解雇68(日本ヒューレット・パッカード事件)

おはようございます。

さて、今日は、無断欠勤等を理由とする諭旨退職処分に関する最高裁判例を見てみましょう。

日本ヒューレット・パッカード事件(最高裁平成24年4月27日)

【事案の概要】

Y社は、電子計算機等およびそれらのソフトウェアの研究開発、製造等を目的とする会社である。

Xは、Y社に平成12年10月、雇用されたシステムエンジニアである。

Xは、平成20年4月以降、Y社に対し、Xに対する職場での嫌がらせ、内部の情報の漏洩等を申告し、その調査を依頼した。

Xは、B部長と電話で相談し、問題が調査されるまで、特例の休暇を認めるよう依頼した。

その後、B部長は、Xに対して、調査の結果、本件被害事実はないとの結論に達した旨回答した。

Xの有給休暇は、すべて消化された状態となったが、Xは、その後、約1か月間、欠勤を継続した。

Y社の人事統括本部のC本部長は、Xに対し、「貴職は、会社が認める正当な理由がなく、2008年6月上旬以降、勤務を放棄し、欠勤しています。理由なき欠勤は、あなたが会社に対して負っている労務提供義務についての著しい違反となり、このままの状態が更に続くと、最悪の事態を招くことにもなります。よって、会社として、直ちに出社し就業するよう命じます」とのメールを送付した。

XはY社に対し、明日から出社する旨をメールで伝え、翌日、出社した。

Y社は、その後、Xに対し、諭旨退職処分とする旨通告した。

Xは、本件諭旨退職処分の効力を争った。

【裁判所の判断】

上告棄却
→諭旨退職処分は無効

【判例のポイント】

1 原審の適法に確定した事実関係等によれば、Xは、被害妄想など何らかの精神的な不調により、実際には事実として存在しないにもかかわらず、約3年間にわたり加害者集団からその依頼を受けた専門業者や協力者らによる盗撮や盗聴等を通じて日常生活を子細に監視され、これらにより蓄積された情報を共有する加害者集団から職場の同僚らを通じて自己に関する情報のほのめかし等の嫌がらせを受けているとの認識を有しており、そのために、同僚らの嫌がらせにより自らの業務に支障が生じており自己に関する情報が外部に漏えいされる危険もあると考え、Y社に上記被害に係る事実の調査を依頼したものの納得できる結果が得られず、Y社に休職を認めるよう求めたものの認められず出勤を促すなどされたことから、自分自身が上記の被害に係る問題が解決されたと判断できない限り出勤しない旨をあらかじめY社に伝えた上で、有給休暇を全て取得した後、約40日間にわたり欠勤を続けたものである。

2 このような精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては、精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想されるところであるから、使用者であるY社としては、その欠勤の原因や経緯が上記のとおりである以上、精神科医による健康診断を実施するなどした上で(記録によれば、Y社の就業規則には、必要と認めるときに従業員に対し臨時に健康診断を行うことができる旨の定めがあることがうかがわれる。)、その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり、このような対応を採ることなく、Xの出勤しない理由が存在しない事実に基づくものであることから直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして諭旨退職の措置を執ることは、精神的な不調を抱える労働者に対して使用者の対応としては適切なものとはいい難い。

3 そうすると、以上のような事情の下においては、Xの上記欠勤は就業規則所定の懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤に当たらないものと解さざるを得ず、上記欠勤が上記の懲戒事由に当たるとしてされた本件処分は、就業規則所定の懲戒事由を欠き、無効であるというべきである

高裁の判断が維持されました。

メンタル不調者に対する会社の対応は、実際のところ、とても難しいです。

メンタルヘルス関連のご相談が最近とても増えたことからも、顧問先をはじめとする多くの会社の関心事であることは間違いありません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。