Daily Archives: 2015年10月30日

賃金103(Y社事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、退職金減額決定は有効であり、未払退職金はないとされた裁判例を見てみましょう。

Y社事件(東京地裁平成27年7月17日・労経速2253号18頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、労働契約に基づき、Y社に対し、退職金未払部分352万余+遅延損害金の支払を求める事案である。

Xは平成元年7月、Y社との間で労働契約を締結した。Y社は、平成22年9月、Xに対し、懲戒解雇の意思表示をした。

Y社は、平成22年10月、Y社の退職金規程に従って計算したXの退職金の額である528万円余を3分の1に減額して支払う旨の決定をし、退職金176万円余から源泉所得税を控除した額を支払った。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件退職金規程は、4条以降で退職金の額を一義的に算定することができる計算方法を具体的に規定していることに照らせば、Y社における退職金が賃金の後払いとしての性格を有するというべきである。もっとも、同規程13条が懲戒解雇の場合の退職金の不支給を定めていることに照らせば、Y社における退職金には功労報償的性格をも有することは否定できない
したがって、原則として、Y社は、本件退職金規程により算定される退職金の支払義務を負うが、懲戒解雇による退職の場合で、かつ、退職者において長年の勤労の功を減殺し、又は抹消する程度に背信的な事情がある場合には、退職金を減額し、又はこれを支給しないことが許されるというべきである。

2 これを本件についてみると、Xは、度重なる遅刻をした上、上司に対し合理的な理由なく反抗的な態度をとった上、乱暴な言葉遣いで誹謗中傷やおよそ趣旨の不明瞭な反論をするなど、職場環境に悪影響を与えるような言動を繰り返したというのである。
これらの遅刻の期間、回数、上司に対する反抗的態度の内容、またこれらの言動が本件戒告処分及び本件出勤停止処分によってもなお改まる兆候が見られなかったこと等に照らせば、Xの勤務態度は、長年の勤労の功を抹消する程度に背信的なものであったと評価するほかない
よって、本件退職金減額決定は有効であり、未払い退職金はないというべきである。

非常にオーソドックスな退職金請求事件です。

実務においては、どれだけ退職金を減額するかの判断をしなければなりません。

背信性がそれほど高くないのに、大幅は退職金の減額や不支給とすると、会社側が一部敗訴する場合もありますので、注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。