Monthly Archives: 5月 2021

本の紹介1154 More with Less(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「働く時間は短くして、最高の成果を出し続ける方法」です。

まさにタイトルのとおりの内容です。

大切なのは、マインドとメソッドです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

働く人に求められるのは、労働の『時間提供者』ではなく『価値提供者』になることです。限られた時間のなかで、自分の価値を最大化する必要があります。徹夜して資料を完成させて苦労をアピールしたり、休日出勤で多忙さを自慢したりするのは、もはや意味がありません。自分の得意なことをやって、より少ない時間で稼がないといけないのです。」(15頁)

時間とお金を等価交換する限り、収入には自ずと限界があります。

ワークライフバランスを維持しながら、生活水準を一定程度に保とうとするならば、時間ではなく価値とお金を等価交換するようにシフトしなければいけません。

そのための第一ステップは、「やらないことを決める」ということです。

自分の得意分野に限定し、そこに力を注ぐことが価値を高める近道です。

解雇345 精神疾患の業務起因性と解雇制限(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、労基法19条1項違反に基づく解雇無効地位確認等請求に関する事案を見てみましょう。

中央自動車工業事件(大阪地裁令和2年11月19日・労判ジャーナル108号16頁)

【事案の概要】

本件は、自動車の修理加工、販売、仲立等を目的とするY社の従業員であったXが休職期間満了により退職扱いとされたところ、XがY社の従業員の嫌がらせにより精神疾患に罹患し休職せざるを得なくなったのであって、Xの休職がY社の業務に起因するため、労基法19条1項により退職扱いとすることができないと主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに平成30年6月以降本判決確定の日まで毎月27日限り月額44万6000円の賃金+遅延損害金の支払を求めるとともに、上記Y社の従業員の嫌がらせ又はY社の退職扱いによりXの権利ないし法律上保護に値する利益を侵害され、また、これに対して何らの対応もしなかったY社に職場環境配慮義務違反があるとして、Y社に対し、使用者責任(民法715条1項)、不法行為(民法709条)又は債務不履行(民法415条)に基づき、慰謝料200万円及び治療費等34万5600円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Xが平成28年5月頃、適応障害を発症した旨主張し、これに沿うI医師の意見も存する。しかしながら、Xが平成19年6月23日、うつ病と診断され、その後、多少症状が軽減した時期はあるが、平成28年5月頃まで、抗うつ薬を中止できるような寛解状態には至っていないことからすると、それまでのうつ症状とは異質の、いらいら及び攻撃的な感情の出現を認められることを考慮しても、大阪労働局地方労災医員協議会精神障害専門部会の意見のとおり、「反復性うつ病性障害(F33)」が自然経過を超えて著しく悪化した可能性を否定できない

2 仮に、XがI医師の意見のとおり、平成28年4月後半頃に適応障害を発病していたとしても、発病前おおむね6か月の間に生じた可能性のある出来事は、別表Y社の従業員による嫌がらせ行為一覧表の番号10(「お前なんか死ね。早よ死ね。」,「アホ!ボケ!」)のみである。
この点、Xは、認定基準においても、いじめやセクシュアルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、発病の6か月前よりも前にそれが開始されている場合でも、発病前6か月以内の期間にも継続しているときは、開始時からの全ての行為を評価の対象とするとされていることを指摘する。
しかしながら、Dによる嫌がらせ行為が継続的に行われていたと認められないことは別表Y社の従業員による嫌がらせ行為一覧表「当裁判所の判断」欄記載のとおりである。
また、発病前おおむね6か月の間に生じた出来事に限定しないとしても、別表Y社の従業員による嫌がらせ行為一覧表のうち、認められる可能性のある出来事は、番号4,5,8,10,11にとどまる。

3 加えて、これらを総合的に考慮したとしても、別表Y社の従業員による嫌がらせ行為一覧表のとおり、これらが継続して行われているとはいえず、また、多人数が結託して行われたともいえない(Dの肩が当たったとしても治療を要するものでない)以上、認定基準の別表1「業務による心理的負荷評価表」項目29(「(ひどい)嫌がらせ,いじめ,又は暴行を受けた」)に沿って検討すれば、「強」である例には当たらず、心理的負荷の強度が「強」であるとは認められない
したがって、本件疾病の業務起因性を認めることができない
よって、本件疾病が業務上の疾病に該当することを前提とするXの地位確認請求及び賃金請求にはいずれも理由がない。

