労働者性37 コピーライターの労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、コピーライターの労働者性ならびに契約解除(解雇)の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ワイアクシス事件(東京地裁令和2年3月25日・労判1239号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において稼働していたXが、XとY社との間の契約は雇用契約であり、Y社がXに対してした平成30年6月30日付け解雇の意思表示は客観的合理的理由がなく無効である旨主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、雇用契約に基づく賃金支払請求として、本件解雇前の未払賃金223万5927円+遅延損害金並びに本件解雇日以降の月例賃金として平成30年7月から本判決確定の日まで毎月末日限り、月額43万円+遅延損害金の支払を求める事案の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

Y社は、Xに対し、223万5927円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、平成30年7月31日限り43万円、同年8月31日限り28万円、同年9月から本判決確定の日まで毎月末日限り25万8000円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 コピーライティング業務自体についてはその業務の性質上、Y社代表者やY社の社員から具体的な指示はあまりされていなかったものの、顧客のディレクターの指示には従って業務を進める必要があり、Y社においても、Xの業務の進捗状況や進行予定については、毎月2回の定例会議で確認し、Xに対しても他の社員とともに前月の売上げの状況を踏まえた訓示がなされ、少なくとも既存の顧客との関係では売上げを増やすための努力を求められていたと推認されることからすると、これらの業務に対する指示の状況は、コピーライティング業務を委託する場合に通常注文者が行う程度の指示等に留まるものと評価することは困難である。

2 Xは、基本的に週5日、1日8時間以上Y社事務所において上記業務に従事していたことからすると、Xに対する固定報酬は、Xが一定時間労務を提供していることへの対価としての性格を有しているというべきである。

3 Xについては、Y社において正社員を採用する際に作成される内定通知書、採用通知書及び雇用契約書は作成されておらず、Xからも履歴書や身元保証書等の提出がされていないこと、Xが社会保険及び厚生年金等に加入していなかったことが認められる。
しかしながら、Y社は平成21年1月頃、D氏の紹介でXに対して案件ごとに報酬額を協議する形でコピーライティング業務を委託するようになった後、固定報酬制の本件契約を締結していることからすると、他の正社員と採用手続が異なることは労働者性を否定する要素とはいえないと解される。また、社会保険及び厚生年金等に加入していないことについて、Xが本件契約締結当時は加入を求めていなかったとしても、このことが労働者性を否定する要素とはいえない

4 Y社は、本件契約を締結後、Xに対し、固定報酬の支払について「給与明細」を発行し、源泉徴収を行い、毎年、源泉徴収票を発行していたこと、平成28年6月20日付で在職証明書を発行したこと、Y社がXに対して固定報酬の支払が遅延することを連絡するに際し、固定報酬を「給料」と呼称していたことが認められるところ、これらはY社がXを他の社員と同様に労働者として認識していたことを推認させる事情といえる。

5 Xの業務については、具体的な仕事の依頼、業務指示等に対する諾否の自由はなく、Xは、Y社からの指示の下、顧客からの指示に従って業務を行っていたほか、月2回の定例会議における業務の進捗状況の確認を受けるなど、Y社の業務上の指揮監督に従う関係が認められ、時間的場所的拘束性も相当程度あり、業務提供の代替性があったとはいえないことからすると、Y社の指揮監督の下で労働していたものと推認される。これに、Xに支払われる固定報酬の実質は、労務提供の対価の性格を有していると評価できること、Xには事業者性が認められず、専属性がなかったとはいえないこと、Y社もXを労働者として認識していたことが窺われること等を総合して考えれば、Xは、Y社との使用従属関係の下に労務を提供していたと認めるのが相当であって、Xは、労基法9条及び労契法2条1項の労働者に当たるというべきである。

判例のポイント4を見る限り、労働者性は肯定されてもやむを得ないと思われます。

また、固定報酬制を採用している点も労働者性を肯定しやすくしています。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。