Monthly Archives: 4月 2019

労働者性25 FCオーナーの労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、コンビニオーナーの労基法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

セブンーイレブン・ジャパン事件(東京地裁平成30年11月21日・労判ジャーナル85号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間でコンビニエンス・ストアの経営に関するフランチャイズ契約を締結するなどしていたXが、同契約に基づくXのY社に対する労務提供の実態からすると、Xは労働基準法第9条の「労働者」及び労働契約法第2条第1項の「労働者」に該当するにもかかわらず、Y社は、Xに対して、賃金の支払を怠る、使用者としての安全配慮義務に反して傷害を負わせる、無効な解雇を行うといった不法行為を行ったなどと主張して、Y社に対し、主位的には、不法行為に基づき、未払賃金相当額及び慰謝料等の損害金等の支払を求めるとともに、予備的には、労働契約に基づき、未払賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社から業務遂行上の指揮監督を受けていたと主張するが、本件各店舗の仕入を援助し、その販売促進に協力することは、同契約に基づくY社の義務の履行を行い、使用者がその権限において行う労働者に対する指揮監督とはその性質がおよそ異なるものであり、また、Xは、時間的・場所的に強い拘束を受けていたなどと主張するが、本件各店舗という営業場所やその営業時間が指定されていたのは、Y社がXの業務の遂行を指揮監督する必要によるものではなく、フランチャイズ契約の内容によるものにすぎず、そして、Xの親族やXが雇用したアルバイト従業員が本件各店舗の店舗業務を行っていたことは、Xの労働者性を否定する方向に働く事情であり、また、本件各基本契約において、いかなる方法により貸借処理を行い、また、最低保証制度を設けるか否かは、原則として、フランチャイズ契約の内容をどのように設定するかという問題にとどまり、その他、Xが指摘する諸事情を考慮しても、Xの事業者性を減殺し、Xの労働者性を積極的に肯定できるまでの事情の存在を認めることはできない。

チャレンジングな訴訟ですが、結論的には異論はないと思います。

なお、労組法上の労働者性は労基法上のそれに比べて定義が広いため、FCでも認められることがあります。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介909 仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?

帯には「『スピード』と『質』は同時に上がる」と書かれています。

確かにそうですね。

うっかりミスが多いと感じる人は、是非読んでみてください。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私たちは慢性的な学習不足です。その原因の一つには、世の中が楽しくなりすぎて、娯楽などに費やす時間が増えてしまったことがあります。」(232頁)

ネット見て、SNS見て、「いいね」押して、LINE見て、コメント返して、YouTube見て・・・。

あー忙し(笑) 勉強なんてしている時間ないですよね(笑)

ただでさえ忙しい生活の中で、勉強することはとても大変なことです。

大人になると多くの人は勉強することを止めてしまいます。

時間をどう捻出するか。その1点だけです。

簡単です。

ネット見て、SNS見て、LINEして、YouTube見る時間を減らせば、いとも簡単に時間が生まれます。

あとはやるかどうか。

同一労働同一賃金12 正社員と嘱託社員との間における同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、不合理な労働条件の相違に基づく損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本ビューホテル事件(東京地裁平成30年11月21日・労判ジャーナル85号46頁)

【事案の概要】

本件は、Y社を定年退職後にY社との間で期間の定めのある労働契約を締結していた元従業員Xが、当該有期労働契約と定年退職前の期間の定めのない労働契約における賃金額の相違は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違であり労働契約法20条に違反するとして、Y社に対し、不法行為による損害賠償請求として定年退職前後の賃金の差額相当額約688万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの定年退職時と嘱託社員及び臨時社員時の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)は大きく異なる上、職務の内容及び配置の変更の範囲にも差異があるから、嘱託社員及び臨時社員の基本給ないし時間給と正社員の年俸の趣旨に照らし、Xの嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給が定年退職時の年俸よりも低額であること自体不合理ということはできず、そして、その他の事情についてみるに、定年退職時の年俸額はその職務内容に照らすと激変緩和措置として高額に設定されている上、正社員の賃金制度は長期雇用を前提として年功的性格を含みながら様々な役職に就くことに対応するように設計されたものである一方で、嘱託社員及び臨時社員のそれは長期雇用を前提とせず年功的性格を含まず、原則として役職に就くことも予定されておらず、その賃金制度の前提が全く異なるのであり、このような観点からみても、正社員時の賃金額と嘱託社員及び臨時社員時の賃金額に差異があること自体をもって不合理といえないことは明らかであること等から、Xの定年退職時の年俸の月額と嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給の月額との相違が不合理であると認めることはできず、これをもって労働契約法20条に違反するということはできない。

このように両者の業務内容等の相違点について合理的に説明ができる場合には労働条件の相違があっても法的に許容されます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介908 1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法

