解雇263 虚偽報告等に基づく懲戒解雇と相当性判断(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、虚偽報告等に基づく懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

アストラゼネカ事件(東京地裁平成29年10月27日・労判ジャーナル72号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員が、Y社の行った懲戒解雇が無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成27年12月以降本判決が確定するまでの間、毎月25日限り、賃金月額約64万円等及び平成28年3月分の賞与約267万円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

未払賞与等支払請求は一部認容

【判例のポイント】

1 シンポジウムの虚偽報告については、Xの出欠確認方法が不適切であったことに起因するもので、それは注意することにより今後同様の誤りを生じないと期待することができるものであり、また、Xの営業活動の虚偽報告については、Y社自身MRに対して、データ入力の有無について注意喚起をすることがなかったことの影響も考えられ、今後、Xがデータの入力を正確にすると期待することができ、そして、虚偽内容のメールや必要のないメールの発信行為については、Xの問題意識や苦しい思いをその解決に必要な範囲を超えて周囲に流布するものであるが、外部に流布したのではなく、Y社の中の一部の者に流布したに止まっており、いずれの行為についても懲戒処分を検討するに当たって考慮すべき事情等があり、個別の注意、指導といった機会もなかったのであるから、これらの行為全てを総合考慮しても、懲戒解雇と、その前提である諭旨解雇という極めて重い処分が社会通念上相当であると認めるには足りないというべきであり、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることができず、懲戒権を濫用したものとして、無効である。

2 Xは、Y社との間の労働契約において、賞与として年267万2235円を支給するものとされていた旨を主張するが、平成28年の賞与額は基本給3か月分の固定分と平成27年7月から12月の評価変動部分に分かれていること、評価変動分の標準評価が基本給1.5か月分であること、評価変動賞与は、基本給1.5か月分の0%から200%の範囲で、各人の業務目標の達成如何で金額が決定されること、Xの平成27年1月から6月までの評価変動の賞与は1.03か月分であったことが認められ、Y社において、賞与のうち評価変動賞与は、Y社が裁量によってその都度決定する金額が支払われるものであって、あらかじめ定まった金額が支払われるものではないことがうかがわれるから、XとY社との間の労働契約において、Xが解雇されなかったならば確実に評価変動賞与として基本給1.5か月分の支払がされるとは認められず、XのY社に対する平成28年の賞与の支払請求は、固定分である基本給3か月分の178万1490円に限られ、その余の請求は理由がない。

相当性がないということで懲戒解雇が無効と判断されています。

相当性判断を事前に適切に行うことはとても難しいですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。