解雇39(メッセ事件)

おはようございます

さて、今日は、経歴詐称を理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

メッセ事件(東京地裁平成22年11月10日・労判1019号13頁)

【事案の概要】

Y社は、労働者派遣事業を目的とする会社である。

Xは、Y社との間で、雇用期間を1年とする雇用契約を締結し、平成20年5月からY社において就労し始めた。

Y社は、アメリカで経営コンサルタントをしていたとする略歴書を信用してXを採用した。しかし、当時のY社の代表取締役Y1は、本件雇用契約締結後、Xが会議において他の従業員に対し強く意見を述べた際、その発言内容が理解しがたかったことなど、Xの態度や発言等から、Xが従前経営コンサルタントをしていたとの経歴に疑問を感じるようになった。

そこで、Y1は、インターネットでXの氏名を検索したところ、食品菓子販売大手のA社の役員を中傷するファックスを流したために、平成16年6月、自称経営コンサルタントX容疑者を逮捕した、などと記載された記事を発見した。

Y1は、平成20年5月、Xに対し、本件記事記載の人物がX本人かを確認したところ、Xは、これを認め謝罪するとともに自身は無罪であると主張した。

Y1は、Xの経歴詐称は、本件雇用契約締結の動機づけを覆すものであるからXを解雇しようと考えたが、Xが円満に退職することを望み、30万円を一括して支払うことを条件にXに対して退職勧奨をしたが、Xは退職条件について記載した書面の交付を求め続けた。

そこで、Y社は、Xを懲戒解雇した。

Xは、本件懲戒解雇は無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 雇用関係は、労働力の給付を中核としながらも、労働者と使用者との相互の信頼関係に基礎を置く継続的な契約関係であるといえることからすると、使用者が、雇用契約の締結に先立ち、雇用しようとする労働者に対し、その労働力評価に直接関わる事項や、これに加え、企業秩序の維持に関係する事項について必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は、信義則上、真実を告知すべき義務を負うものというべきである。したがって、労働者が前記義務に違反し、「重要な経歴をいつわり採用された場合」、当該労働者を懲戒解雇する旨定めた本件就業規則の規定は合理的であるといえる。

2 Xは、信用毀損被告事件で起訴されたことはないから、同起訴を理由としてした本件解雇は無効である旨主張する。
確かに、本件解雇通知書には、信用毀損罪で起訴された旨記載されていることが認められる。しかし、本件解雇の事由に該当するXの所為は、本件服役等の期間中について、渡米して経営コンサルタント業務に従事していた旨及び「賞罰なし」との虚偽の記載をした本件履歴書を提出したことであるところ、当該事実について、本件解雇通知書の記載内容に誤りはない。さらに付言すると、本件前科の罪名は名誉毀損罪であり、信用毀損罪による未決勾留中に求令状起訴されたことからすると、被疑事実と本件前科の犯罪事実は、同一の社会的事象について法的評価が変更されたものと推認され、犯状は異なるものではないから、前記罪名が異なることによって、経歴詐称の程度、悪質性等が左右されるものでもないといえる。

3 労働者が雇用契約の締結に際し、経歴について真実を告知していたならば、使用者は当該雇用契約を締結しなかったであろうと客観的に認められるような場合には、経歴詐称それ自体が、使用者と労働者との信頼関係を破壊するものであるといえることからすると、前記のような場合には、具体的な財産的損害の発生やその蓋然性がなくとも、「重要な経歴をいつわり採用された場合」に該当するというべきである

4 Xは、Y社に対し、本件服役等について秘匿したのみならず、その間、渡米して経営コンサルティング業務に従事していたと自己の労働力の評価を高める虚偽の経歴を記載した本件略歴書及び本件履歴書を提出したことが認められ、その態様は悪質であるといえる。また、Y社は、本件服役等の事実が発覚した後、Xに対し、弁解の機会を与え、さらに、30万円の支払を提示して自主退職の機会も与えたことが認められ、本件解雇に至るまでに相当な手続を履践したといえる。これに対し、Xは、本件前科について無罪である旨主張しながら、その根拠となる資料をY社に提示することを拒否し、また、Y社からの退職勧奨に対し、退職条件について協議するでもなく、退職条件を記載した文書の送付に拘泥するなど、経歴詐称発覚後のXの対応も、Y社との信頼関係を破壊するに足りるものであったといえる。

本件は、本人訴訟のようです。控訴はしていません。

本件事実を見る限り、悪質性が極めて高いので、懲戒解雇は相当であると考えます。

インターネットで情報が半永久的に残ってしまい、それを誰でも簡単に確認できてしまう現代特有の問題ですね。

本件裁判例では、冒頭で、労働者が負うべき真実告知義務の範囲について判断しています。

典型的には、学歴、職歴、前科、年齢などの詐称が問題となります。

それ以外の事項について、詐称があった場合、懲戒処分の対象となるか否かは、ケースバイケースです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。