Daily Archives: 2019年5月28日

不当労働行為218 書面による回答と団交応諾義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組の団交申入れに対して、一部の事項について書面による回答だけを行ったこと、および開催条件に固執して団交を拒否したことなどの会社の対応を不当労働行為とした初審命令が維持された事案を見てみましょう。

アート警備事件(中労委平成31年1月31日・労判1196号90頁)

【事案の概要】

本件は、労組の団交申入れに対して、一部の事項について書面による回答だけを行ったこと、および開催条件に固執して団交を拒否したことなどの会社の対応の不当労働行為該当性が争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 団体交渉は、労使双方が同席、相対峙して自己の意思を円滑かつ迅速に相手に直接伝達することによって、協議、交渉を行うことが原則であり、労使双方の合意がある場合又は直接話し合う方式を採ることが困難であるなど特段の事情がある場合を除いては、書面の回答により団交が実施されたことにはならないというべきである。

2 会社が組合に対して送付した書面による回答等は、その内容からして、形式的にも実質的にも団交の体をなしておらず、「対面による団交」の代替となりうるようなものであったとは到底いえないことが明らかであるし、そもそも書面により団交が実施されたといえる場合についての上記の要件を満たしていないことも明らかである。そして、これらの会社の対応は、組合からの申入れによる団交が実施されていないことだけにとどまらず、会社が団交申入れを拒絶したものと十分に評価できることも明らかである。

3 団交実施に当たって、一方当事者が団交の場所や時間、議事の進行その他について実施のための条件を付すことは、相手方に異存がない場合のほか、団交を円滑に実施するための有効、適切かつ合理的な必要性と相当性が認められ、かつ相手方の利益等を不当に害するものでないときには、許されないわけではない。しかし、・・・一方当事者が設定した条件に応じない限り団交を実施しないことに正当な理由があると認められるのは、その条件について上記の必要性や相当性が明らかに認められ、相手方がこれを拒絶することが不当と評価できる場合に限られると解される。

4 会社は、義務的団交事項に係る27年各団交申入れにつき、それ以前の対応も含め、組合に団交3条件の受入れを求め、これを不当とする組合からの協議の申入れ等を拒絶し、上記の前提を明らかに欠く団交3条件に固執して、上記の事実経過のとおり長期間にわたって現在まで団交を開催していないのであるから、正当な理由がない団交拒否であることは明らかである。

団体交渉に関する基本的ルールが書かれています。

特に目新しい内容ではありませんが、大切な点なのでよく理解しておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。