Monthly Archives: 5月 2012

本の紹介87 仕事は99%気配り(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
仕事は99%気配り (朝日新書)
仕事は99%気配り (朝日新書)

かばんはハンカチの上に置きなさい」の著者川田さんの本です。

川田さんの具体的な気配りのしかたが書かれており、大変勉強になります。

どんどん取り入れていきたいと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

相手をよく観察して、自分にできることは何かを考え、その人のために役に立てることが、ビジネスにおいての『気配り』になるのではないでしょうか?」(180頁)

自分の思いを正直に伝えて、契約をゴールとして考えず、『ご縁』を育てることをゴールとして考えたことが、10年以上経ってから、とんでもなく大きな花を咲かせてくれたのです。人の縁というのは、様々な花の咲かせ方があるんだと思います。」(206頁)

目先の利益だけを追うのではなく、長くお付き合いをすることが大切です。

長くお付き合いをする上で大切だと思うのが、まずは相手の利益を考えることです。

自分だけ得をすればいいという発想では長いお付き合いはできません。

相手にどうしたら喜んでもらえるかを考え、相手のためにできる限りの「気配り」をする、これが王道だと思います。

お互いにそのように思える方と仕事をしているととても気持ちがいいです。

「自己犠牲からしか信頼は生まれない」ということなんだと思います。

不当労働行為40(ヤンマー事件)

おはようございます。

さて、今日は、期間従業員の雇止めと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

ヤンマー事件(滋賀県労委平成24年2月15日・労判1044号94頁)

【事案の概要】

Y社は、平成20年8月、びわ工場で就労する派遣労働者を期間従業員として直接雇用する旨を公表した。

派遣会社に雇用され、派遣労働者としてびわ工場組立グループおよび機械グループに従事していたX2とX3は、それぞれ契約期間を20年9月から21年2月までとする期間従業員としてY社に雇用された。

Y社は21年1月、組立グループおよび機会グループの期間従業員を対象に雇用契約に関する説明会を開催し、リーマンショックによる受注の急激な減少により組立グループは期間従業員全員の雇用契約を更新できない旨を、また、機械グループは期間従業員の一部の者と契約を更新できなくなった旨を説明した。

当時期間従業員の中で組合員であったのは14名であったが、そのうち組立グループのX2を含む11名全員および機械グループのX3は雇止めとなった。

組合は、X2およびX3の雇止めが不当労働行為であるとして本件救済を申し立てた。

【裁判所の判断】

雇止めは、不当労働行為にはあたらない

【判例のポイント】

1 ・・・以上を総合考慮すると、Y社がTNエンジンの受注回復の見通しの立たない平成20年12月の段階で、平成21年2月に雇用期間満了を迎える期間従業員の雇止めの方針を決定し、これを実行したことはやむを得ない措置であったといわざるをえない
組合は、TNエンジンの生産は同年5月度には増加に転じていることからするとY社はこれは予測可能であり、少なくとも半年くらいのスパンでリーマンショックの影響について分析して人員整理の必要性等を検討すべきであったのに平成20年12月という早い段階で期間従業員の雇い止めの方針を決定したのは不当である旨主張する。しかし、前記のとおり、Y社が受注回復についての見込みがたてられたとは認められず、毎月大きく受注量が減少していくなかで長期のスパンでの人員計画をするというのも困難であったと認められるから組合の主張は理由がない。

2 ・・・人事評価の成績の下位のものから順次7名を雇い止めの対象者として選定したが、その対象者のなかに組合員X3が含まれていたものである。
余剰人員の決定方法について不合理とされるべき事情は認められず、その人選について人事評価をもって決定したことについても合理性が認められる。

3 以上を総合すると、組合員X2および組合員X3の雇い止めは、専らリーマンショックに端を発する世界同時不況によるY社の業績悪化に対する措置としてやむなく取られたものと認められるのであり、組合の活発な組合活動があり、ビラ配布などをめぐってY社とトラブルがあって両者が緊張関係にあったことを考慮に入れたとしても、これをもって組合員であることを理由とする不利益取扱ないしは組合潰しをねらった支配介入であると認めることはできない。

