Daily Archives: 2012年4月23日

労働災害51(A市役所職員・うつ病自殺)事件

おはようございます。 また一週間が始まりましたね。今週もがんばっていきましょう!
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←土、日に、気仙沼に行ってきました

被災者の方を対象とした法律相談と相続のセミナーをやりました。

今後も定期的に行きたいと思います。

今日は、午前中、裁判が2件入っています。

うち1件は、労働事件です。

お昼は、スタッフ全員で食事をします。

午後は、静岡で裁判が1件、その後、富士の裁判所へ行き、労働事件の裁判です

その後、すぐに静岡に戻り、月一恒例のラジオ出演です。

夜は、税理士K山先生、先輩弁護士の事務所、うちの事務所でお食事会です

今日は4件裁判が入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、うつ病自殺と労災に関する最高裁判例を見てみましょう。

A市役所職員・うつ病事件(最高裁平成24年2月22日・労判1041号97頁)

【事案の概要】

Xは、A市役所の職員であった。

Xの遺族は、Xのうつ病発症およびこれに続く自殺が公務に起因するものであると主張し、公務外認定処分の取消しを求めた。

【裁判所の判断】

第1審(名古屋地裁平成20年11月27日・労判1013号116頁)・・・うつ病自殺の公務起因性を否定
第2審(名古屋高裁平成22年5月21日・労判1013号102頁)・・・うつ病自殺の公務起因性を肯定
最高裁・・・うつ病自殺の公務起因性を肯定(上告棄却、上告受理申立て不受理)

【判例のポイント】

1 (第1審)・・・その判断は、平均的労働者ないしは当該職員と同種の公務に従事し遂行することが許容できる程度の心身の健康状態を有する職員を基準として、勤務時間、職務の内容・質及び責任の程度等が過重であるために当該精神障害を発症させられる程度に強度の心理的負荷を受けたと認められるかを判断し、これが認められる場合に、次に、公務外の心理的負荷や個体側の要因を判断し、これらが存在し、公務よりもこれらが発症の原因であると認められる場合でない限りは相当因果関係の存在を肯定するという方法によるのが相当である。
Xは、量的にはもちろん、質的にも過重な事務を行ったとは認めがたいこと、B部長の指導は、直ちに不当なものとはいえないこと等からすると、Xのうつ病は、Xのメランコリー親和型性格、執着性格といった個体側の要因により大きな発症の原因があることが窺えるから、Xの公務とうつ病発症等との間に相当因果関係が存在するとは認められない

2 (第2審)・・・基本的には同種の平均的職員、すなわち、職場、職種、年齢及び経験等が類似する者で、通常その公務を遂行できる者を一応観念して、これを基準とするのが相当であると考えられるが、そのような平均的職員は、経歴、職歴、職場における立場、性格等において多様であり、心理的負荷となり得る出来事等の受け止め方には幅があるところであるから、通常想定される多様な職員の範囲内において、その性格傾向に脆弱性が認められたとしても、通常その公務を支障なく遂行できる者は平均的職員の範囲に含まれると解すべきである。
Xは、これまで経験したことのない福祉部門の部署であり、重要課題も多く抱えた児童課に異動となったのみではなく、当時の児童課には本件保育システムの完成遅れ、ファミリーサポートセンター計画の遅れなどの重要問題を抱えており、しかも、それは事前に知らされていたわけではなく、異動の後に事情を知らされ、課長としては早急に対応を迫られる問題であったこと、しかも、当時のXの上司は、パワハラで知られていたB部長であり、現実に、Xが児童課に異動後すぐに課別の検討課題についての報告書の提出やヒアリングを求められたり、ファミリーサポートセンター計画に関する文案についてB部長の決裁がなかなか得られず、Xの部下であり担当者であるD補佐に対して大きな声で厳しく非難するような事態が生じたことなどによる心理的負荷が重なり、そのために、Xは、平成14年4月下旬ころから同年5月6日の連休明けころまでの間にうつ病を発症したものであることが認められ、発症後も、管理職研修での事前準備が間に合わなかった不全感、本件ヒアリングにおけるB部長からの厳しい指導や指示などにより、さらに病状を増悪させるに至り、それにより、Xは、自殺するに至ったものと認められる。そして、上記心理的負荷は、平均的職員を基準としても、うつ病を発症させ、あるいは、それを増悪させるに足りる心理的負荷であったと認めるのが相当である

地裁と高裁で、事実認定が異なったために結論がひっくり返りました。

最高裁は、高裁の判断の維持したので、公務災害が認定されました。

労災や公務災害の裁判(に限りませんが)では、事実を丁寧に主張することが求められます。

結果、必然的に、記録の量が膨大になります。

裁判官に判決を書きやすいようにいろいろと工夫をしなければいけません。