精神疾患の業務起因性の判断は本当に難しいです。

本件のように全く問題がないというわけではない事案において、業務上の疾病には該当しないと判断すれば、ほぼ間違いなく訴訟に発展します。

その覚悟を持ち、顧問弁護士に相談をしながら客観的に判断することが求められます。

本の紹介1153 考える術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71」です。

著者は、発明家、映像クリエイター、作家の方です。

発想がとても自由で、参考になります。

ますます効率的な社会になっていくからこそ、非効率だけど遊び心のあるアイデアが重宝されるのでしょうね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いいものより悪いもの、完璧よりダメなもの、強いものより弱いもの、丈夫なものよりもろいもの、合理的なものより無駄なもの、簡単なものより面倒なもの、まじめなものよりおもしろいもの・・・。そんな発想をしながら、ひっくり返したものをさらにひっくり返したり、脇道に思い切りズレたりしながら考える。」(254頁)

これはビジネスをしていく上でも参考になる発想です。

みんなが考える逆を考えてみるのです。

「~らしさ」を裏切る何かを考えてみると、全く新しいアイデアが浮かんできます。

競合他社と競合しているようではダメだということです。

価格競争に巻き込まれるのがオチですから。

より良いものではなく、より違うものを。

従業員に対する損害賠償請求9 従業員の交際禁止合意の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、従業員の私的交際を禁止する合意に違反したことを理由とする違約金請求が棄却された裁判例を見てみましょう。

有限会社MIBプランニング事件(大阪地裁令和2年10月19日・労経速2439号23頁)

【事案の概要】

本件は、Y社がXに対し、従業員の私的交際を禁止する合意に違反したことを理由とする違約金・損害賠償金合計140万円+遅延損害金を請求する事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社が雇用契約を締結したこと及びY社の求めによりXが本件同意書に署名したこと、Y社が本件始末書を作成したこと及びその時点でY社がXに対する違約金200万円の請求を控えたことは当事者間に争いがない。
しかるに、本件同意書は、使用者であるY社が被用者であるXに対して私的交際を禁止し、これに違反した場合には違約金200万円を請求し、Xはこれを支払う旨合意するものであるところ、これは、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしたりすることを禁じた労働基準法16条に違反しており、無効である。
また、人が交際するかどうか、誰と交際するかはその人の自由に決せられるべき事柄であって、その人の意思が最大限尊重されなければならないところ、本件同意書は、禁止する交際について交際相手以外に限定する文言を置いておらず真摯な交際までも禁止対象に含んでいることや、その私的交際に対して200万円もの高額な違約金を定めている点において、被用者の自由ないし意思に対する介入が著しいといえるから、公序良俗に反し、無効というべきである。

英会話教室やキャバクラ等で同様の契約内容を見かけますね。

違約金等の請求をされると労基法16条の問題として争われ、契約違反で解雇されると、地位確認が争われます。

契約内容については事前に顧問弁護士に相談することをお勧めいたします。

本の紹介1152 死なないように稼ぐ。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

堀江さんが実際に携わっている飲食店の運営について、日頃、どのような工夫や努力をされているのかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・だから、やらない理由をゴチャゴチャいってる時間があったら、とりあえず『恥』をかいてみてほしい。恥をかきそうな行動を避け続けていると、自意識が妄想ということにいつまでも気づけない。早く恥をかいて、自由になろう。」(120頁)

「恥ずかしい」という感情から解放されると、余計なことを気にする必要がなくなります。

これは、すなわち、他人から非難・批判されたくないという感情に似ています。

多くの人は、他人からどう思われているかが気になって気になって仕方ないのです。

結果、挑戦することを避け、失敗することを恐れ、できるだけ目立たずに、昨日と同じ毎日をただ過ごしているのでしょう。

他人の評価、評判を気にしすぎです。

そんなもん、放っておけばいいのですよ。

同一労働同一賃金19 無期転換労働者には正社員の就業規則が適用される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、無期労働契約転換後の労働者に、正社員の就業規則が適用されるべきとの主張が認められなかった裁判例を見てみましょう。

ハマキョウレックス(無期転換)事件(大阪地裁令和2年11月25日・労経速2439号3頁)

