解雇105(M社事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合活動のため会社のパソコンのデータを持ち出した従業員の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

M社事件(大阪地裁平成24年11月2日・労経速2170号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXらが、Y社からされた懲戒解雇が無効であるとして、雇用契約上の地位の確認等を求めた事案である。

Y社は、業務請負(設備機器類・産業廃棄物の構内管理業務)、廃棄物の処理、収集運搬等を業とする会社である。

本件懲戒解雇の解雇事由は、合同労組の組合員であったXらが、組合活動を有利に進めるためにY社の企業情報(取引先リスト、従業員の昇給に関するデータ)を持ち出したことである。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 X1がY社の取引先リストや従業員の昇給に関するデータをプリントアウトして社外に持ち出した行為は、Y社就業規則74条8項「会社の機密情報を社外に漏洩しようとしたとき、あるいは現に漏洩させたとき又は事業上の不利益を計ったとき」に該当するものというべきである。
また、X1が、上記事実によって窃盗罪の有罪判決を受けていることからすれば、X1の上記行為は、Y社就業規則74条11項「会社内で横領、傷害などの刑法犯に該当する行為があったとき。」に該当することは明らかである。
そして、X1の上記行為は、・・・懲戒処分の中でも懲戒解雇に相当するというべきである。

2 Xらは、同人らが解雇理由とされている行為の背景には、Y社と組合との労働条件をめぐる対立状況があり、Y社は組合に対する嫌悪からXらに対する不利益な取扱いや団体交渉での不誠実な対応を繰り返していたのであり、Y社の行為がX1の行為を招いた側面があり、これを理由として懲戒解雇することは、社会通念上相当ではない旨主張する
しかしながら、仮にXらが主張するとおりの事実が存在するとしても、Y社に対する対抗手段として窃盗行為等の犯罪行為を行うことが正当化されることはあり得ず、また、このことは懲戒解雇が社会通念上相当か否かを判断するにあたっても同様である

3 Xらは、取引先リストについて、同資料が街宣活動に利用されたという事実はなく、従業員であれば誰でも知っているY社に関連する場所である、得意先一覧が組合の街頭宣伝活動に不可欠というわけではない、組合が街頭宣伝活動を行った場所は全て、得意先一覧が無くともY社従業員であれば誰でも知っているY社に関連する場所であり、得意先一覧とは無関係であるなどと主張する
しかし、本件解雇理由においては、持ち出された取引先リストが利用されて街宣活動が行われたことではなく、このようなリストが持ち出されたこと自体が懲戒理由として主張されており、同事実については、当事者間に争いがないのであり、その行為の内容やXらが窃盗罪及び盗品等無償譲受け罪で有罪判決を受けていることからすれば、Y社の取引先リストが実際に街宣活動に利用されたか否かによって、懲戒解雇の有効性の判断は左右されないというべきである

原告は、窃盗罪、盗品等無償譲受罪で有罪判決を受けていますので、懲戒解雇は有効であると判断されやすくなります。

会社のお金を使い込んだ場合なども同様に刑法犯ですので、懲戒解雇は有効と判断されやすいです。

本件は、会社と組合との対立があったようですが、このことにより上記行為の違法性が阻却されることにならないという判断です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。