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労災①(過労死・過労自殺事案における会社の安全配慮義務)

会社で過労死・過労自殺が発生した場合、会社に損害賠償責任が認められることがあります。

会社には、従業員の心身の健康を損なうことがないように注意する義務があります。

これを安全配慮義務といいます。

安全配慮義務について、最高裁は、電通事件(最高裁平成12年3月24日・労判779号13頁)において、

「業務の量等を適切に調整するための措置」、すなわち健康破壊が起こらない程度まで業務量を適切に調整して業務軽減措置をとる義務がある

と判断しました。

「恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していること及びその健康状態が悪化していることを認識しながら、業務は所定の期限までに遂行すべきことを前提として、帰宅してきちんと睡眠を取り、それで業務が終わらないのであれば翌朝早く出勤して行うようになどと指導したのみ」では足りないとも判断しています。

安全配慮義務の内容は、以下のとおりです。

・労働時間、休憩時間、休日、労働密度、休憩場所、人員配置、労働環境等適切な労働条件を措置すべき義務(適正労働条件措置義務)

・必要に応じ、健康診断またはメンタルヘルス対策を講じ、労働者の健康状態を把握して健康管理を行い、健康障害を早期に発見すべき義務(健康管理義務)

・健康障害に罹患しているか、その可能性のある労働者に対しては、その症状に応じて勤務軽減、作業の転換、就業場所の変更等、労働者の健康保持のための適切な措置を講じ、労働者の基礎疾患等に悪影響を及ぼす可能性のある労働に従事させてはならない義務(適正労働配置義務)

・過労により脳・心臓疾患または精神障害等の疾患を発症したか、または発症する可能性のある労働者に対し、適切な看護を行い、適切な治療を受けさせるべき義務(看護・治療義務)

労災事故が起こった場合のために、労災補償制度があります。

しかし、労災補償制度は、あくまでも事後救済です。

労災は、予防こそが最も大切であるということをお忘れなく