整理解雇の一環として雇止めの合理性が認められています。

あくまで不当労働行為該当性を判断するにあたって、そのように判断されているものであり、訴訟で整理解雇の有効性が争われた場合に、当然に同じ結論になるとも限りません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介86 自分の秘密-才能を自分で見つける方法-(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
自分の秘密 才能を自分で見つける方法
自分の秘密 才能を自分で見つける方法

そそられる題名だったので、買ってしまいました。

帯には、

誰にも『才能』はある。・・・成功者だけが知っている『秘密』を学べば、どんな人でも、無理なく、『自分の才能』に気づき、上手に活かすことができるのだ。

と書かれています。

才能はみんなあるんだけど、それを活かしていないという発想です。

確かにそうかもしれませんね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

多くの人が行動しようとしてもできないのは、自分の『感情』『思考』に沿わない行動をしようとしているから。『頭でわかっていてもできない』理由です。あなたとは違う『才能の源泉』『能力の源泉』を持つ人を真似ようとしても、それは無理なもの。信じていることが違うからです。
・・・自分と異なる『才能の源泉』『能力の源泉』の人物を真似るのは、まるで別人になろうとするようなもの。・・・自己啓発書をむさぼり読んでも、やる気や行動につながらないとしたら、自分に合った本を選べていない可能性があります。
」(192~193頁)

自分が「こういう人になりたい」と思う人の行動、考え方を真似することは、とても有益だと思います。

それは、複数の人を対象にしてもいいと思います。 1人に限定する理由はありません。

自分が「こういう人になりたい」と思う以上、無理なく真似することができるのではないでしょうか。

ただそれだけの話だと思います。

「こういう人になりたい」と思える人が身近にいる人は、幸せですね。

私のまわりには、そのように思える先輩が何人もいます。 とても幸せなことです。

そういう先輩からはどんどんいいところを吸収しなければ、後輩として損です。

一緒にごはんを食べて、話をして、どんどん吸収しましょう。

きっと、そういう先輩もその先輩から、同じように吸収してきたのですから。

労働者性5(ビクターサービスエンジニアリング事件)

おはようございます。

さて、今日は、業務委託契約の修理業務従事者の労組法上の労働者性に関する最高裁判決を見てみましょう。

ビクターサービスエンジニアリング事件(最高裁平成24年2月21日・労判1043号5頁)

【事案の概要】

Y社は、音響製品等の設置、修理等を業とする会社である。

Y社は、Y社と業務委託契約を締結してその修理等の業務に従事する業者であって個人営業の形態のもの(個人代行店)が加入する組合から、個人代行店の待遇改善を要求事項とする団体交渉の申入れを受けた。

