不当労働行為92(田中酸素事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう。

さて、今日は、賞与等に関する団交における会社対応の不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

田中酸素事件(東京地裁平成26年1月20日・労判1093号44頁)

【事案の概要】

Y社内の労働組合である補助参加人は、Y社が、平成21年10月22日付け労働協約に反し、団体交渉に決定権限を有していない者を出席させたこと、本件労働協約及び平成21年12月19日の団体交渉における合意事項に反し、賞与及び昇給に係る団体交渉の申入れ及び査定に使用した資料等の提示を行うことなく平成21年の冬季賞与、平成22年1月の昇給及び同年の夏季賞与を支給したこと並びに補助参加人による平成22年1月26日及び同年3月22日の団体交渉の申入れを拒否したこと等が不当労働行為に当たるとして、同年8月24日付けで山口県労働委員会に対し、①団体交渉におけるY社代表者の出席及び誠実交渉、➁賞与及び昇給の支給予定金額を決定次第、支給予定金額及び査定に使用した資料等を補助参加人に提示して団体交渉を申し入れ、賞与等の支給前に団体交渉を開催すること、③謝罪文書の交付等を求めて、Y社を被申立人とする救済の申立てをした。山口県労委は、上記➁について、平成21年の冬季賞与及び平成22年1月の昇給に係るY社の対応が不当労働行為に当たるとして、Y社に対し、今後の賞与又は昇給に関する団体交渉において本件労働協約を遵守し必要な資料を提示してY社の主張の根拠を具体的かつ合理的に説明し誠実に対応することを命じ、その余の申立てを棄却した。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 …以上のとおり、平成21年12月21日のY社の対応は、本件合意事項に反するものと認められ、加えて、補助参加人からY社に対し、平成21年の冬季賞与の支給金額の決定に使用した資料の提示が繰り返し求められたにもかかわらず、平成22年4月22日の団体交渉や同年6月10日の団体交渉に至っても当該資料が提示されていないことからすれば、平成21年の冬季賞与に係るY社の対応は、本件合意事項及び本件労働協約に基づくY社及び補助参加人間のルールに従って誠実に対応したものと認めることはできない

2 救済命令を発するためには、不当労働行為の存在が認定されることに加え、救済を受けることを正当とする利益又は救済を与えることを正当とする必要性、すなわち救済の利益が救済命令を発する時点で存することが必要であると解される。
この点について、Y社は、…今後の団体交渉の場の内外で同様の暴言や暴行が繰り返されるおそれがあると優に認められるから、本件初審命令のような救済命令を発すべき救済の利益は失われている旨主張するので、以下、検討する。
…Y社が、平成21年12月以降に行われた団体交渉等において、補助参加人からの再三の要求にもかかわらず、本件労働協約や本件合意事項に従った対応を必ずしもとっていなかったことなど、このような団体交渉におけるY社の対応が、補助参加人が団体交渉において上記のような態度をとったことの原因又は誘因の一つになっていた可能性も必ずしも否定することができないとも考えられるのであるし、団体交渉における補助参加人の上記の態度をもって直ちに、補助参加人が今後の団体交渉において、いかなる課題であるかにかかわらず、又はY社の対応にかかわらず、繰り返し同様の態度をとるであろうとも、これを前提とした上でY社が今後の補助参加人との団体交渉において何ら本件労働協約等に従った対応をとる必要がないとも認めることができないというべきである

ユニオンから資料の提示を求められた際は、(もちろん資料の種類・内容によりますが)前向きに検討しましょう。

過去の裁判例からすると、資料の不提示というのは、誠実交渉義務を尽くしていないと評価される場合が多いからです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。