Daily Archives: 2012年4月4日

不当労働行為37(吉富建設事件)

おはようございます。

さて、今日は、団交拒否に関する裁判例を見てみましょう。

吉富建設事件(中労委平成23年12月7日・労判1040号94頁)

【事案の概要】

平成21年3月に開店した串焼き屋は、不動産業等を営むY者の社長が自ら賃借したビルの一室で飲食店を営むため、Xとの交渉をY社のマネージャーAに委ねて、その準備に当たらせたものである。

また、Xは、串焼き屋の店内スタッフについて、Aマネージャーの指示により募集を進め、B及びCを採用した。

平成21年5月に串焼き屋が閉店するまで、Xは、Aマネージャーから売上高等の報告を求められ、Aマネージャーは、収支管理を行い、Xらの給料をXの口座に振り込んだりした。

Xら3名は、平成21年5月、組合に加入し、組合は、同月、Y社に対し、Xらの未払賃金の支払等を議題とする団交を申し入れた。

Y社は、串焼き屋の経営者はZであり、Y社と関係ないこと、組合員と雇用契約がないことなどを理由に団交に応じられないと通知した。

【労働委員会の判断】

Y社が団交に応じなかったことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 串焼き屋開店準備段階から閉店に至る段階において、AマネージャーがX組合員に対して売上高等の報告を求めたり、自ら串焼き屋の収支管理を行っていることから、串焼き屋の業務運営はY社の指揮監督下にあったとみるのが相当である。また、Aマネージャーは、X組合員ら3名分の給料をX組合員の口座に振り込んだり、社会保険加入に言及しており、また、X組合員ら3名のタイムカードが存在することからすると、X組合員ら3名は串焼き屋お従業員として就労していたものであり、その賃金等の労働条件はY社が決定していたということができる。
以上からすると、X組合員ら3名は、Y社の指揮監督の下で労働力を提供し、これに対する報酬として賃金を受領していたとみるべきである。そうすると、本件においては、X組合員とY社との間には、契約書等は存在しないが、実質的に雇用関係が成立していたと解するのが相当である

2 Y社は、X組合員ら3名との関係において、労組法7条の使用者に該当するものであるから、Y社は本件団体交渉申入れに応ずるべき立場にある。よって、本件におけるY社の対応には正当な理由はなく、これは労組法7条2号の不当労働行為に該当する。

労組法上の使用者性が問題となっています。

Y社が労組法上の使用者にあたることは、事案の内容からすると、争う余地がないように思いますが。

私は、団交には、できる限り応じた方がいいと考えています。

あまり、使用者性がどうとか、義務的団交事項がどうとかを厳格に解釈せずに、微妙だったら、とりあえず応じるというスタンスがいいと考えています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。