賃金266 就業規則の不利益変更の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、就業規則の不利益変更の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

恩賜財団済生会(山口総合病院)事件(山口地裁令和5年5月24日・労判ジャーナル137号12頁)

【事案の概要】

本件は、Y社設置のY病院に勤務している職員ら9名が、職員らに支給される賃金が、令和2年10月1日に就業規則及び給与規程が変更されたことにより、住宅手当及び扶養手当が減少したところ、職員らが、主位的には、上記就業規則等の変更は専ら人件費の削減を目的とするものであることを秘してされたため合理性がなく、予備的には労働契約法10条所定の諸事情に照らして合理性を有するとはいえず、いずれにせよ、同条により有効であるとはいえないから、上記変更は同法9条本文により無効であると主張して、Y社に対し、差額賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y病院においては、パートタイム・有期雇用労働法の趣旨に従い、非正規職員への手当の拡充を行うに際し、正規職員と非正規職員との間に格差を設けることの合理的説明が可能か否かの検討を迫られる中で、女性の就労促進及び若年層の確保という重要な課題を抱えるY病院の長期的な経営の観点から、人件費の増加抑制にも配慮しつつ手当の組換えを検討する高度の必要性があったところ(なお、職員らの月額賃金あるいは年収の減額率は高くても数%程度(5%を下回るもの)にとどまるから、就業規則の変更を行わないと使用者の事業が存続することができないというような極めて高度の必要性までは要しない)、本件変更により正規職員らが被る不利益の程度を低く抑えるべく検討・実施され、また、その検討過程において、本件組合の意見が一部参考にされるなど、本件変更への理解を求めて一定の協議ないし交渉が行われたということができるから、本件変更は合理的なものであると認められる。

ご覧のとおり、労働条件の不利益変更を行うのは、本当に大変です。

労働者の同意を得ようにも、後から真意に基づく同意でないと判断される可能性もあります。

気を付けましょう。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。