賃金57(トレーダー愛事件)

おはようございます。

さて、今日は元従業員による未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

トレーダー愛事件(京都地裁平成24年10月16日・労判1060号83頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、Y社に対し、未払賃金、時間外手当および付加金の支払を請求した事案である。

Y社は、冠婚葬祭やそれに関連する諸分野を中心に事情を展開する会社である。

Xは、ホテルにおいてフロント(宿泊)担当として勤務していたところ、平成22年5月から、本件ホテルを買収したY社との間で労働契約を締結し、本件ホテルでの勤務を継続した。

本件の争点は、成果給が時間外手当にあたり、割増賃金の基礎賃金から除外されるかという点である。

Y社の就業規則及び給与規程において、成果給を時間外手当とし、割増賃金を計算する基礎賃金にも含まれないことが明記されており、この就業規則や給与規程は、Xに交付されている。そして、成果給は、前年度の成果(業績)に応じて人事考課によって決められることになっている。

【裁判所の判断】

Y社に対し、未払賃金等283万余円の支払を命じた

付加金の支払は否定

【判例のポイント】

1 成果給はすべて時間外手当であり、基本給との区別は明確にされているので、時間外労働に対する割増賃金を計算することはできる。そして、時間外手当につき、定額で支払うことは可能であることからすると、Y社の定める賃金体系には問題はないようにみえる。
しかしながら、Y社のこうした賃金体系は、次の理由により、是認することはできない。

2 まず、Xの基本給は14万円、成果給は13万円とほぼ拮抗しており、さらに、他の手当も、役割給(役職者手当)と通勤手当を除くと、すべて時間外手当と位置づけられており、宿日直手当を受けているXの場合、宿日直手当を含めると、時間外手当が基本給を上回る仕組みとなっている
・・・所定内労働と時間外労働で労働内容が異なるものではない。そうすると、基本給(所定労働時間内の賃金)と成果給(時間外手当)とで労働単価につき著しい差を設けている場合には、その賃金体系は、合理性を欠くというほかなく、基本給と成果給(時間外手当)の割り振りが不相当ということになる

3 また、成果給は、前年度の成果に応じて人事考課によって決められる。他方、時間外手当は労働者を法定労働時間を超えて労働させた場合に使用者が支払う手当であって、労働時間に比例して支払わなければならないものであり、前年度の成果に応じて決まるような性質のものではない。そうすると、Y社において、性質の異なるものを成果給の中に混在させているということができる

4 さらにいえば、Y社における基本給は、ほぼ最低賃金に合わせて設定されている。そして、それ以外の賃金はすべて時間外手当とすることによって、よほど長時間の労働をしない限り時間外手当が発生しない仕組みになっている

5 所定労働時間内の業務と時間外の業務とで業務内容が異ならないにもかかわらず、基本給と時間外手当とで時間単価に著しい差を設けることは本来あり得ず、Y社の給与体系は、時間外手当を支払わないための便法ともいえるものであって、成果給(時間外手当)の中に基本給に相当する部分が含まれていると評価するのが相当である。

6 以上のとおり、Y社の賃金体系は不合理なものであり、成果給(時間外手当)の中に基本給の部分も含まれていると解するのが相当である。そうすると、成果給がすべて時間外手当であるということはできず、成果給の中に基本給と時間外手当が混在しているということができるのであって、成果給は割増賃金計算の基礎賃金に含まれるとともに、時間外手当を支払った旨のY社の主張は失当である

かなり踏み込んだ裁判例です。

実質的にみて、成果給の中に基本給の一部が含まれていると解釈しています。

控訴審でも維持されるのでしょうか?

このような判断が通るとすると、労働者側は争い方が増えますね。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。