解雇172(メルセデス・ベンツ・ファイナンス事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、中途採用者に対する普通解雇に関する裁判例を見てみましょう。

メルセデス・ベンツ・ファイナンス事件(東京地裁平成26年12月9日・労経速2236号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、稼働していたところ、解雇されたXが、この解雇は解雇権を濫用したものとして無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、賃金及び賞与並びにこれらに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、同僚等に対し、日常的に高圧的、攻撃的な態度を取り、トラブルを発生させていたほか、インターネットのサイトで業務と無関係なことをし続けていたのであり、そのため、Y社は職務の遂行に支障を来していたところ、このようなXの言動は、容易には変わり得ないであろう性向等に起因しているものと推認できるから、Xについては、「協調性を欠き、他の従業員の職務に支障をきたすとき」と、「その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき」という、本件就業規則41条3号及び7号に該当する事由が存在したことが認められる

2 この点に関し、Xは、職種や配置の転換の可能性を検討することなく解雇したのは、解雇回避義務を尽くしたものとは評価し得ないと主張するが、Xの言動に照らすと、その原因であるXの性向等は容易に変わり得ないものと推測でき、職種や配置を転換することによって問題が解決ないし軽減の可能性を検討していなかったとしても、そのことをもって解雇回避義務を尽くしていないと評価するのは相当ではない
したがって、本件解雇については、「客観的に合理的な理由」があるものと認められる。

3 そして、Y社は、自分が職種限定社員であるという主張に固執していたXをその希望どおり与信審査部に異動させた上で、本件合意に沿って、他の従業員らとのコミュニケーション及び行状について、何度もXとの面談を実施し、注意を行い、懲戒処分たる譴責処分も行うなど、改善の機会を何度も与えたものの、Xの言動が基本的に変わることがなかったため、Xを解雇するに至ったものであるから、以上の経緯を踏まえると、本件解雇は「社会通念上相当」と認められる

4 これに対し、Xは、Y社がXに対し個々の言動を指摘した上で注意や指導をしたことはないから、具体的かつ明示的な注意や指導を受けていない言動を理由とする本件解雇は社会通念上相当性を欠くと主張する。しかし、Xは、21年間にわたる銀行勤務の後にY社との間で本件雇用契約を締結し、月額50万円近い賃金の支払を受けて稼働していたのであり、相応の経験を有する社会人として、自身で行動を規律すべき立場にあったものといえるところ、他者とのコミュニケーションに意を用い、その名誉や感情を徒に害するような言動を慎むことは、かかる社会人経験を有する者としては当然のことであり、改めて注意されなければ分からないような事柄ではない。とすれば、Y社がXに具体的かつ明示的な注意や指導をしていなかったとしても、そのことを重視するのは相当ではない。しかも、Y社が実施していた面談等は、何が問題であるのか通常の理解力があれば容易に認識し得る方法で提示し、注意や指導をしていたと評価することができ、Xとしても、改善の契機はあったと認められるのであって、Y社はXに行動を改める契機を何度も与えてきたということができる。むしろ、Xにおいて前期のような主張をしていること自体が、Xの処遇の困難性を示し、本件解雇の相当性を裏付けるものというべきである。Xの主張には理由がない。

今回は、裁判所も解雇の有効性を認めてくれましたね。

しかるべき手続を踏み、従業員の行動、言動をしっかりと記録しておくことが大切です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。