タイトルから想像する内容ではありません。

終始、考えることの大切さを説いている本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

では、いったい、何を考え出せば『本当に考えた』と言えるのだろうか。考える目的を端的に言えば、『代替案を出すこと』『具体案を出すこと』『全体像を明らかにすること』『本質を見抜くこと』の4つである。・・・『アイデアがある人は悩まない』というものである。・・・その意味することは、『代替案(Bプラン、Cプラン)を持っている人は安心して生活することができる』というものだ。」(50~51頁)

代替案を持っていないというのは、つまるところ、自信過剰もしくは想像力の欠如が原因だと思います。

そのプランがうまくいくことしか想定していないわけですから、仮にうまくいかなかったときは大変です。

「想定の範囲」をできるだけ広げることは新しいことをやる上で極めて重要です。

どこまでのリスクなら取れるのかを把握するからこそ、その範囲で大胆なチャレンジができるのです。

同一労働同一賃金11 アルバイト職員への賞与不支給と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、有期契約労働者(アルバイト職員)への賞与不支給の違法性に関する裁判例を見ていきましょう。

大阪医科薬科大学(旧大阪医科大学)事件(大阪高裁平成31年2月15日・ジュリ1530号4頁)

【事案の概要】

本件は、期間の定めのある労働契約を締結してY社において勤務していたXが、期間の定めのない労働契約をY社と締結している労働者(以下「無期契約労働者」という。)とXとの間で、基本給、賞与、年末年始及び創立記念日の休日における賃金支給、年休の日数、夏期特別有給休暇、業務外の疾病(私傷病)による欠勤中の賃金、附属病院の医療費補助措置に相違があることは労働契約法20条に違反すると主張して、Y社に対し、不法行為に基づき、差額に相当する額等合計1272万1811円の損害賠償金及びこれに対する原審における請求の趣旨変更の申立書送達の日の翌日である平成28年4月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

原判決は、Xの請求をいずれも棄却したので、Xが本件控訴を提起した。

【判例のポイント】

1 Y社が正社員に年2回(1年で概ね基本給の4.6か月分)支給している賞与の支給額は、正職員全員を対象とし、基本給のみに連動するもので、従業員の年齢や成績に連動するものではなく、Y社の業績にも一切連動していない。このような支給額の決定方法を踏まえると、Y社における賞与は、賞与算定期間に就労していたこと自体に対する対価としての性質を有し、そこには賞与算定期間における一律の功労の趣旨も含まれるとみるのが相当である。そうである以上、同様にY社に在籍し就労していた、とりわけフルタイムのアルバイト職員に対し、賞与を全く支給しないことに合理的な理由を見出すことは困難であり、不合理というしかない
もっとも、Y社の賞与には、功労、付随的にせよ長期就労への誘因という趣旨が含まれ、使用者の経営判断を尊重すべき面があることも否定し難い。さらに、正職員とアルバイト職員とでは、実際の職務も採用に際し求められる能力にも相当の相違があり、アルバイト職員の賞与算定期間における功労も相対的に低いことは否めない。これらのことからすれば、正社員のうち平成25年4月に採用された者と比較し、その者の賞与の支給基準の60%を下回る支給しかしない場合は不合理な相違というべきである。

2 夏期特別有給休暇の趣旨は、体力的に負担の大きい夏期に休暇を付与し心身のリフレッシュを図らせることにある。アルバイト職員であってもフルタイムで勤務している者は、夏期に疲労を感ずることは想像に難くなく、正職員と同様の夏季特別有給休暇を付与しないことは不合理というほかない。

3 Y社の正職員の私傷病による欠勤時に支給される賃金(6か月間は賃金全額、6か月経過後は標準賃金の2割の休職給)の趣旨は、長期継続就労を評価・期待し生活保障を図る点にある。契約を更新して一定期間継続就労し、Y社に一定の貢献をしているアルバイト職員にも、生活保障の必要性があることは否定し難く、私傷病による欠勤中に賃金を支給しないことに合理性があるとはいい難い。もっとも、その契約期間は更新があるとしても1年が原則であり、当然に長期雇用が前提とされているわけではないことから、私傷病による賃金支給につき1か月分、休職給の支給につき2か月分(合計3か月、雇用期間1年の4分の1)を下回る支給しかしないときは不合理というべきである

4 年末年始や創立記念日の休日の賃金については、正職員の月給制、アルバイト職員は時給制を採用したことの帰結にすぎず、不合理とはいえない。年休の日数に1日の相違が生ずることも、不合理な相違とはいえない。附属病院受診の際の医療費補助措置は、恩恵的な措置であって労働条件に含まれるとはいえず、不合理な労働条件の相違とはいえない。

前回に引き続き、労契法20条関連の裁判例です。

同種の訴訟が全国で頻発しており、まだまだ落ち着く気配はありません。

今後、どのように対応していくべきかについてはいまだ正解がないため、過去の裁判例に照らして、弁護士等と相談しながら検討するほかありません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介907 ブチ抜く力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
ブチ抜く力

久しぶりの与沢さんの本です。

痩せましたね!

