Daily Archives: 2023年7月26日

労働災害115 業務上の疾病該当性と退職扱い無効地位確認等請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、業務上の疾病該当性と退職扱い無効地位確認等請求に関する裁判例を見ていきましょう。

足立通信工業事件(東京地裁令和4年12月2日・労判ジャーナル134号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、Y社が休職期間満了を理由とする退職手続を執ったことについて、当該休職の原因は代表取締役であるB及び取締役会長であるCの療養中に執られたものであるから無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるほか、Y社に対しては債務不履行に基づき、B及びCに対しては不法行為及び取締役責任に基づき、長時間労働、B及びCの暴言、違法解雇、解雇撤回後のハラスメント等による慰謝料等の損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

退職扱い無効

【判例のポイント】

1 労働基準法19条1項の業務上の疾病に該当するためには、当該疾病の発病ないし悪化に業務起因性が認められる必要があるところ、Xは、遅くとも平成29年10月中旬頃までに、抑うつ状態ないし気分(感情)障害を発症したものと認めることができ、Xの上記抑うつ状態ないし気分(感情)障害の発症については、労災認定基準のうち「仕事量が著しく増加して時間外労働も大幅に増える(倍以上に増加し、1か月当たりおおむね100時間以上となる)などの状況になり、その後の業務に多大な労力を費やした(休憩・休日を確保するのが困難なほどの状態となった等を含む)」場合に該当する事情があったものであるから、Y社における長時間労働によって発症したものというべきであるから、業務とXに発症した疾病に因果関係がないとするY社らの主張は、いずれも採用することができず、Xは、なお業務上の疾病について治癒に至ったものとはいえず、本件退職手続は、無効というべきであるから、Xは、労働契約上の権利を有する地位にある

直近で長時間労働が認められる場合には、ほとんど例外なく労災が認定され、結果、休職期間満了に伴う退職処分は労基法19条1項により無効となります。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。