダーの役割を担うとされているのに対し、契約社員は上記コマ数の定めがなく、上記リーダーの役割を担わないとの違いがあり、その担う業務にも相当の違いがあるから、単に一時的に労働条件の一部を変更するものとはいえない。
 そうすると、Xは、雇用形態として選択の対象とされていた中から正社員ではなく契約社員を選択し、Y社との間で本件雇用契約書を取り交わし、契約社員として期間を1年更新とする有期労働契約を締結したもの(本件合意)であるから、これにより、本件正社員契約を解約したものと認めるのが相当である。

2 このようなY社による雇用形態の説明及び本件契約社員契約締結の際の説明の内容並びにその状況、Xが育児休業終了時に置かれていた状況、Xが自ら退職の意向を表明したものの、一転して契約社員としての復職を求めたという経過等によれば、本件合意には、Xの自由な意思に基づいてしたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するものといえる
 したがって,本件合意は、均等法9条3項や育介法10条の「不利益な取扱い」には当たらないというべきである。

3 Y社代表者の命令に反し、自己がした誓約にも反して、執務室における録音を繰り返した上、職務専念義務に反し、就業時間中に、多数回にわたり、業務用のメールアドレスを使用して、私的なメールのやり取りをし、Y社をマタハラ企業であるとの印象を与えようとして、マスコミ等の外部の関係者らに対し、あえて事実とは異なる情報を提供し、Y社の名誉、信用を毀損するおそれがある行為に及び、Y社との信頼関係を破壊する行為に終始しており、かつ反省の念を示しているものでもないから、雇用の継続を期待できない十分な事由があるものと認められる
 したがって、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であるというべきである。

4 本件記者会見は、本件甲事件本訴を提起した日に、X及びX訴訟代理人弁護士らが、厚生労働省記者クラブにおいて、クラブに加盟する報道機関に対し、訴状の写し等を資料として配布し、録音データを提供するなどして、Y社の会社名を明らかにして、その内容が広く一般国民に報道されることを企図して実施されたものである。
そして、報道機関に対する記者会見は、弁論主義が適用される民事訴訟手続における主張、立証とは異なり、一方的に報道機関に情報を提供するものであり、相手方の反論の機会も保障されているわけではないから、記者会見における発言によって摘示した事実が、訴訟の相手方の社会的評価を低下させるものであった場合には、名誉毀損、信用毀損の不法行為が成立する余地がある
Xは、記者会見は、報道機関に対するものであるから、記者らにとっては、記者会見における発言は、当事者が裁判手続で立証できる範囲の主張にすぎないと受け止めるものである、訴状を閲覧した報道機関からの取材に応じることと何ら変わるものではないなどと主張する。
しかしながら、Xらは、報道機関からの取材に応じるのとは異なり、自ら積極的に広く社会に報道されることを期待して、本件記者会見を実施し、本件各発言をしており、報道に接した一般人の普通の注意と読み方を基準とすると、それが単に一方当事者の主張にとどまるものではなく、その発言には法律上、事実上の根拠があり、その発言にあるような事実が存在したものと受け止める者が相当程度あることは否定できないし、実際、Y社に対しては、マタハラ行為をしたとして苦情のメールがあったところでもある。そして、Xらは、本件記者会見において本件各発言をしたことが認められるから、その発言内容を事実として摘示したものというべきである。

非常に注目を集めている事件の控訴審判決です。

最高裁がどのような判断をするのか気になるところです。

上記判例のポイント3、4は、賛否両論あるところですが、重要な点なので、押さえておきましょう。

有期労働契約91(すみれ交通事件)

おはようございます。

今日は、定年後再雇用のタクシー運転手の雇止めが有効とされた裁判例を見てみましょう。

すみれ交通事件(横浜地裁令和元年9月26日・労経速2397号30頁)

