賃金60(HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件)

おはようございます。

さて、今日は、解雇予告手当請求権の消滅時効について判示した裁判例を見てみましょう。

HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件(東京地裁平成25年1月18日・労経速2168号26頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、Y社が支払った解雇予告手当の額には不足があると主張して、同未払分として190万9056円及びこれに対する退職日以降の賃確法所定の遅延利息並びに同額の付加金等を求めた事案である。

Y社は、通信・情報関連ハードウェア及びソフトウェアの開発、保守及び管理並びに情報・電算処理業、労務管理事務代行業等を目的とし、バハマ国法を準拠法とする外国会社であり、世界的金融グループであるHSBC(香港上海銀行)グループの労務管理事務の代行等を行っている。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、解雇予告手当請求権はその性質上時効消滅しない旨主張し、この点に関する根拠として行政通達(昭27・5・17基収1906号)を引用するが、当裁判所は、解雇予告手当請求権は、その性質上時効消滅しうるものであって、その時効期間は2年であると解する
すなわち、使用者が労働基準法20条所定の予告期間を置かず、または予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合、その通知は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の30日の期間を経過するか、または通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生ずるものと解すべきであるところ(最高裁昭和35年3月11日判決)、ここにいう「予告手当の支払をしたとき」には、使用者側が自ら正当であるものとして計算した結果に従って解雇予告手当を支払ったところ、不足額があった場合も含まれるものと解する。

2 そうすると、かかる支払をした解雇は有効であるものと解すべきところ、そうであるとしても、使用者側が不足分の解雇予告手当を支払う義務を免れると解することには何ら合理的理由はないから、少なくともこの場合、労働者に不足分の解雇予告手当請求権が生じるものと解すべきである。Xが引用する前記行政通達が、解雇予告手当について一切債権債務関係の生じないことを前提として、これを理由に解雇予告手当が時効消滅し得ないものと解しているのであれば、かかる解釈は相当ではない。
そして、解雇予告手当について、請求権を観念することができる場合には、これについて時効を観念することもできるものというべきであって、その時効期間は、解雇予告手当請求権が労働基準法115条の「この法律に規定する(中略)その他の請求権」に当たることは文言上明らかであるから、同条により2年となると解すべきである

3 Xは、地位確認請求訴訟の提起が、時効中断ないしこれに準ずる効力を有するものと主張する。
この点、地位確認請求訴訟は、労働者としての地位のあることを前提とするものであるから、その訴訟提起を、同様の前提に立つ賃金請求権の行使と同視する余地はあるとしても、労働者としての地位を失ったことを前提とする解雇予告手当請求権の行使と同視する余地はない。
よって、Xによる訴訟の提起を、解雇予告手当請求権の行使と同視することはできず、Xの前記主張には理由がない

4 労働者は、付加金を請求する場合、違反のあった時から2年以内に裁判上の請求をしなければならないところ(労基法114条ただし書。この期間制限は除斥期間の定めであると解される。)、・・・この裁判上の請求には、労働審判の申立ても含むものと解する

解雇予告手当の消滅時効について判示しています。

2年以上後に解雇予告手当を請求されることはあまりありませんが、参考にしてください。

とはいえ、ややマニアックな論点ですので、事前に顧問弁護士に相談すれば足りますね。