Daily Archives: 2017年10月2日

同一労働同一賃金4 賞与支給方法の差異と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、有期と無期の賞与支給方法の差異と労契法20条違反の成否に関する事案を見てみましょう。

ヤマト運輸(賞与)事件(仙台地裁平成29年3月30日・労判1158号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において、期間の定めのない雇用契約を締結している社員(マネージ社員)と1年以内の期間の定めのある雇用契約を締結している社員(キャリア社員)が存在するところ、キャリア社員であるXが、Y社に対し、マネージ社員とキャリア社員との間で、賞与の算定方法が異なる不合理な差別があり、Xの個人成果査定が不当に低いことが労働契約法20条に反する不法行為に当たるとして、平成25年7月支給、同年12月支給、平成26年7月支給、同年12月支給の各賞与につき、マネージ社員との不合理な差別等がなかったならば支給されたはずの賞与とXが実際に得た賞与の差額99万5974円+遅延損害金の支払等を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労働契約法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違が不合理なものであることを禁止する趣旨の規定であるところ、有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違があれば直ちに不合理とされるものではなく、労働契約法20条に列挙されている要素を考慮して「期間の定めがあること」を理由とした不合理な労働条件の相違と認められる場合を禁止するものであると解される。そして、不合理な労働条件の相違と認められるかどうかについて、同条は「職務の内容」即ち「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」及び「職務の内容及び配置の変更の範囲」と「その他の事情」を考慮要素とする旨規定している。

2 マネージ社員に期待される役割、職務遂行能力の評価や教育訓練等を通じた人材の育成等による等級・役職への格付等を踏まえた転勤、職務内容の変更、昇進、人材登用の可能性といった人材活用の仕組みの有無に基づく相違があり、職務の内容及び配置の変更の範囲には違いがあり、その違いは小さいものとはいえない
そして、Y社のマネージ社員とキャリア社員の賞与の支給方法の違いは、支給月数と成果査定の仕方にあるところ、支給月数の差はマネージ社員より基本給が高いキャリア社員の所定労働時間比率を乗じることによって、格付、等級、号俸、業務区分が同じ場合のマネージ社員とキャリア社員の基本給と支給月数を乗じた賞与算定の基礎金額を同一にしようとしたものであり、またその支給月数の差も格別大きいとはいえないことからすれば、そのことだけで不合理な差異であるということはできない。また、前記のとおり、査定方法のマネージ社員とキャリア社員の職務の内容及び配置の変更の範囲、具体的には転勤、昇進の有無や期待される役割の違いに鑑みれば、長期的に見て、今後現在のエリアにとどまらず組織の必要性に応じ、役職に任命され、職務内容の変更があり得るマネージ社員の一般社員について成果加算(参事、業務役職は成果査定)をすることで、賞与に将来に向けての動機づけや奨励(インセンティブ)の意味合いを持たせることとしていると考えられるのに対し、与えられた役割(支店等)において個人の能力を最大限に発揮することを期待されているキャリア社員については、絶対査定としその査定の裁量の幅を40%から120%と広いものとすることによって、その個人の成果に応じてより評価をし易くすることができるようにした査定の方法の違いが不合理であるともいえない。

3 さらに、各期の賞与は、その支給方式も含め、労働組合との協議のうえ定められている。平成26年度12月賞与については、Xが加入する労働組合からも意見を聞き、支給月数及び配分率について合意している。
以上によれば、Y社におけるマネージ社員とキャリア社員の賞与の支給方法の差異は、労働契約法20条に反する不合理な労働条件の相違であるとは認められない。

これまでにいくつか労働契約法20条関係の裁判例が出されていますが、多くの裁判例で消極的な判断がされています。

もう少し判例の集積を待つ必要がありますね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。