Daily Archives: 2015年12月9日

解雇190(ホンダエンジニアリング事件)

おはようございます。

今日は、賞罰委員会に諮ってなされた懲戒解雇は弁明の機会を付与しなくても手続的に違法はないとされた裁判例を見てみましょう。

ホンダエンジニアリング事件(宇都宮地裁平成27年6月24日・労経速2256号3頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の従業員であったところ、Y社から懲戒解雇にされたものであるが、Xには懲戒解雇事由がなく、また、懲戒解雇手続が違法であることや懲戒解雇が処分として重すぎることからすると、懲戒解雇の相当性を欠くため無効であり、Xは自らの意思で辞職したものであるとして、退職一時金82万8255円の支払いを求め、在職中にY社の職員から受けたとして、慰謝料150万円の支払及びこれらの合計232万8255円に対する労働審判申立書が到達した日の翌日からの遅延損害金の支払を求めている。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成25年5月28日から8月1日までの間、上司からの業務命令に従わず、指示された業務に従事しなかったものであるから、故意に業務を放棄したものであり、このような行為は、就業規則・・・との懲戒事由に該当するものと認められる。また、Xは、平成25年6月12日から8月1日までの36日間、無断欠勤を続けたものであり、このような行為は、就業規則・・・に該当するものと認められる

2 Xは、上司からの度重なる業務命令に従わず、36日間無届欠勤を継続したものであるから、懲戒事由の程度は重大であって、懲戒解雇が相当性を欠くものということはできない

3 Xは、Y社がXに弁明の機会を与えないで懲戒解雇を言い渡したとして、適正手続保障の観点から、懲戒解雇の相当性の要件を欠くと主張する。しかし、Y社の就業規則において弁明の機会を与える旨の規定は置かれておらず、懲戒をするに当たっては、労使の代表者で構成する賞罰委員会の意見を聞くこととされているところ、このような場合、弁明の機会を付与しないことをもって直ちに懲戒手続が違法ということはできない。そして、本件においては、賞罰委員会に諮って本件懲戒解雇がなされているものであるから、手続に違法な点があるということはできない

4 そうすると、本件懲戒解雇は有効なものと認められるから、労働協約80条2項により、Xは退職金請求権を有しないものと認められる。

懲戒解雇の場合、必ずといっていいほど適正手続が問題となります。

上記判例のポイント3は是非、実務において参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。