Y社は、個人代行店はY社の労働者に当たらないなどとして上記申入れを拒絶した。

これに対し、大阪府労働委員会は、Y社に対し、上記申入れに係る団体交渉に応じないことは不当労働行為に該当するとして、団体交渉に応ずべきこと等を命じた。

Y社は、中央労働委員会に対し再審査申立てをしたものの、棄却する旨の命令を受けた。

そこで、Y社は、その取消しを求め、提訴した。

【裁判所の判断】

破棄差戻し

【判例のポイント】

1 ・・・個人代行店は、Y社の事業の遂行に必要な労働力として、基本的にその恒常的な確保のためにY社の組織に組み入れられているものとみることができる。加えて、本件契約の内容は、Y社の作成した統一書式に基づく業務委託に関する契約書及び覚書によって画一的に定められており、業務の内容やその条件等について個人代行店の側で個別に交渉する余地がないことは明らかであるから、Y社が個人代行店との間の契約内容を一方的に決定しているものといえる。さらに、・・・このような実際の業務遂行の状況に鑑みると、修理工料等が修理する機器や修理内容に応じて著しく異なることからこれを専ら仕事完成に対する対価とみざるを得ないといった事情が特段うかがわれない本件においては、実質的には労務の提供の対価としての性質を有するものとして支払われているとみるのがより実態に即しているものといえる。また、・・・個人代行店があらかじめその営業日、業務時間及び受注可能件数を提示し、Y社がこれに合わせて顧客から受注した出張修理業務を発注していることを考慮しても、各当事者の認識や本件契約の実際の運用においては、個人代行店は、なお基本的にY社による個別の出張修理業務の依頼に応ずべき関係にあるものとみるのが相当である。しかも、・・・上記のような通常の業務に費やされる時間及びその対応をも考慮すれば、個人代行店は、基本的に、Y社の指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督の下に労務の提供を行っており、かつ、その業務について場所的にも時間的にも相応の拘束を受けているものということができる

2 上記の諸事情に鑑みると、本件における出張修理業務を行う個人代行店については、他社製品の修理業務の受注割合、修理業務における従業員の関与の態様、法人等代行店の業務やその契約内容との等質性などにおいて、なお独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情がない限り、労働組合法上の労働者としての性質を肯定すべきものと解するのが相当であり、上記個人代行店について上記特段の事情があるか否かが問題となる。
しかしながら、・・・このように、前記事実関係等のみからは、個人代行店が自らの独立した経営判断に基づいてその業務内容を差配して収益管理を行う機会が実態として確保されているか否かは必ずしも明らかであるとはいえず、出張修理業務を行う個人代行店が独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無を判断する上で必要な上記の諸点についての審理が十分に尽くされていないものといわざるを得ない

3 以上によれば、出張修理業務を行う個人代行店が独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無を判断する上で必要な上記の諸点について十分に審理を尽くすことなく、上記個人代行店はY社との関係において労働組合法上の労働者に当たらないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そこで、出張修理業務を行う個人代行店は独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情のない限りY社との関係において労働組合法上の労働者に当たると解すべきであることを前提とした上で、組合に加入する個人代行店の修理業務の内容、当該個人代行店が独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情があるか否か、仮に当該個人代行店が労働組合法上の労働者に当たると解される場合においてY社が本件要求事項に係る団体交渉の申入れに応じなかったことが不当労働行為に当たるか否か等の点について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。

第1審(東京地裁平成21年8月6日・労判986号5頁)は、労組法上の労働者に当たらないと判断しました。

第2審(東京高裁平成22年8月26日・労判1012号86頁)も、同様に、労組法上の労働者に当たらないと判断しました。

これに対し、最高裁は、特段の事情がない限り、本件個人代行店は労組法上の労働者であると判断しました。

第1審・第2審は、本件委託契約の内容及びそれに基づ
く個人代行店の労務提供の実態からみて、個人代行店がその労働条件等についてY社から現実的かつ具体的に支配、決定されている地位にあるとはいえないし、また、個人代行店が本件委託契約に基づき得る収入が、その労務提供の対価であると認めることもできないとの理由から、個人代行店が、Y社との関係において、労組法上の労働者に当たるとはいえないとしました。

認定の違いからくるものですが、最高裁の判断を考えると、やはり、労組法上の労働者の概念は広いですね。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介85 イノベーション5つの原則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

イノベーション5つの原則
イノベーション5つの原則

これまでも、「イノベーション」本を多く読んでみましたが、この本もその一種です。

世界最高峰の研究機関SRIが生みだした実践理論」だそうです。

題名のとおり、イノベーションを起こすためには、5つの原則が大切なんだそうです。

顧客に対する価値提案をポイントが示されており、参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

価値提案は、価値創出の核であり、顧客価値を生み出す際に検討しなければならない4つの基本的ポイントに答えるものである。4つのポイントとは、以下のとおりだ。
N 重要な顧客と市場のニーズ(Need)とはどんなものか?
A そのニーズに応えるための独自のアプローチ(Approach)とは?
B そのアプローチの費用対効果(Benefits per costs)はどうなのか?
C 費用対効果は、競合(Competition)や代替品と比較して、どのくらい優れているか?
」(102頁)

