継続雇用制度18(学校法人大谷学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、継続雇用制度に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人大谷学園事件(横浜地裁平成22年10月28日・労判1019号24頁)

【事案の概要】

Y社は、平成18年8月頃、継続雇用制度を導入する新たな就業規則を作成し、それによれば、定年退職日以降も引き続き勤務を希望し、かつ、所定の基準に該当する場合は再雇用するとした。

再雇用の対象となる基準の中には、「過去10年間に第52条に定める懲戒処分を受けていないこと」の定めがある。

Xは、定年退職が近づいた平成20年10月、組合を通じて、Y社に対し、60歳定年後の雇用延長を願い出る旨記載した個人意向調査票を提出した。

これに対し、Y社は、Xに対し、平成21年3月31日をもって定年となり、再雇用はしない旨の通知をしたため、Xは、同日、定年により退職することとなった。

Xは、Y社が導入した継続雇用制度は、高年齢者雇用安定法9条2項等に違反し無効であるとして、雇用契約上の地位確認、あるいは、雇用上の権利の侵害を理由に損害賠償を求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 高年齢者雇用安定法9条1項が私法的強行性を有するか否かについて検討するに、同項の規定上、これに違反した場合に、労働基準法のような私法的効力を認める旨の明文規定も補充的効力に関する規定も存在しない。また、同項各号の措置に伴う労働契約の内容や労働条件について規定していない。むしろ、継続雇用制度について、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度であると定義付けるだけで、制度内容を一義的に規定せず、多様な制度を含み得る内容となっており、直ちに私法上の効力を発生させるだけの具体性を備えているとは解し難い。このように、同項の規定自体、私法的強行性を認める根拠は乏しいといわなければならない。

2 しかも、高年齢者雇用安定法は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もって高年齢者等の職業の安定をその他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とし(1条)、事業主のみならず国や地方公共団体も名宛人として、種々の施策を要求しており、社会政策誘導立法、政策実現型立法として、公法的性格を有している。そして、高年齢者雇用安定法9条1項が事業主に対する公法上の義務を課す形式をとり、義務違反に対する制裁としては、緩やかな指導、助言、勧告を規定するのみであること(10条)、高年齢者雇用安定法9条2項は、一定の場合に、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めることを許容して、希望者であっても、継続雇用制度の対象としないことを容認していること、高年齢者雇用安定法8条は、平成16年法律第103号による改正後も65歳未満定年制を適法としていることを考慮すると、高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用確保については、その目的に反しない限り、各事業主の実情に応じた労使の工夫による柔軟な措置を許容する趣旨であると解されるのであり、高年齢者雇用安定法9条1項に、Xらが主張するような私法的強行性を認める趣旨ではないことを裏付けている

3 以上のように、高年齢者雇用安定法9条1項の規定自体からも、同条の全体構造からも、Xが主張するような同項の私法的強行性を肯定する解釈は成立しない。

結論としては、これまでの多くの裁判例と同じです。

特徴的なのは、理由を具体的に述べている点ですね。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。