解雇136(東京都教育委員会事件)

おはようございます。

さて、今日は、条件付採用期間中の職員の免職処分に関する裁判例を見てみましょう。

東京都教育委員会事件(東京地裁平成25年9月2日・労経速2200号12頁)

【事案の概要】

本件は、東京都公立学校教員であったXが、1年間の条件付採用期間の満了する平成24年3月31日、東京都教育委員会から東京都公立学校教員を免ずる旨の処分を受けたことについて、本件免職処分は、処分権者の裁量の範囲を逸脱し、適正手続を欠いた違法なものであると主張して、その取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 地方公務員法22条1項、教育公務員特例法12条1項により、公立学校教員の採用は、臨時的任用又は非常勤職員の任用の場合を除き、すべて条件付のものとされ、その教員がその職において1年間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとされている。この条件付採用制度の趣旨、目的は、職員の採用に当たり行われる競争試験又は選考の方法がなお職務を遂行する能力を完全に実証するとはいい難いことに鑑み、試験等によりいったん採用された職員の中に適格性を欠く者があるときは、その排除を容易にし、もって、職員の採用を能力の実証に基づいて行うとの成績主義の原則を貫徹しようとするところにあると解され、したがって、条件付採用期間中の職員は、いまだ正式採用に至る過程にあるものということができる。しかし、条件付採用期間中の職員といえども、すでに試験等という過程を経て、現に給与を受領し、正式採用されることに対する期待を有するものであるし、条件付採用期間中の職員にも適用される地方公務員法27条1項は、分限及び懲戒についてではあるが、公正でなければならないと規定して恣意的処分を戒め、任命権者の裁量権行使を限定している。そうすると、地方公務員法22条1項の「職務を良好な成績で遂行したとき」という用件が一定の評価を内容とするものであることからすれば、条件付採用期間中の職員がこの要件を充足するか否かについては、任命権者に相応の裁量権が認められることはいうまでもないものの、前記の条件付採用制度の趣旨、目的からすれば、その裁量は純然たる自由裁量ではなく、任命権者の判断が客観的に合理性をもつものとして許容される限度を超えた不当なものであるときは、裁量権を逸脱ないし濫用したものとして違法となると解するのが相当である(最高裁昭和49年12月17日判決)。

2 ・・・前記のXの問題点の内容に照らすと、Xが新任の教員であり、教員として十分な経験を経た者ではないことや、Xには生徒の心情を汲んだ丁寧な指導を複数回にわたって行ったという実績や、Xを教員として評価する保護者や生徒がいること等の事情を踏まえても、Xにつき、条件付採用期間において、教育公務員としての能力を実証することができなかったとする都教委の評価、判断は、客観的に合理性を持つものとして許容される限度を超えた不当なものであるということはできず、裁量権の行使に逸脱ないし濫用の違法があったとは認められない。

通常の労働事件における解雇権濫用法理とは異なる判断基準により判断されることになります。

ご注意ください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。