【事案の概要】

本件は、一般乗用旅客自動車運送事業を営む特例有限会社であるY社において勤務し、又は勤務していたXら7名のうち、①X7を除くXら6名が、Y社に対し、Y社から年次有給休暇の取得を妨害されたとして、雇用契約上の債務不履行に基づき、すでに喪失した年次有給休暇の日額報酬相当分及び年次有給休暇を使用できずに欠勤した日数の日額報酬相当分の損害賠償+遅延損害金の各支払、②X2が、Y社に対し、X2に対する雇止めが違法無効であると主張して、不法行為に基づき300万円の慰謝料+遅延損害金の支払、③X7が、Y社に対し、X7に対する就労拒否が違法無効であると主張して、不法行為に基づき300万円の慰謝料+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、X2が平成27年5月16日に危険運転を行い、これに対する反省が見られないことを理由に本件雇止めを行っているところ、X2は、同日、Z6バイパス上において、観光バスの前に割り込む形で車線変更を行い、観光バスがパッシングしたことに対して運転車両を急減速させるなど、危険運転と評価されてもやむを得ない運転行為に及んでおり、これについて警察から注意を受けた際も、自らの非を認めず謝罪や反省をしなかったことが認められる。この点に関しX2は、パッシングされて観光バスに故障等の異変が生じたかと思い、様子を伺うために減速したに過ぎないなどと述べて危険運転の存在を争うが、故障等のトラブルが生じた際にパッシングをして前方の車両に合図を送るというのはいかにも不自然な経緯を述べるものであり、信用できない。むしろ、X2の車両が観光バスの直前に入り込む形で左側車線から車線変更をしていることや、観光バスがあえてドライブレコーダーを解析してX2の車両を特定し、警察に通報したという経緯を踏まえると、X2の運転行為が相応に危険なものであったことが推認される

2 さらに、Z1の供述によれば、X2は、この運転行為が発覚した際、観光バスがパッシングしたから急ブレーキをかけたことを認める発言をしていたとのことであり、労働契約期間満了通知書にも同様の記載が認められることからすれば、X2においても、自らの運転行為が危険なものであったことを認識しながら、謝罪を拒んだものと認められる

3 以上に加えて、X2がB賃乗務員となった後の交通事故発生率が比較的高く、とりわけ本件雇止め直前の雇用期間中の平成26年9月と11月に立て続けに事故を惹起していること、それにもかかわらず前記危険運転行為に及び、これについて反省や今後事故を回避するための方策を真摯に検討する様子が伺えない点を踏まえると、Y社が、今後X2の運転により重大な事故等が発生することを危惧し、前記運転行為について真摯な謝罪や反省がなければ契約の更新を行うことはできないと判断したことは、やむを得ないというべきである。

解雇や雇止めの合理的理由の有無を考える場合、当該従業員の非違行為等の程度とともに、その後の反省、改善に対する姿勢等も加味することになります。

有期労働契約90(シェーンコーポレーション事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、法定外年休をも対象とする計画年休制度の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

シェーンコーポレーション事件(東京高裁令和元年10月9日・ジュリ1540号4頁)

【事案の概要】

Xは英会話学校を経営するY社と平成27年3月1日から期間1年の有期労働契約を締結し、講師として複数の学校で勤務した。Xの契約は1回更新されたが、2回目の更新はなされなかった。これに対する労働契約上の地位確認及び未払賃金請求が原審で棄却されたため、Xが控訴した。

Y社就業規則17条は「勤続6か月に達した講師には、年間20日間の有給休暇を与える。ただし、・・・5日を超える有給休暇(15日間)については、取得する時季を指定して一斉に取得する計画年休とし、その時季は、講師カレンダーに示される。」と規定していた(計画的年休制度)。法定の年休とそれを超える部分である会社有給休暇との区別はなく、計画年休協定(労基法39条6項)も締結されていなかった(平成28年10月に講師代表3名とY社が協定を締結したが、この3名は一般の従業員を除く講師のみの投票で選ばれており、かつ事業場である学校毎ではなく複数校をまとめたエリア毎の代表であった。)。

【裁判所の判断】

原判決取消し、Xの請求認容

【判例のポイント】

1 Y社では講師の希望があれば遅刻が多いあるいは授業の質が低いなどの事情がある場合を除き通常は契約の更新をしている。・・・このことからすれば、Xには本件当時「契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があった。

2 労基法39条6項の要件を満たす労使協定は締結されていないので、法定年次有給休暇について、その時季をY社が指定することはできず、Xを含む従業員が自由にその時季を指定することができた。会社有給休暇については労基法の規律を受けず、Y社が時季指定を行えるが、法定分についてY社は時季指定できない。そしてY社は、法定年次有給休暇を区別することなく15日を指定しており、そのうちどの日が会社有給休暇に関する指定であるかを特定することはできない
したがって、上記の指定は、全体として無効というほかなく、年間20日の有給休暇の全てについて、Xがその時季を自由に指定することができる。計画的年休として指定された14日はY社がXの就労を免除したものとなる。Xが有給休暇として取得した休暇は正当な理由のない欠勤には該当しない

あまり見たことがない論点ですが、このように解さざるを得ないと思います。

有期労働契約89(地方独立行政法人大阪市民病院機構事件)

