賃金72(CFJ合同会社事件)

おはようございます。

さて、今日は、業務遂行能力不足を理由とする降格・賃金減額に関する裁判例を見てみましょう。

CFJ合同会社事件(大阪地裁平成25年2月1日・労判1080号87頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対して、Y社がした降格及びこれに伴う賃金の減額が人事権の濫用に当たり無効であるなどと主張して、主任職の地位確認及び賃金減額前と賃金減額後の差額賃金の支払を求める事案である。

【裁判の判断】

降格は有効

役職手当3000円の減額は有効であるが、基本給の減額は無効

【判例のポイント】

1 Xは、顧客に対する対応及びその後の対応に問題があったとして、平成19年6月16日付で係長代理から主任職への1階級降格処分(懲戒処分)を受け、本件降格までの間、数度の研修を受けているにもかかわらず、再三にわたり、Y社から顧客対応に関して注意書等により注意指導を受けている。同事実は、X自身も認めているところであり、Xの業務遂行能力は、Y社がジョブグレード制度において定める主任職の能力基準に達していないと認められる。以上の事実に加え、Y社のような貸金業者にとって、貸金業法に違反した場合、業務停止命令を受けるおそれがあるところ、Xが注意指導を受けた行為は、このような事態を招くおそれのあるものであることからすれば、本件降格は、Y社の有する人事権の範囲内であり、権利の濫用はなく、有効である。

2 以上のとおり、本件降格は、有効であるところ、Y社の給与規程第11条によれば、本件降格前にXに支給されていた役職手当は、主任職という役職に対して支給されていることが給与規程上明らかであるから、本件降格に伴ってされた役職手当3000円の減額は有効である。

3 基本給の減額は、以下のとおり、人事権の濫用であり無効というべきである。
・・・労働者にとって最も重要な労働条件の一つである賃金額については、就業規則や賃金規程等に明示されるか、労働者の個別の合意がないまま、使用者の一方的な行為によって減額することは許されないというべきであるところ、Y社のジョブグレード制度に基づき、基本給の減額が認められるためには、給与規程によって「基本給(部長職以上は、月例給)は、Job Grade別に月額で定める。」と定めるだけでは足りず、具体的な金額やその幅、運用基準を明らかにすべきである。しかし、上記のとおり、Y社においては、Xら従業員にその内容を明らかにしていない。また、主任職1等級と一般職3等級の基本給の額には約10万円もの差があり、Xも本件降格により約10万円もの減額を受けていることにも鑑みれば、本件降格によりXの基本給を減額することは、人事権の濫用として許されないというべきである。

上記判例のポイント3は、参考になりますね。

賃金の重要性に鑑みれば、規程の内容が抽象的であり、かつ、減額幅が大きい本件において、裁判所がこのような判断をしたことは妥当であると思います。

「降格処分が有効であるにもかかわらず」という視点を持つことが大切ですね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。