解雇168(なみはや交通(仮処分)事件)

おはようございます。

今日は、タクシー乗務員に対する懲戒処分の有効性と賃金仮払申立に関する決定を見てみましょう。

なみはや交通(仮処分)事件(大阪地裁平成26年8月20日・労判1105号75頁)

【事案の概要】

本件は、Y社にタクシー乗務員として雇用されていたXらが、Y社のなした懲戒解雇処分は無効であるとして、地位保全および賃金仮払いの仮処分を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効

【判例のポイント】

1 使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の制裁罰を科するものであるから、使用者は、懲戒を行うべき労働者に対し、懲戒当時にその理由とする具体的な非違行為を表示しなければならない。したがって、使用者が懲戒当時に理由として表示しなかった非違行為は、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものと解するのが相当である。

2 Y社が主張する懲戒理由は、懲戒理由一覧表記載のとおり、債権者毎に異なり、かつ多岐にわたっているにもかかわらず、本件懲戒処分の理由を記載した本件通知書は、いずれの債権者に交付されたものも、理由として「入社契約書第8条(ロ・ト・ヌ)に該当し」と同一の内容が記載されているにとどまり、何ら具体的な非違行為は記載されていない。そして、審尋の結果によれば、Y社は、本件懲戒処分を行うにあたり、債権者らに弁解の機会を付与していなかったことが認められるから、債権者らが、本件通知書を見ても、懲戒理由一覧表記載の懲戒理由は、いずれも使用者が懲戒当時に理由として表示しなかったものというべきであるから、本件懲戒処分の有効性を根拠づけるものとはならない。
他方、・・・本件懲戒処分は、Y社の経営方針(本件掛金の変更)に反対した本件組合を消滅させるために行われたことが強く推認される。
以上によれば、本件懲戒処分は、懲戒理由を欠いて行われたものというほかないから、その余の点を検討するまでもなく、無効であるといわなければならない

3 債権者X1は、①Y社から、月額25万円程度の給与を得ていたこと、②妻との二人暮らしであり、その生計を維持するためには、妻のパートタイム勤務による収入(月額約9万円)を考慮してもなお毎月20万円程度が不足すること、③平成26年4月以降、賃金が全く支払われないため、預貯金を取り崩して生活を維持してきたが、その預貯金もわずかな金額になったことが一応認められる。したがって、平成26年8月25日から本案の第一審判決の言渡しの日までの毎月20万円の割合による金員の仮払いの限度で保全の必要性が認められる。

4 本件においては、強制執行可能な賃金仮払の仮処分が認容される以上、任意の履行を期待する地位保全の仮処分の必要性を認めるべき事情は見いだし難い

懲戒処分をする場合には、いくつか気をつけなければならない点があります。

その点を無視して処分すると、今回のような結果になってしまいます。

懲戒処分をする場合には、顧問弁護士に相談の上、ちゃんと手順を踏んで行いましょう。