新しい価値提案は、競合の提供する価値を格段に上回る」(102頁)

このNABCの4つの視点から、新しい価値が提案するに値するものかを検討する必要があるということです。

どれか1つでも欠けているとうまくいきません。

あとは、実践あるのみですね。

たとえば、1枚の大きな紙に、NABCの視点を書き込み、新しいアイデアがどの程度の価値があるかを判断するわけです。

また、新しいアイデアを具体化したけれど、うまくいかない場合、NABCのどの視点が欠けているかを分析するというやり方も考えられますね。

欠けていると考えられる部分を修正しながら、再チャレンジするわけです。

一度、失敗したくらいであきらめているようでは、何一つうまくいかないんじゃないですかね。

すべて試行錯誤の連続です。 そう思えれば、あきらめるという判断はまずしなくなります。

賃金46(中央タクシー(未払賃金)事件)

おはようございます。

さて、今日は、タクシー運転手の客待ち待機時間の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

中央タクシー(未払賃金)事件(大分地裁平成23年11月30日・労判1043号54頁)

【事案の概要】

Y社は、大分市に本社を置く、タクシー会社である。

Xらは、Y社の従業員であり、タクシー乗務員として勤務していた。

Y社では、30分を超える客待ち待機時間を労働時間から除外していた。

Xらは、Y社に対し、除外された客待ち時間分も労基法上の労働時間に該当するとして、当該時間分の賃金を請求した。

【裁判所の判断】

客待ち待機時間も労基法上の労働時間に該当する

【判例のポイント】

1 労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間をいうというべきである。
Xらがタクシーに乗車して客待ち待機をしている時間は、これが30分を超えるものであっても、その時間は客待ち待機をしている時間であることに変わりはなく、Y社の具体的指揮命令があれば、直ちにXらはその命令に従わなければならず、また、Xらは労働の提供ができる状況にあったのであるから、30分を超える客待ち待機をしている時間が、Y社の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であることは明らかといわざるを得ない

2 もちろん、Xらが被告の30分を超えるY社の指定場所以外での客待ち待機をしてはならないとの命令に従わないことを原因として、Xらが、適正な手続を経て懲戒処分を受けることがあるとしても、この命令に従わないことから、直ちに30分を超える客待ち待機時間が、労働基準法上の労働時間に該当しないということはできない。Xらが、30分を超えて客待ち待機をしたとしても、その時間は、争議行為中でもサボタージュでもなく、喫茶店等に入ってサボっている時間でもなく、労働提供が可能な状態である時間であるのであるから、Y社の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下におかれている時間と認められる

3 ある時間が労働基準法上の労働時間に該当するか否かは当事者の約定にかかわらず客観的に判断すべきであるから、労働協約の規定があったとしても、Y社の指定する場所以外の場所での30分を超える客待ち待機時間が労働基準法上の労働時間に該当しなくなるわけではない

4 Y社は、ノーワーク・ノーペイの原則からしても、30分を超える客待ち待機時間は、労働時間に該当しないと主張するが、Y社の指定する場所以外の場所での30分を超える客待ち待機を、ノーワークということはできない。

タクシー運転手の客待ち待機時間も労基法上の労働時間か、と言われれば、やはり、裁判所の判断のようになるんでしょうね。

会社から具体的な指揮命令があれば、運転手としては、直ちに命令に従わないといけない状況にある以上、会社の指揮命令下にあるということになります。

・・・とはいえ、駅構内等の長蛇の列の中で待機しているときは、車の中で、好きな本を読んでいてもいいでしょうし、車から降りて、他の運転手と雑談することもありますよね。

そのため、会社としては、30分を超える待機時間を労働時間から除外したわけですね。

気持ちはよくわかります。 しかし、裁判になれば、このような結論になってしまうわけです。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介84 勝ち続ける経営(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 
写真 12-05-22 16 12 04
←マット、クリアファイル、切手、いいことばんくノート、飲み物リスト、オリジナルノートに続きまして、第7弾!

