解雇238 被懲戒者の弁解の合理性と懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、懲戒解雇が無効とされた裁判例を見てみましょう。

東京都港区医師会事件(東京地裁平成29年1月24日・労経速2308号15頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、懲戒解雇されたがこれが無効であるとして、労働契約上の地位の確認、並びに解雇日以降である平成27年9月1日から本判決確定の日まで、毎月25日限り月額37万7702円の割合による賃金及び遅延損害金の支払いを求めている事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 以上から、Y社が主張する懲戒解雇該当事由はいずれも認められない。仮にこれが認められたとしても、本件の懲戒解雇事由がそれほど悪質なものとはいえないこと、Xにこれまで懲戒処分歴はないこと、Y社側でXに対して問題点を指摘して繰り返し注意指導した形跡もないことに照らすと、懲戒解雇は重きに失し、相当性が認められない。よって、本件懲戒解雇は無効である。

Y社側が主張した懲戒解雇事由は、①医師国保茶菓代残金等の着服、簿外処理、報告義務違反、②カルテ用紙等販売事業の収支の簿外処理、③ビール瓶リターナブル代金の着服、業務に必要なファイルの削除ですが、これらすべてについて、X側の弁解が認められ、就業規則に定める懲戒解雇事由に該当しないとされました。

被懲戒者の弁解を冷静に見た結果、合理性があると認められる場合には、懲戒処分を思いとどまる必要があります。

決して感情的な対応にならないように気をつけましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。