解雇253 起訴休職期間満了を理由とする解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、起訴休職期間の満了を理由とする解雇が有効された裁判例を見てみましょう。

国立大学法人O大学事件(大阪地裁平成29年9月25日・労経速2327号3頁)

【事案の概要】

国立大学法人であるY社の歯学研究科の助教として勤務していたXは、平成24年4月5日、傷害致死の公訴事実により起訴されたことで、Y社の定める起訴休職制度に基づき休職処分を受け、その後、2年の休職期間が満了したことを理由に、平成26年5月2日付けで分限解雇となった。

本件は、Xが、①主位的には、上記解雇は無効であると主張して、Y社との間の雇用契約に基づき、同契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、身柄拘束を解かれた後である平成27年4月から本判決確定の日までの賃金+遅延損害金の支払を求め、②予備的に、Y社との間でXを再雇用させる旨の合意が成立していたのにこれに違反したと主張し、債務不履行に基づく損害賠償として、。平成27年4月から17か月分の賃金相当額+遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 一般に労働者が起訴された場合、勾留等の事情により、当該労働者が物理的に労務の継続的給付ができなくなる場合があるほか、勾留されなかった場合でも、犯罪の嫌疑が客観化した当該労働者を業務に従事させることにより、使用者の対外的信用が失墜し、職場秩序の維持に障害が生じるおそれがある場合には、事実上、労務提供をさせることができなくなる。起訴休職制度は、このように、自己都合によって、物理的又は事実上労務の提供ができない状態に至った労働者につき、短期間でその状態が解消される可能性もあることから、直ちに労働契約を終了させるのではなくm、一定期間、休職とすることで使用者の上記不利益を回避しつつ、解雇を猶予して労働者を保護することを目的とするものであると解される。
以上のような起訴休職制度の趣旨に鑑みれば、使用者は、労務の提供ができない状態が短期間で解消されない場合についてまで、当該労働者との労働契約の継続を余儀なくされるべき理由はないから、不当に短い期間でない限り、就業規則において、起訴休職期間に上限を設けることができると解するのが相当である。
・・・以上の点に鑑みれば、起訴休職期間の上限を2年間とする本件上限規定は、合理的な内容(労契法7条所定の「合理的な労働条件」に該当するもの)であると認められる。

2 Xは、平成24年4月5日に傷害致死という重大な犯罪の嫌疑により、起訴され、勾留された状態が継続し、平成26年2月7日に保釈許可決定が出されて、一時、釈放されたものの、同月20日の一審判決の結果、再び勾留され、休職期間満了時も勾留されていたのであって、Y社に対する労務の提供ができない状態が継続していたこと、懲役8年の一審判決が出されたことにより、休職期間満了時以降も、少なくとも相当期間勾留が継続し、労務の提供ができない状態が継続することが見込まれていたこと、以上の点が認められ、これらの点に鑑みれば、以上のようなY社に対する労務の提供ができないXについて、降任、降格又は降給にとどめる余地がなかったことは明らかであって、Xについては、本件解雇時点において、Y社との「雇用関係を維持しがたい場合」にあったと認めるのが相当である。

3 Xは、本件解雇時において、実母に対する傷害致死の容疑で勾留され、Y社に対して労務の提供ができない状態が継続しており、一審において懲役8年の有罪判決を受けたことにより、その後も相当程度の期間、勾留が継続し、Y社に対する労務の提供ができないということが見込まれる状態にあったと認められる。また、本件解雇は、平成26年2月20日に宣告された懲役8年の一審判決から約2か月半後にされたものであるところ、その間に、控訴審の審理が行われるなどして、一審判決が破棄されることをうかがわせる新たな事情が生じたことを認めるに足りる的確な証拠はなく、Y社が同破棄を予見することができたとは認められない

ちなみに、Xは、刑事事件の控訴審において、平成27年3月11日、暴行罪により、罰金20万円の判決が言い渡され、釈放されています。

それゆえ起訴休職期間が争点となることは理解できますが、2年間という相当長期にわたる起訴休職の期間に合理性が認められることは争いがないのではないでしょうか。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。