オリジナル傘です。

突然、雨が降ってきたときに、傘をお貸し致します。

 

さて、今日は本の紹介です。
勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論
勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論

原田さんの本です。「日本マクドナルド社長が送り続けた101の言葉」、「とことんやれば、必ずできる」に続き3度目の登場です。

僕は、原田さんの考え方が好きなので、飽きません。

この本もとてもいい本です。 勉強になります。

さて、この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

企業はどこにも強さと弱点がありますが、弱点はみんなよく目に付くものです。ですから経営者も『あれが悪い。これはよくしましょう』となる。でもそんなことをしたら、強いところが弱くなってしまいます。弱点をリカバリーする・強化するのではなく、強いところをもっと強化するべきです。弱点が弱点と見えないぐらい、独自の強さを強化するというところに気持ちを持っていかなければいけません。」(153頁)

弱点を強化するよりも、強いところをもっと強化することにより、独自の強さに磨きをかけるという発想です。

これだけ選択肢が多い社会で、他との違いをわかりやすく示すためには、強みをめいっぱい前面に押し出す方がいいのです。

弱点を強化すること自体は、決して悪いことではありませんが、弱点を強化しても、せいぜい平均まで押し上げるだけです。

やはり、まずは、強いところをより強くすることが大切だと思います。

そもそも時間に限りがある以上、あれやこれやと手を出してもいいことはありません。

あれもこれもと欲張らないことが大切です。 

解雇69(コムテック事件)

おはようございます。

さて、今日は、事業所閉鎖に伴う整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

コムテック事件(東京地裁平成23年10月28日・労判1043号90頁)

【事案の概要】

Y社は、システムコンサルティング事業、システムの開発・運用管理事業、営業支援・業務支援等の牛無駄意向事業等を営む会社である。

Y社は、川口事業所取扱業務にかかる主要取引先であるA社との契約が平成22年3月末で終了になることに伴い、川口事業所を閉鎖することを決定し、川口事業所の全従業員に対し、同閉鎖の通告を行うとともに、個々の従業員の処遇については、個別に対応する旨を説明した。

Xは、Y社に対し、退職意思がないことを伝え、配転による雇用の継続の希望を伝えた。

Y社は、Xが退職勧奨を拒否したことを受け、就業規則に基づき、整理解雇した。

なお、川口事業所には、平成22年2月末時点において、49名の従業員が在籍していたが、自己都合退職に応じた者が2名、退職勧奨に応じた者が31名、異動によって他の仕事に就いた者が15名であり、整理解雇の対象となったのはX1名のみであった。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 本件解雇は、いわゆる整理解雇について規定するY社就業規則41条5項に基づくものであるところ、同号に基づく整理解雇が解雇権を濫用したものとして無効(労働契約法16条)になるか否かを判断するに当たっては、(1)人員削減の必要性、(2)((1)の人員削減の手段としての)解雇の必要性(解雇回避努力義務の履行の有無)、(3)被解雇者選定の妥当性、(4)手続の妥当性等を総合考慮して判断するのが相当である。

2 ・・・本件における人員削減の必要性は、差し迫った高度のものであったとは認められないというべきである。
そして、川口事業所閉鎖に伴う整理解雇をY社が決定したのが平成22年3月中旬であり、かつ、その対象がX1名のみであったことからすれば、本件における人員削減の必要性の有無の判断は、本件解雇時点において、従業員1名を指名解雇しなければならない程の必要性があるか否かという観点から判断すべきこととなるところ、本件において、かかる必要性があったとまでは解し難い

