不当労働行為111(想石事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、就労拒否と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

想石事件(茨城県労委平成26年11月20日・労判1106号91頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の取締役製造部長であり、A組合の執行委員に選出された。

A組合は、Y社に対し、未払賃金の支払等を要求して団体交渉を申し入れた。

その後、Xは、取締役辞任届を提出した。

Y社はXに対し、「取締役としての一切の義務及び権利が無効となり、会社との一切の関係が消滅した」旨通知し、翌日からXの就労を拒否した。

【労働委員会の判断】

Xの就労拒否は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Xは、事業遂行に不可欠な労働力として会社の事業組織に組み込まれ、製造部門の業務に従事し、タイムカード打刻により労働時間を管理あるいは把握され、労務の対価としての報酬を受けていたものと評価できる。そうすると、XはY社との間で実質的な雇用関係にもあったものと考えるのが相当である

2 Xが会社の意を受けてA労組に加入した事実や、Xの加入によりA労組の運営等に関して、使用者の意向等が反映されたと思われるような事実については、一切認められないことを勘案すると、Xは労組法2条但書第1号により、労働組合への参加が制限される「役員」や利益代表者に当たるとまでは言えず、A労組も、労組法2条の要件を欠くものではなく、Xは労組法7条の保護を受ける労働者であると判断するのが相当である。

3 本件就労拒否は、未払賃金等や成果給、自動丸鋸機の問題などで敵対的な態度を見せるA労組を嫌悪したY社が、中心人物であるXを職場から排除することによって、A労組の組織や活動を弱体化することを企図した解雇であったと考えざるを得ないことから、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たると判断する。

Y社の主張は、なかなか厳しいものがあります。

取締役であったとしても、上記命令のポイント1のような事情がある場合には、会社としても形式的な対応は避けるべきであると考えます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。