今回の本は「一つの事に魂を売れ!」がテーマです。

結果を出す人がどんなことを考えているのかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

10年あれば基本的に人は何者にでもなれます。ですが、惰性で生きたら人は衰退していくだけです。10年後に自分はどうなっていたいのか。これは本当に真剣に考えた方がいい事です。
・・・常に種を蒔き、10年後に最も華やかなもの、場所、銘柄、ビジネスなどを想像しながら先手を打っていく事が必要です。リスクを取らなければ、大きなリターンはあり得ません。10年後にこうあるべきだと思うならば、そのゴールを目指して今から着手していく事が重要です。未来を放置する事は、自分の人生を放置するのと同じ事です。
」(144~145頁)

以前にも書きましたが、自分の商品価値を向上させる努力・準備を日々するか、しないか。

ただそれだけの話です。

忙しいのはみんな同じです。

それでもやる人はやっているのです。

僕たち凡人は、人が休んでいる時、人がスマホをいじっている時に努力を積み重ねるしかないのです。

自分の人生は自分で切り開く。

その覚悟があれば絶対にできます。

同一労働同一賃金10 正社員と臨時職員との間の同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、正社員との基本給の相違が労働契約法20条に反するとした裁判例を見てみましょう。

学校法人産業医科大学事件(福岡高裁平成30年11月29日・労経速2370号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の臨時職員であるXが、使用者であるY社に対し、両者間の労働契約に係る賃金の定めが有期労働契約であることによる不合理な労働条件であって、無期労働契約を締結している労働者(正規職員)との間で著しい賃金格差が生じており、労働契約法20条及び公序良俗に違反するとして、不法行為に基づき、損害金824万0750円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原判決は、Xの請求を棄却したところ、Xが控訴をした。

【裁判所の判断】

原判決を変更する。
→Y社はXに対し、113万4000円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 これらの事情を総合考慮すると、臨時職員と対照職員との比較対象期間及びその直近の職務の内容並びに職務の内容及び配置の各変更の範囲に違いがあり、Xが大学病院内での同一の科での継続勤務を希望したといった事情を踏まえても、30年以上の長期にわたり雇用を続け、業務に対する習熟度を上げたXに対し、臨時職員であるとして人事院勧告に従った賃金の引き上げのみであって、Xと学歴が同じ短大生の正規職員が管理業務に携わるないし携わることができる地位である主任に昇格する前の賃金水準すら満たさず、現在では、同じ頃採用された正規職員との基本給の額に約2倍の格差が生じているという労働条件の相違は、同学歴の正規職員の主任昇格前の賃金水準を下回る3万円の限度において不合理であると評価することができるものであり、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

2 Xは、Y社と正規職員との俸給の差は不合理なものであるから、本件労働契約における賃金の定めが公序良俗に反すると主張するが、労働者の賃金の定めに関する労働条件は、労働者の職務内容及び変更範囲により一義的に定まるものではなく、使用者は、雇用及び人事に関する経営判断の観点から、労働者の職務内容及び変更範囲にとどまらない様々な事情を考慮して、労働者の賃金に関する労働条件を検討するものということができるというのが相当である。そして、労働者の賃金に関する労働条件の在り方については、基本的には、団体交渉等による労使自治に委ねられるべき部分が大きいということができ、前記認定事実に加え証拠によれば、Y社は、団体交渉を経て、臨時職員の退職金についての労働条件を一部改善し、また、平成25年4月からは嘱託職員への切り替えによる3万円の基本給引上げも実施したことが認められ、これらからすれば、Xが主張する事情から、本件労働契約における賃金の定めが公序良俗に反するということはできない

高裁判決ですが、労契法20条に関する裁判例はまだもう少しの間、揺れ動くでしょう。

個々の事案ごとの判断が求められるため、前の2つの最高裁判決が出ても一向に判断が落ち着く気配がありません。

もう少し様子をみるほかないでしょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介906 一切なりゆき~樹木希林のことば~(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
一切なりゆき 樹木希林のことば (文春新書)

希林さんのことばをまとめた本です。

言葉言葉に生き方、考え方がストレートで出ており、飾らない人柄が伝わってきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

着飾っても甲斐がないし、光りものも興味がない。それより住むところを気持ちよくしたいなあって。若い頃は安物買いの銭失いだったんですよ。でも、モノがあるとモノに追いかけられます。持たなければどれだけ頭がスッキリするか。片付けをする時間もあっという間。」(24頁)