3 人員削減を実現する際に、使用者は、配転、出向、希望退職者募集等の他の手段によって解雇回避の努力をする信義則上の義務(解雇回避努力義務)を負うものと解され、同義務履行の有無を判断するに当たっては、当該使用者が採択した手段と手順が当該人員整理の具体的状況の中で全体として指名解雇回避のための真摯かつ合理的な努力と認められるか否かを判断すべきである
とりわけ本件においては、本件解雇に係る人員削減の必要性が差し迫った高度のものであったとは認められないことに加え、Y社が多様な部門を有する相当規模の企業であること、川口事業所閉鎖に伴う整理解雇の対象者がX1名のみであったこと、Xがこれまでの間、営業、企画、予算管理、売掛金管理、倉庫管理、人事労務等の幅広い経歴及び職歴を有することからすれば、Y社が解雇回避努力義務の履行としてXの配転を検討するに当たっては、Y社内部の欠員等の有無を形式的に確認したり派遣検討先企業の意向を確認したりするだけでは足りず、少なくとも、Y社の組織全体を視野に入れて、Xの従事できる合理的可能性のある業務の有無を真摯かつ十分な時間を掛けて検討する必要があるというべきである

4 Y社は、川口事業所閉鎖に当たり、同事業所従業員の全員を削減対象とした上で、自主退職又は退職勧奨に応じたことにより退職した者及びY社において異動先を見つけられた者について退職及び異動の措置をとった後、最終的に、退職勧奨に応じず、異動先を見つけられなかったX1名を解雇したものであるから、少なくとも、Y社において、被解雇者の選定について、客観的で合理的な基準を設定していたとは認められない
加えて、Y社がXの異動先を検討するに当たっては、Xの経歴及び職歴を踏まえた幅広い職種・職務内容を対象にはしていないことからすれば、Y社において異動先を見つけて異動の措置をとった者と異動先を見つけられなかったXとを振り分けるに当たって、合理的な判断がされたとも解し難い

4要素を検討しています。

各要素を検討していますが、いずれも足りないと判断されています。

特に解雇回避努力については、まだまだやるべきことがあるでしょ、という感じです。

整理解雇の必要性が差し迫った高度なものではない場合には、4要素説では、解雇回避努力については厳格に判断されることになります。

総合考慮ですから。

やはり、整理解雇は大変ですね。なかなか有効とは認めてくれません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介83 ONE to ONEマーケティング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 また1週間が始まりましたね! がんばっていきましょう!
写真 12-05-18 9 50 05
←マット、クリアファイル、切手、いいことばんくノート、飲み物リストに続きまして、第6弾!

B5サイズのオリジナルノートをつくりました。

ご相談者等にお配りしています。

栗坊シリーズ、まだまだ続きます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略
ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略

本の表紙には、小さな字でこのように書いてあります。

一人一人の顧客のニーズに応えるためには、顧客からの協力が不可欠である。個々の要求に取り組むためには、まずどんな要求があるのかを理解しなければならない。そのためには顧客の一人一人と対話し、彼らの個人的要求を十分満たすような製品やサービスを選んだりデザインしたりする必要がある。

ONE to ONEマーケティングって、そういうことを指すんですね。

これの対概念が「マス・マーケティング」です。

すべての人を対象に同じ商品を生産し、あらゆる店舗で販売し、幅広く宣伝を行い、共通のベネフィットを打ち出す」ということです。

マス・マーケティングからワン・トゥ・ワン・マーケティングに発想を変える必要があるというお話です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

もはや『規模』は資産ではない。マス・マーケティングにおいて必要とされた規模の威力も、今は意味をもたない。・・・膨大な数の製品と顧客を抱える巨大組織は、企業間競争の複雑化にともない、製品管理を主体とした既存のマーケティング組織では対応しきれず、すでに苦戦し始めている。規模が小さく、余分な贅肉のない組織として急速な成長を遂げている企業が巨人たちを乗り越える。それは、そのような組織が単に敏速で柔軟性に富んでいるという理由からではなく、顧客により近いという理由から競争に有利なのである。」(273頁)

