解雇349 解雇後に転職した場合の「復職の意思」の有無に関する判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、トラック運転手に対する普通解雇の有効性と就労意思に関する裁判例を見てみましょう。

新日本建設運輸事件(東京高裁令和2年1月30日・労判1239号77頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結していたXが、Y社により平成28年6月25日付けで普通解雇されたが、本件解雇は無効である旨を主張して、Y社に対して、①労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②本件解雇後に生ずる月例賃金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、本件解雇は無効であるが、平成29年11月21日の時点で、XとY社との間でXがY社を退職することについて黙示の合意が成立したと判断し、Xの請求のうち、①を棄却し、②のうち平成29年11月分までの賃金から中間利益を控除した389万9974円+遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し、その余の請求を棄却した。

これに対し、Y社が上記認容部分の棄却を求めて控訴し、Xは、上記棄却部分の認容を求めて附帯控訴した。

【裁判所の判断】

本件控訴を棄却する。

本件附帯控訴に基づき、原判決主文第1項及び第4項を次のとおり変更する。
①地位確認
②Y社はXに対し、759万9473円及び令和元年12月から本判決確定の日まで、月額28万6166円の割合による金員+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社は、Y社はXとの交渉に臨む際に解雇を示す書面を作成していたが、交渉の過程において、Xに対する解雇の意思を撤回し、X自らが離職の意思を示した旨主張する。
しかし、Y社代表者は、上記のとおり、Xに本件解雇通知書等を示した上で、本件解雇通知書等を取るのか、それともこれまでの行動を謝罪するのかのいずれかを選択するように委ねたのであって、これはすなわち、Y社は、XがY社代表者の提示した上記条件に従わない限り解雇するとの意思表示をしたものであるから、Xが、本件解雇通知書等を手に取り、部屋を出て、Y社代表者の提示した条件に従うことを拒否する意思を示したことにより、同時点で、Y社代表者の解雇の意思表示が確定的にされたと認めるのが相当である。Y社代表者自らが本件解雇通知書を交付しなかったからといって、解雇の意思表示を撤回したとみる余地はない。

2 Xは、本件解雇後、代理人弁護士に相談した上、離職の2日後には、本件解雇が無効である旨通知し、Y社との間で労働契約上の権利を有する地位にあることを明示し、平成28年6月分以降の賃金の支払を求めているから、同通知が復職を求めるものであることは明らかであり、これに対し、Y社は回答書においてXが従業員の地位にないとして争っていて、Y社が勤務継続を要求してもY社がこれに応じないことも明らかであったから、Xが上記通知に加えさらに勤務継続を明示に要求しなかったとしても、そのことからXの離職時に就労意思がなかったということはできない。また、解雇された労働者が、解雇後に生活の維持のため、他の就労先で就労すること自体は復職の意思と矛盾するとはいえず、不当解雇を主張して解雇の有効性を争っている労働者が解雇前と同水準以上の給与を得た事実をもって、解雇された就労先における就労の意思を喪失したと認めることはできない
なお、Xは、平成28年7月からG建材、平成29年6月からH興業、平成31年2月から現在までK建材において稼働し、それぞれ転職を繰り返しており、各再就職先において、完全にその職務に専念し、Y社における就労意思を喪失したと認めるに足りる証拠はない

解雇後、他の会社に転職した場合に出てくる論点です。

復職の意思の有無の考え方について大変参考になる裁判例ですので押さえておきましょう。

解雇を行う場合には、必ず顧問弁護士に相談をしつつ、慎重に対応していきましょう。