【事案の概要】

本件は、労契法18条1項に基づき有期労働契約から期間の定めのない労働契約に転換したXらが、転換後の労働条件について、雇用当初から無期労働契約を締結している労働者(以下「正社員」という。)に適用される就業規則(以下「正社員就業規則」という。)によるべきであると主張して、Y社に対し、正社員就業規則に基づく権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づく賃金請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権として、無期労働契約に転換した後の平成30年10月分の賃金について正社員との賃金差額(X1につき9万1012円、X2につき9万3532円)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 前訴は、X1とY社との間で、有期の契約社員と正社員との労働条件の相違が労契法20条に違反する場合、当該有期の契約社員の労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるかが争われた事案であるのに対し、本件訴訟は、XらとY社との間で、労契法18条に基づく無期転換後の無期契約社員の労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるかが争われた事案であることが認められる。
そうすると、本件訴訟は、前訴と争点を異にするものであるから、本件訴訟におけるXらの主張に前訴におけるX1の主張と類似の趣旨のものがあったとしても、本件訴訟が前訴における紛争の実質的な蒸し返しに当たるということはできない。

2 X告らは、Y社の回答が上記のとおりであることを認識した上で、無期転換後の労働条件は契約社員就業規則による旨が明記された無期パート雇用契約書に署名押印してY社に提出しており、XらとY社との間には、無期転換後も契約社員就業規則が適用されることについて明示の合意があるというべきである。

3 Y社において、有期の契約社員と正社員とで職務の内容に違いはないものの、職務の内容及び配置の変更の範囲に関しては、正社員は、出向を含む全国規模の広域異動の可能性があるほか、等級役職制度が設けられており、職務遂行能力に見合う等級役職への格付けを通じて、将来、被告の中核を担う人材として登用される可能性があるのに対し、有期の契約社員は、就業場所の変更や出向は予定されておらず、将来、そのような人材として登用されることも予定されていないという違いがあることが認められる。
そして、無期転換の前と後でXらの勤務場所や賃金の定めについて変わるところはないことが認められ、他方でY社が無期転換後のXらに正社員と同様の就業場所の変更や出向及び人材登用を予定していると認めるに足りない。
したがって、無期転換後のXらと正社員との間にも、職務の内容及び配置の変更の範囲に関し、有期の契約社員と正社員との間と同様の違いがあるということができる。
そして、無期転換後のXらと正社員との労働条件の相違も、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲等の就業の実態に応じた均衡が保たれている限り、労契法7条の合理性の要件を満たしているということができる。

この裁判例、そのまま読むと、無期転換後の社員と正社員との間においても同一労働同一賃金問題が生じるように読めます。

同一労働同一賃金の問題は非常にセンシティブですので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

ひとまず高裁、最高裁判決を待ちましょう。

本の紹介1151 +1cm(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「たった1cmの差があなたの世界をがらりと変える」です。

ほんの少し見方や考え方を変えるだけで、今よりも格段に幸せになるというお話です。

かわいらしい絵とともに参考になる考え方がたくさん盛り込まれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

一瞬の怒り、一瞬のあやまち、一瞬の動揺、一瞬のあきらめ、一瞬の欲望・・・。
あなたを誘惑する悪魔がやってくるのは、いつもほんのわずかな時間だけ。
けれど、その一瞬を支配されることは全てを支配されることだ。
人は弱く、一瞬に惑わされて多くを失ってしまう。」(152頁)

これらの原因により一瞬にして人生を棒に振ることは意外とよくあります。

なお、これは犯罪行為に限った話ではありません。

一瞬の判断の結果、長期にわたって経済的・精神的な不自由を強いられるあらゆる行為を指します。

本当に一瞬の判断ミスにより莫大な代償を負うことを理解しなければなりません。

大袈裟ではなく、人生設計が大きく狂ってしまうので、気を付けましょう。

不当労働行為265 組合員の人事異動と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員をA郵便局第二集配営業部からB郵便局に人事異動したことが不当労働行為に当たらないとした初審命令が維持された事案を見ていきましょう。

日本郵便(人事異動)事件(中労委令和2年1月22日・労判1234号105頁)

【事案の概要】

本件は、組合員をA郵便局第二集配営業部からB郵便局に人事異動したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Xは勤続年数からみて、28年度の人事異動の対象となる候補者であった。また、B9支社管内における27年度及び28年度の人事異動に関しては、例年とほぼ同じ規模のもので、それぞれ30名又は40名以上の組合役員が異動になっており、そのうち執行委員は各年度20名以上、さらに支部外へ異動になった執行委員は10名以上であった。
このように、定期人事異動の際にX以外の組合の執行委員も多数異動になっていることからみて、会社が、定期人事異動を行うに当たり、対象者が組合の執行委員であることを考慮していることはうかがわれず、Xについてもこれと異なる事情は見いだし難い。
上記によれば、本件人事異動は、業務上の必要性がある上、その人選も不合理なものであったとはいえない。

組合員と非組合員に対する対応を区別していないことが立証できれば、不当労働行為には該当しません。

組合員に対する人事異動については、事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。