この本を読んだとき、以前、紹介をした「小さなチーム、大きな仕事-37シグナルズ成功の法則-」という本を思い出しました。

組織の規模が大きくなるにつれて、どうしても顧客との距離がどんどん遠ざかっていってしまいます。

今まで、すべて自分1人で対応していたのが、規模が大きくなるにつれて、それではまわらなくなってくるわけです。

地位があがるにつれて、部下が増えるにつれて、顧客との距離は離れていきます。

今の時代、組織の規模で組織の価値を見せつけるようなことをしても仕方がありません。

最大化を図るのではなく、あくまで最適化を図ることが大切です。

組織としての柔軟性、敏速性、安定性等の点で、いかなる規模や形態が最適なのかを常に考えながら運営しなければいけません。

大きくするのは簡単ですが、一度大きくした後で、小さくのは大変です。

大きくするときには、慎重に判断しなければいけませんね。

労働時間26(ドワンゴ事件)

おはようございます。

今日は、専門型裁量労働制に関する裁判例を見てみましょう。

ドワンゴ事件(京都地裁平成18年5月29日・労判920号57頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピュータ及びその周辺機器、ソフトウェア製品の企画、開発、製造、販売、輸出入及び賃貸などを業務内容とする会社である。

Xは、平成15年9月、Y社との間で雇用契約を締結し、平成16年7月、退職した。

Xは、Y社に対し、未払い残業代を請求した。

Y社は、専門型裁量労働制が適用されると主張した。

【裁判所の判断】

専門型裁量労働制の適用はない。

【判例のポイント】

1 専門型裁量労働制について、労基法38条の3第1項は事業場の過半数組織労働組合ないし過半数代表者の同意(協定)を必要とすることで当該専門型裁量労働制の内容の妥当性を担保しているところ、当事者間で定めた専門型裁量労働制に係る合意が効力を有するためには、同協定が要件とされた趣旨からして少なくとも、使用者が当該事業場の過半数組織労働組合ないし過半数代表者との間での専門型裁量労働制に係る書面による協定を締結しなければならないと解するのが相当である。また、それを行政官庁に届け出なければならない(労基法38条の3第2項、同法38条の3第3項)。
同条項の規定からすると、同適用の単位は事業場毎とされていることは明らかである。ここでいう事業場とは「工場、事務所、店舗等のように一定の場所において、相関連する組織の基で業として継続的に行われる作業の一体が行われている場」と解するのが相当である。
Y社の大阪開発部は、その組織、場所からすると、Y社の本社(本件裁量労働協定及び同協定を届出た労働基準監督署に対応する事業場)とは別個の事業所というべきであるところ、本件裁量労働協定はY社の本社の労働者の過半数の代表者と締結されたもので、また、その届出も本社に対応する中央労働基準監督署に届けられたものであって、大阪開発部を単位として専門型裁量労働制に関する協定された労働協定はなく、また、同開発部に対応する労働基準監督署に同協定が届け出られたこともない。そうすると、本件裁量労働協定は効力を有しないとするのが相当であって、それに相反するY社の主張は理由がない。
そうすると、Xに対しての裁量労働制の適用がない。したがって、Y社は、Xに時間外労働や休日労働があれば、それに応じた賃金をXに支払うべき義務を負っているというべきである。

2 Y社は、Xが深夜労働の申告承認の手続をとっていなかったため、同人の深夜労働に係る割増賃金支払義務を負っていない旨主張する。しかし、Y社は、Y社のタイムカードの記載からXが深夜に労働をしていたことを認識することができ、実際にもXが上記認定した範囲で深夜労働をしていたことからすると、上記手続の成否は深夜労働に係る割増賃金請求権の成否に影響を与えないものというべきである。そうすると、Y社の上記主張は理由がない

裁量労働時間制に関する珍しい裁判例ですが、内容としては形式的な要件をみたしていないからダメよ、という話だけです。

上記判例のポイント2については、よくあるパターンですね。

残業に関して許可制を採用し、仮に従業員が許可をとらずに残業をしていたとしても、会社が、従業員の残業を認識し得た場合には、このような結論となります。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。