希林さんも物に囚われないことの大切さを伝えています。

あれが欲しい、これが欲しいと物欲には際限がありません。

どこまでいっても満たされないのです。

日常生活をより快適にしたいという願望は私も持っていますが、よりいい時計や車を持ちたいという願望は皆無です。

物に対する執着・こだわりがないので、特に不足を感じません。

このような状態を幸せというのではないかと思います。

セクハラ・パワハラ51 パワハラ行為と慰謝料請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、未払賃金請求とパワハラ等に基づく損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

プラネットシーアール・プラネット事件(長崎地裁平成30年12月7日・労判ジャーナル84号20頁)

【事案の概要】

本件は、A社に採用されて休職した労働者が、A社から時間外労働に対する賃金が支払われていないとして、A社に対し、未払賃金合計約258万円等の支払、A社との間で労働契約上の地位を有することの確認を求め、前記休職は上司であったCのパワハラ等が原因で精神疾患を発病したことによるものであり、労働者は休職後も月例賃金及び賞与の請求権を失わないと主張して、A社に対し、休職後の月例賃金及び賞与等の支払を求め、Cに対し、不法行為に基づく損害賠償金約330万円等の支払を求めるとともに、A社に対してはCの使用者(民法715条1項)として、Bに対してはA社の代理監督者(同条2項)として、それぞれ前記金員の連帯支払を求め、また、本件訴訟係属中におけるA社の労働者に対する文書送付に基づき、A社に対し、慰謝料等110万円等の支払等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 未払賃金等支払請求は一部認容

2 労働契約上の地位確認請求は却下

3 損害賠償請求は一部認容

【判例のポイント】

1 上司であったCの叱責は、内容的にはもはや叱責のための叱責と化し、時間的にも長時間にわたる、業務上の指導を逸脱した執拗ないじめ行為に及ぶようになっていたところ、Xは、職場の状況から、多くの作業を抱え込み、長時間労働を余儀なくされており、更にCの前記のような嫌がらせ、いじめ行為を含む継続的な叱責を受けたため、強い精神的負荷を受け、その結果、適応障害を発病して休職を余儀なくされたと推認され、Xの休業が労働災害によるものと認められ、労働者が休業補償給付決定を受けたことからも肯認でき、Cの前記行為は、Xの人格権等を違法に侵害する不法行為(民法709条)に当たるというべきであり、Cは、Xの損害を賠償する責任を負うというべきであり、また、Cの当該行為はA社の業務を行うにつきされたものであるから、A社も、使用者責任(民法715条1項、709条)に基づき、Xの損害を賠償する責任を負うというべきである。

2 文書5、6は、文書1~4が訴訟代理人間で法的主張を交換する中でされたり、使用者の業務権限に基づいてされたものであるのと異なり、直接労働者に宛てて、全体として、労働者が自らのパワハラ被害を訴えてA社及びB社を批判し、本件訴訟で係争すること自体が非常識で分をわきまえない行為であるかのように労働者を見下して一方的に非難し、貶めたりするものであって、これらの文書を送付する行為は、労働者の名誉感情を侵害する違法な侮辱行為に当たり、不法行為を構成するものと認められ、また、文書5、6は、専らA社・B社の代表者であるDの意思で作成され、同時期に送付されたものであるから、文書5、6の送付行為は、D、B社代表者及びA社代表者の意思連絡の下でされた共同不法行為に当たると解するのが相当であるから、D、A社及びB社は、民法719条1項、709条、会社法350条に基づき、文書5、6の送付により労働者の被った損害を連帯して賠償する義務を負うと解するのが相当であり、労働者の精神的苦痛を金銭をもって慰謝するには20万円が相当である。

この類の訴訟は今も昔もとても多いです。

管理職に対して、パワハラに関する研修を定期的に実施するを強くお奨めします。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介905 人生でいちばん大切な三つのことば(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
人生でいちばん大切な三つのことば

ときどきお坊さんの本を読むと心が落ち着きます。

慌ただしい生活を送っていると忘れてしまいがちな大切なことを教えてくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仏教は声高に『世のため、ひとのため』とは言いません。ある日師匠が『世のためひとのためと言っている者にかぎって、じぶんのためにやっている人間がおる。だから『人』の『為』と書いて『偽り』というんだ』とおっしゃっていました。」(65頁)

人の為と書いて偽り。なるほど。使わせていただきます。

あと、ビジネスをしているのに、「お金じゃない」という人は信用しません。

いかなるビジネスも利益を上げるために仕事をしているのです。

利益が出なければ従業員に給料を払うこともできませんし、早晩、つぶれてしまいます。

聞こえの良い綺麗事に逃げないことがとても大切だと思っています。