労働者性36 配達業務従事者の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、配達業務従事者の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

ロジクエスト事件(東京地裁令和2年11月6日・労判ジャーナル110号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から依頼を受けて配送業務に従事していたXが、Xは労働契約法2条1項、労働基準法9条の「労働者」に該当するにもかかわらず、Y社が違法な解雇を行ったなどと主張して、不法行為(使用者責任)又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき、慰謝料及び逸失利益(給料相当額)50万9000円等の支払を求める事案である。

原判決は、Xの請求を全部棄却する旨の判決を言い渡した。

Xはこれを不服として本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件契約が労働契約に当たる旨主張するが、本件契約は、配送業務に関する基本契約であり、個別の配送業務については、Y社が業務があれば発注することとなっており、Xにその発注についての諾否の自由があるものと認められ、また、本件契約において、Xは、業務の遂行に当たり、本件業務の性質上最低限必要な指示以外は、業務遂行方法等について裁量を有し自ら決定することができることとされ、Xは、配送業務の遂行に当たり、Y社の社名やロゴが入ったエコキャリーカート、ユニフォームを使用しているが、これは円滑な業務遂行を目的としたものである可能性がある以上、Xの労働者性を基礎付けるものとはいえず、そして、本件契約の料金は、配送距離に応じた単価に個々の件数を乗じて算出するものであり、労務提供時間との結びつきは弱いものであるといえ、そして、Y社の募集広告に「1時間当たり850円の手取り保障」「フリー切符代1日1590円支給」との記載があるが、これらの条件は「勤務開始後1か月間の特典」という一時的なものであったことからすれば、これをもってXの労働者性を基礎付けるものとはいえない。

2 Xは、Y社の従業員であるAから、本件契約を解除する旨言われ、押し問答の末、退職合意書に一身上の都合により辞職すると記載の上で署名押印するように言われてその旨記載した旨記載した旨主張するが、本件契約書の規定する契約期間は3ヶ月と短く、本件契約は飽くまで基本契約であり個別の事務処理委託に当たっては個別契約を締結することを要するから、Aには本件契約自体を期間途中で解除する動機や退職合意書なるものをBに記入させる動機があると認め難いことに加えて、Bの供述を裏付ける的確な証拠はないことからすれば、Bの上記供述を直ちに信用することはできない。

労働者性が否定された事案です。

各種労働法の適用回避のために業務委託契約にしているような業種は、日頃から顧問弁護士に相談の上、労働者性が肯定されないように留意する必要があります。