おはようございます。

今日は、雇止め無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

地方独立行政法人大阪市民病院機構事件(大阪地裁令和元年8月29日・労判ジャーナル93号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していた元職員Xが、大阪市との間で、平成24年4月1日、期間の定めのある労働契約を締結し、これを平成25年3月31日までは2か月ごと、同年4月1日以降は1年ごとに継続的に更新(平成26年10月1日に法人が設立されて以降は法人との間で更新)してきたところ、平成30年4月1日以降の契約更新を拒否されたため、Xが、労働契約法19条2号により労働契約は更新したものとみなされると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに未払賃金等の支払、また、Y社が上記更新拒絶により故意又は過失によりXの権利ないし法律上保護に値する利益を侵害したとして、不法行為に基づき、慰謝料等130万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社との間において、その契約上更新の回数や通算雇用期間が定められ、本件契約においては更新がないと定められており、そのため、Xがそれを超えてY社と労働契約を締結するには、他者と同様に採用募集に応募して、改めて採用試験を受けてこれに合格する必要があったことにとどまらず、X自らが課長と平成30年度の労働契約に関して協議した際、「来年度も状況が変わらず非常勤のままであれば更新しません」と述べたため、そのことをきっかけに、Y社は、労働条件を変えて(看護職員と同じ時給に上げて)手話通訳者の募集を行ったところ、Xもこれに応募して採用試験を受験したものの、Xは不合格となったところ、Xが、有期雇用職員として更新ないし再契約して無期転換しても正規職員となれないためか、駆け引きとして「非常勤のままであれば更新しません」とべた結果、それを信じたYがXの穴を埋めるためにこれまでとやり方を変えて人員募集を行い、好条件に惹かれて好成績者を含む複数の応募があり、その採用試験の結果、Xが不合格となったものであるから、その結果はX自らの言動に由来するものと言わざるをえず、そのような状況でXが本件契約の更新を期待したとしてもそれが合理的な理由があるとはいえず、本件雇止めは有効である。

2 Xが本件試験に合格できると期待したとしても、そのような期待は法律上保護に値せず、また、Y社に故意又は過失も認められないから、Xの損害賠償請求にも理由がない。

契約当初より、更新上限回数等が定められている場合には、それを超えた更新に関する期待は法的に保護されないのが原則です。

有期労働契約88(ユニオン事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ユニオン事件(大阪地裁令和元年6月6日・労判ジャーナル92号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、平成5年2月頃、期間の定めのある労働契約を締結し、これを約3か月ごとに継続的に更新してきたXが、同年9月10日以降の契約更新を拒否されたため、労働契約法19条により労働契約は更新したものとみなされると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成28年10月以降の未払賃金(月額20万円)及び賞与(35万円)等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・本件契約が、社会通念上、期間の定めのない契約と同視できる状態であったとは認められないが、他方、XとY社との間で、多数回、約23年にわたって有期労働契約の更新が繰り返されており、このような更新が繰り返されてきた契約と本件契約では、雇用期間、勤務時間、賃金額等労働条件が大きく異なるとしても、直ちにXの契約更新に対する期待が消滅するとまではいえない。

2 短期間(約2か月)にXによるミスが6件あり、うち4件が取引先からのクレームに至るものであり、取引先からの信用を失わせる上、その対応のために多大な労力や費用を要するものであったこと、これらのミスを受けてY社の総務部業務グループにおいてXも出席する苦情発生対策会議が開催され、その原因の確認や改善策の導入が行われたものの、その後も、苦情発生対策会議から間もなく、短期間(約1か月)の間に、運送便の手配忘れ等の同様のミスが少なくとも5件続いたこと、これらのミスについては、他の従業員の二重チェック等により発見されなければ、納品の遅れや二重納品等によって取引先からのクレームに至りかねないものであったこと、受注書の紛失や運送便の手配忘れ等、そのミスの内容からしても、Xの経験が不足しているためというよりはその不注意によるものと考えられること、これらの事情に加え、労働契約法19条により更新したものとみなされるのが従前更新を繰り返した短時間労働者としての契約ではなく本件契約であることも考量すると、仮に、本件契約が更新されるとXが期待することに合理的な理由があったとしても、本件雇止めは、客観的に合理的な理由がないとはいえず、また、社会通念上相当でないともいえないから、本件雇止めが無効であるとはいえない

上記判例のポイント2は、解雇や雇止め事案のあてはめとして参考になります。

どのような点を主張立証すればよいのかがよくわかると思います。