賃金90(X空港事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、元従業員からの退職功労金の請求が認められなかった裁判例を見てみましょう。

X空港事件(大阪地裁平成26年9月19日・労経速2233号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員及び元従業員の相続人が、Y社が労働組合に交付した書面に記載されていた退職功労金の支給基準は就業規則と一体のものとして労働契約の一内容となっているとして、Y社に対し、労働契約に基づき、退職功労金及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 旧退職金規程7条は、退職功労金について「在籍中に特に功労があった者に対しては基本退職金の計算の範囲内で功労加算として加給する」と定めているが、在籍中に特に功労があった者に対して退職功労金を支給することを抽象的に定めているだけであり、同条によっては退職功労金の支給対象者及び支給額は確定しないから、旧退職金規程7条に基づいて、直ちに退職功労金を請求することはできず、使用者が「特に功労があった者」に当たるか否かを査定するとともに、具体的な算定方式や支給額を決定することによって初めて具体的な金額が確定するものと解される。そして、昭和55年基準は、勤続20年以上、かつその在籍中10年皆勤表彰を受賞して定年退職した受賞者を「特に功労があった者」とし、さらに勤続1年につき2万5000円を退職功労金の支給額とするとして、退職功労金の支給対象者及び支給金額の算定基準を明確にするものであるから、昭和55年基準は旧退職金規程7条退職功労金請求権の具体的な内容を確定するものであり、したがって、昭和55年基準が改廃されない限りにおいては、Y社の従業員は旧退職金規程7条及び昭和55年基準に基づいて退職功労金を請求することができるものと解される。

2 もっとも、昭和55年基準は本件組合に宛てた文書に記載されているものであって一般的な就業規則の形式とは体裁が明らかに異なっている上、就業規則を作成又は変更するに当たって法律上要求されている行政官庁への届出(労働基準法89条)や多数労働組合又は過半数代表に対する意見の聴取(同法90条9も行われていない。しかも、昭和55年書面には昭和55年基準を「内規として取扱うことを連絡致します」と記載されており、・・・Y社が昭和55年基準を就業規則ではなく、あくまでも内規として位置付けていることは明らかである。
・・・そうすると、昭和55年基準は旧退職金規程7条の内容を具体化するものではあるが、昭和55年基準自体は就業規則の一部ではないから、昭和55年基準はY社とY社の従業員との間の労働契約の内容としてY社を拘束するものではないというべきである

3 以上によれば、昭和55年基準は、Y社とY社の従業員との間の労働契約の内容にはなっておらず、あくまでも運用基準にすぎないから、Y社は、労働者の同意を得ることなく、同基準を改廃することが可能であると解される。そして、昭和55年基準は、平成12年内規が制定されたことにより改訂されているから、Xらは、昭和55年基準に基づいて退職功労金を請求することはできない。

今回のようなケースでは、賞与の請求をする場合と同様、労働者側には厳しい戦いとなります。

上記判例のポイント2の視点は、応用できますね。 参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。