管理監督者27(シーディーシー事件)

おはようございます。 

さて、今日は、飲食店調理長の割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

シーディーシー事件(山形地裁平成23年5月25日・労判1034号47頁)

【事案の概要】

Y社は、居酒屋等を経営する会社である。

Y社は、仙台調理師紹介所から調理長としてXの紹介を受け、Xと、平成18年4月、期間の定めのない労働契約を締結した。

本件店舗における調理場スタッフは4名であったが、Xが最も経験が長く、作業の指示などを行っていた。

Xは、Y社退職後、Y社に対し、未払い残業代を請求した。

Y社は、Xが管理監督者に該当する等と主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定

【判例のポイント】

1 確かに、管理監督者は、労働基準法の労働時間等に関する規定の適用を受けないが、それは、当該労働者が、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規定の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与されており、また、そのために賃金等の待遇及びその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が講じられているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、当該労働者の保護に欠けることがないという趣旨によるものと解される
したがって、Xが管理監督者に当たるというためには、形式的に役職にあることのみならず、実質的に、他の従業員の労務管理を含め、企業全体の事業経営に関わる重要な権限を付与されており、その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであり、給与及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がされていることを要するものというべきである

2 ・・・以上のとおり、Xは、平成18年4月以降退職した平成19年7月までの間、管理監督者の地位にあることを前提とする手当の支給を受けておらず、その年収において、他の従業員とは異なる処遇を受けていたことを示す証拠はないから、給与等において管理監督者にふさわしい待遇はされていなかったものというべきである。

3 Xは、Y社に調理長として紹介されて採用されたものであり、本件店舗の調理場スタッフはXのほか3名であって、その余の本件店舗の従業員がどの程度いたのかは明らかではないものの、その余の従業員について、Xがその労務管理や人事について関与することがなかったことが認められる。そして、Xが、調理場スタッフの採用に際し、面接を行っていたことも上記認定のとおりであるが、調理場スタッフとしての採否及び昇給についての意見を述べることができるだけであることもまた上記認定のとおりであって、従業員として採用したり、昇給を決定する権限までは有していなかったし、Y社における人事考課制度がどのようなものであったかは不明であるが、昇給に関する意見を述べる際、調理場スタッフについてXが何らかの人事考課を行っていたことを窺わせる証拠は見当たらない。
したがって、Xが、本件店舗の調理場内において、その労務管理について、経営者と一体的立場にあったとは認め難い。

4 長時間の時間外労働については、これに応じた時間外手当を支払うべきことは上記認定のとおりであるところ、時間外手当の支払によっても解消されない精神的苦痛をXが被っており、慰謝料の支払をもってこれを慰謝すべき程度にまで達していたことを認めることはできないから、労働環境等を理由とする慰謝料の請求は理由がない

特にコメントすることはありません。

本件程度の事情では労基法上の管理監督者に該当しないことは明らかです。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。