解雇387 新型コロナウイルス感染対策として指示されていたマスク着用をしなかったこと等による解雇が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、新型コロナウイルス感染対策として指示されていたマスク着用をしなかったこと等による解雇が無効とされた事案を見ていきましょう。

近鉄住宅管理事件(大阪地裁令和4年12月5日・労判131号2頁)

【事案の概要】

本件は、分譲マンション、賃貸マンションの管理等を業とするY社の従業員であったXが、合意退職はしておらず、また、解雇は無効であるとして、未払賃金等を請求し、また、一方的な配置転換(労働条件変更)を迫り、これを拒否すれば自主退職するしかないと迫ったY社の行為及び解雇により法的保護に値する人格的利益を違法に侵害されたとして、不法行為に基づき、慰謝料等を請求した事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Xは、本件マンションで管理員として業務を遂行する際や、通勤の際に、日常的にマスクを着用していなかったことがうかがわれる。そうすると、Xは、本件マンションの管理員として職務を遂行する際に、使用者であるY社からの業務上の指示に従っていなかったことになる。
しかし、Xは過去にもY社から同様の行為について注意を受けていたというような事情はうかがわれないこと、潜在的には、(Xのマスク不着用を)連絡をした住民以外にもマスクを着用しないXについて不快感や不安感を抱いた本件マンションの住民がいたことがうかがわれるものの、現実にY社に寄せられた苦情は1件にとどまっていること、Xの行為が原因となって、本件マンションの管理に係る契約が解約されるというような事態は生じていないこと、E課長もXに対してマスク未着用に関する注意をしていないことを認めており、ほかに、Y社がXに対してマスク未着用に関する注意をしたことを認めるに足りる証拠もないこと、Xが新型コロナウイルスに感染したことで、本件マンションの住民あるいはY社内部において、いわゆるクラスターが発生したというような事態もうかがわれないことなどからすれば、新型コロナウイルス対策の不履行に関する一連のXの行動が規律違反に当たるとはいえるものの、同事情をもって、Xを解雇することが社会通念上相当であるとはまではいうことができない。

異論もあるかと思いますが、解雇は重すぎるというのが裁判所の判断です。

いきなり解雇をするのではなく、注意・指導を行うことの大切さがよくわかる事案です。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。