解雇110(淀川海運事件)

おはようございます。 昨夜から事務所でずっと書面を作成しています。 体力勝負(笑)

さて、今日は、整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

淀川海運事件(東京高裁平成25年4月25日・労経速2177号16頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、平成22年6月、Y社の技能職員であり、労働組合の執行委員長であったXに対して、「事業縮小等会社の都合」、「余剰人員削減のために実施した希望退職者募集及び退職勧奨によっては、削減人員の定数に満たなかったための整理解雇」を理由として解雇した事案である。

Xは、本件解雇は、整理解雇の有効要件を欠き、解雇件の濫用として無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

整理解雇は有効

【判例のポイント】

1 本件解雇はいわゆる整理解雇であり、対象とされた従業員に対して、経営上の必要から人員削減を実現するために、従業員にとって生計の途である労働契約関係を解消することの当否が争点となっている事案である。そして、労働契約法によれば、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、解雇権の濫用として無効となる(同法16条)のであり、整理解雇は、従業員の側には責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、使用者による一方的な解雇の意思表示によって雇用関係を解消するというものであるから、整理解雇を巡る事情を総合的に考慮し、使用者の経営上の必要性と、解雇される従業員の利害得失とを比較考量して、その効力を判断する必要があるというべきである。そして、整理解雇の有効性については、具体的には、①整理解雇(人員整理)が経営不振など企業経営上の十分な必要性に基づくものか否か、又はやむを得ない措置と認められるか否か(整理解雇の必要性)、②使用者が人員整理の目的を達成するための整理解雇を行う以前に、労働者の不利益がより小さく、客観的に期待可能な措置を取っているか否か(解雇回避努力義務の履行)、③被解雇者の選定方法が相当かつ合理的なものであるか否か(被解雇者選定の合理性)、④整理解雇の必要性とその時期、規模、方法等について使用者が説明をして、労働者と十分に協議しているか否か(手続の妥当性)などを総合的に勘案した上で、整理解雇についてのやむを得ない客観的かつ合理的な理由の有無という観点からその効力を判断するのが相当である。

2 平成22年4月頃の段階において、技能職員4名を削減する必要性があったところ、Y社は5月7日に、所定の退職金に一律100万円を加算することとして、希望退職者4名を募集したが、結局応募者は3名に止まったため、同月28日に、所定の退職金に250万円を加算するとして退職勧奨を行ったものの、Xは応じなかった等本件解雇に至る経緯を考慮すると、Y社はXを解雇するに先立って、これを回避するための方策を講じているものと評価するのが相当である

3 技能職員を削減する必要がある状況のもとにおいて、勤務成績等に照らし、X以外に被解雇者として選定されてもやむをえないといえる職員がいたにもかかわらず、上記の嫌悪感等を主たる理由としてXが選定されたというのであればともかく、そのような職員の存在を認めるに足りる証拠のない本件においては、そもそも労働契約が労使間の信頼関係に基礎を置くものである以上、他の従業員と上記のような関係にあったXを、業務の円滑な遂行に支障を及ぼしかねないとして、被解雇者に選定したY社の判断には企業経営という観点からも一定の合理性が認められるというべきであって、これを不合理、不公正な選定ということはできない。なお、本件においては、Y社の経営陣も、従業員と同様のXに対する強い嫌悪感を抱いており、そのことが整理解雇の対象者の人選に影響していることは否定できないところであるが、そのような事情があったからといって、Xを対象者に選定したことが直ちに不合理、不公正なものとなるものではないと解するのが相当である。

非常に参考になる裁判例です。 是非、一審と比較してみてください。

一審(東京地裁平成23年9月6日・労経速2177号22頁)は、本件整理解雇は無効と判断しましたが、控訴審では一転、有効と判断されました。

一審と控訴審で結論が異なったのは、整理解雇の必要性が認められたか否かのほかに、人選の合理性の点に関する考え方の違いによります。

個人的には、一審の判断の方が納得いく内容です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。