Daily Archives: 2021年10月20日

不当労働行為277 組合員の賞与支給時期を非組合員より遅らせたことは不当労働行為?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員の賞与支給時期を非組合員より遅らせたことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

沖縄セメント工業(賞与)事件(沖縄県労委令和2年11月12日・労判1245号94頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の賞与支給時期を非組合員より遅らせたことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 会社は、組合員については、少なくとも平成28年から同30年までは、夏季賞与支給予定額が決定したころに組合からの団体交渉の申入れを受けて、団体交渉において賞与支給予定額を提示した後、組合と協定書を締結するか、組合に異議がないことが確認された後に夏季賞与を支給していたこと、その結果、組合員よりも先に非組合員に対して夏季賞与が支給されたことがあったこと、平成30年においても、組合員よりも先に非組合員に夏季賞与が支給されたけれども、組合はこれに特段の異議を述べていなかったことが認められる。
本件についても、会社は、従前と同様の対応を予定していたところ、令和元年7月19日に組合から開催希望日を同月26日とする団体交渉の申入れを受けたため、これに応諾すべく、非組合員に対する賞与支給日である同月26日までに組合に対し賞与支給予定額を提示することを控えた結果、同日までに組合と賞与支給について協定書の締結等に至らず、夏季賞与を支給できなかったものと認められる。また、会社は、同月26日の団体交渉の際、あるいはその後においても、組合に対し賞与支給予定額を通知し、賞与を早期に支給するための団体交渉の開催を促すなどした上で、同年9月12日に夏季賞与を支給した事実も認められる。

2 以上の事実によれば、会社は、これまで組合から特段の異議もなく行われてきた夏季賞与支給についての手順に従って対応しようとした結果、組合員に対する支給が遅くなったものに過ぎないというべきである。・・・このような会社の姿勢からすれば、会社が、組合員に対する賞与支給時期を非組合員よりも殊更に遅らせたとは言い難い。
したがって、会社が、殊更に、本件行為に及んだと認めることはできない以上、本件行為が不合理であるとはいえない。

結果だけを見ると、組合員に対する不利益な取扱いのように見えますが、ご覧のとおり、そこには合理的な理由が認められるため、不当労働行為とは評価されませんでした。

組合員に対する不利益取扱いは、紛争になる可能性が高いので、日頃から顧問弁護士に相談する体制を整えておくことが肝要です。