Daily Archives: 2011年11月21日

解雇59(萬世閣(顧問契約解除)事件

おはようございます。

さて、今日は、調理部長に対する執行役員からの解任、顧問契約解除の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

萬世閣(顧問契約解除)事件(札幌地裁平成23年4月25日・労判1032号52頁)

【事案の概要】

Y社は、温泉旅館業を営む会社である。

Xは、昭和45年、Y社に調理職として採用され、調理長等を経て、平成8年2月頃、Y社の取締役に就任するともに、Y社における総調理部長に任命された。

Xは、平成14年12月頃、取締役を解任され、常務執行役員となり、さらに、平成18年9月、執行役員を解任され、調理部顧問に配属された。

Xは、職務として調理人の手伝いや自動車の移動、テラスの鉢植えの花の手入れなども行うようになった。その後、Xは、Y社就業規則に定める定年年齢(60歳)となった。

Xは、平成20年10月、他の顧問とともに、Y社における長時間労働や時間外手当の不支給等を労基署に申告し、これを受けて、労基署がY社に立入検査を行った。

Y社は、Xに対し、退職についての話をし、その後、顧問契約を解除する旨記載された書面を送達し、以後Xの就労を拒んだ。

Xは、顧問契約の解除は、解雇権の濫用であり無効である等と主張し、争った。

【裁判所の判断】

解雇は無効

解雇は不法行為にあたるとして、慰謝料40万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 (1)Xは、昭和46年から、洞爺湖萬世閣調理部長として、洞爺湖萬世閣のみならず、登別萬世閣の各調理部門の調理全般及び原価計算、メイド管理等の統括業務に当たっていたこと、(2)Xは、平成8年2月、Y社の取締役に任じられると同時に、総調理部長となり、従前担当してきた洞爺湖萬世閣及び登別萬世閣に加え、定山渓ミリオーネの各調理部門の総括に当たるようになったこと、(3)Xは、取締役に就任後も、Y社取締役会には1回しか出席したことがなく、その職務内容は、その担当に定山渓ミリオーネや企画商品の打合せ等が加わったほかは、基本的に従前と変わりがなかったこと、(4)取締役在任中、Xは、Y社から給与を支給され、雇用保険に加入しているものとして、その保険料を控除されていたことが認められる。そして、Xが取締役に就任すると同時に従業員としての退職の意思表示をしたか、Y社と退職の合意をしたという事情もうかがわれないのであるあから、Xは、平成8年2月にY社の常務取締役に就任後も、従前の労働契約を維持したままであり、取締役であるとともに使用人たる地位も兼任していたものと認められる

2 これまでY社の常務執行役員として名目だけにせよその経営陣に名を連ね、洞爺湖萬世閣、登別萬世閣及び定山渓ミリオーネの各調理部門の調理部長や調理長に指示を下すべき立場にあったのに、あからさまではないにせよ、今度は一介の調理人同然に補助業務をすることとなり、その他雑務も指示されたというのであって、これは左遷ないし降格と受け取られる人事異動といい得ること等に照らすと、これが不利益処分という性質を有することは否定できないのであって、前記のようにA執行役員をY社代表取締役の後継者とするためにXを執行役員から解任するという動機は正当な理由とはいえないから、かかる人事上の不利益処分は、故意にXの名誉ないし社会的評価を傷付けた違法なものとして不法行為を構成するというべきである

3 Xは、Y社との労働契約に基づき、その常務執行役員に就任したものであるところ、Xが、洞爺湖萬世閣調理部顧問に配属されるに当たって、退職の意向を示したとか、退職の合意をしたなどとうかがわせる事情は何もなく、退職金が支払われたなどといった事情もないのであるから、Xを洞爺湖萬世閣調理部門に配属させたのも従前の労働契約に基づくものというべきである
そして、Xの職務の性質に加え、平成20年3月31日当時、洞爺湖萬世閣には定年である60歳を超えて雇用される者が多数いたこと、Xの給与が42万円から30万円に引き下げられたのは、Xが定年に達した平成20年2月ではなく、同年4月分の給与からであること等に加え、Y社代表取締役がXを65歳になるまで使用することを考慮している旨伝えたこと等に照らすと、上記労働契約については少なくとも60歳の定年後もXの雇用を継続する旨の合意がされていたというべきである

この事件、原告側にいっぱい弁護士がついています。合計27人。

実働は何人なんでしょうか?

判決を読み込んで、両当事者がどのような主張、反論を繰り広げているかを見ていくと、勉強になります。

被告側の主張を見てみると、実際のところ、原告に不利な事情もいくつか散見されますが、そこは、総合判断ですので、多少、不利な事情があっても、トータルでは原告の主張が認められるのだと思います。

被告側は、控訴していますが、どうなったのでしょうか。 和解で終わったのかしら。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。