Monthly Archives: 8月 2026

本の紹介2262 英語力の核心(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

ショーン川上さんの本です。

帯にも書かれているとおり、「どう」言うかよりも「何を」言うか、にフォーカスした本です。

ある程度、英語が話せる人が読んだほうが、より効果的ではないかと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分を下げることで相手に合わせるやり方は、長期のグローバル関係では持続しにくいからです。尊敬は『相手に合わせた人』ではなく、『自分の軸を持った、私とは違う人』に集まりやすい。そして多様性のある環境では、軸のない同質化はむしろ『存在感の希薄化』として受け取られかねません。」(142頁)

日本人あるあるです。

過度な謙遜や奥ゆかしさは、ビジネスや交渉の場面においてはマイナスに働きます。

安易に同調するのではなく、自分の意見をしっかりと伝えられる訓練をしておく必要があります。

変わり映えのしないOne of themでは何も始まりません。

解雇442 調査を尽くさずに行われた懲戒処分(出勤停止)が無効かつ不法行為に当たるとされ、その後に行われた懲戒解雇には理由があり有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、調査を尽くさずに行われた懲戒処分(出勤停止)が無効かつ不法行為に当たるとされ、その後に行われた懲戒解雇には理由があり有効とされた事案を見ていきましょう。

公益財団法人東京都学校給食会事件(東京地裁令和7年7月3日・労経速2603号13頁)

【事案の概要】

Xは、期間の定めのない労働契約に基づきY社において勤務していた者であるが、Y社から、令和5年1月11日付けで、同月12日から同月31日までのうち土曜日及び日曜日を除く14日間を出勤停止とする旨の懲戒処分を受け、また、同年6月7日付けで、同日限りで免職(懲戒解雇)とする旨の懲戒処分を受けるとともに、予備的に同日限りで普通解雇する旨を告知された。
第1事件は、Xが、本件停職処分には懲戒事由に該当する理由がなく、客観的合理性や社会通念上の相当性も認められないから、同処分は権利の濫用として無効であり、不法行為にも当たると主張して、Y社に対して各請求をする事案である。
第2事件は、Xが、本件免職処分には懲戒事由に該当する理由がなく、客観的合理性や社会通念上の相当性も認められないから、同処分は権利の濫用として無効であり、本件予備的解雇についても同様に無効である上、本件免職処分等は不法行為にも当たると主張して、Y社に対し、各請求をする事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社がXに対してした令和5年1月11日付け出勤停止処分が無効であることを確認する。
2 Y社は、Xに対し、38万7624円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、20万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件免職処分の理由のうち中心的なものであると認められる本件各メールの送信行為については、取り分けY社の職員が休職に至った経緯という職員個人の高度なプライバシーに関する情報を部外者であるD事務局長に伝えた点において、重大な非違行為に当たる。
また、Xは、D事務局長のY社に対する干渉によってBと被告との間に確執が生じていることを認識していたにもかかわらず、本件各メールにおいて、職員が休職に至った経緯といったY社に対する攻撃材料となり得る情報をD事務局長に提供するとともに、C理事長やE事務局長がBに対する侮蔑的な発言を繰り返しており表向きの謝罪で解決とはいえない状態であるなど、D事務局長を助長するような記載をしている。このように、本件各メールの内容はY社とBとの対立をいっそう激しくさせかねないものであって、これらを送信したXの行為はY社に対する背信性の高いものであったといえる。
そして、Xが、Bへの出向を終えてY社に復帰した初日に、C理事長から外部情報(注:内部情報の誤りと思われる)を外部に一切出さないように指示されたにもかかわらず、その日のうちに、D事務局長に対してみずから本件メール〈1〉を送信し、また、その2日後にも本件メール〈2〉を送信していることからすれば、Y社からの指示や法人秩序を軽視するXの姿勢は顕著である。

2 Xは、以前、E事務局長に対する不適切な記載をしたファイルをY社の共有フォルダ内において管理していたとして前件懲戒処分を受けたことがある。Xは、その際、Y社から指導を受け、始末書を提出してE事務局長に対する振る舞い等について研さんを図る旨を述べていたにもかかわらず、本件メール〈2〉において再びE事務局長を誹謗中傷するような行動に及んでいる
また、本件降格処分を告げられた際のC理事長に対するXの発言についても、法人の代表者に対する態度としては不適切といわざるを得ない。これらの点においてもXの法人秩序の軽視には根深いものがある。

3 以上からすると、本件免職処分には客観的合理性が認められ、社会通念上も相当であるといえる。

タイトルのとおり、出勤停止処分については無効とされましたが、判例のポイントのとおり、免職処分については有効という判断です。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。

本の紹介2261 疑う力#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「自分の頭で考えないヤツは一生バカをみる!」と書かれています。

AIの普及によって、ほとんどの人は自分の頭で考えなくなっております。

今後、人間の存在価値がどのように変わっていくのか、とても興味があります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『常識』はいつだって、僕たちの自由な思考を縛ろうとする。この事実をスルーしてはいけない。鈍感になってはいけない。」(218頁)

「みんながそうしているから」という理由で、やりたくもないことに時間やお金を使うことほど無意味なことはありません。

もう無駄の極みです。

もっとも、自分の好きなように生き抜くためには、「嫌われる勇気」が必要です。

全員から好かれようとすると、さまざまなお付き合いやしがらみによって、かんじがらめになります。

嫌なことを嫌と言えるためには、自分に力をつけることと嫌われる勇気を持つことです。

たったこれだけで幸せ度は爆上がりします。

解雇441 医療従事者としての適格性を欠くとして行われた内定取り消しを有効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、医療従事者としての適格性を欠くとして行われた内定取り消しを有効とした事案を見ていきましょう。

Y眼科事件(東京地裁令和7年7月30日・労経速2603号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から採用内定を得て、これを取り消された亡Aの父母であるXらが、Y社に対し、以下の各金員をそれぞれ法定相続分である各2分の1の割合で相続したとして、上記相続分に対応した金員の各支払を求める事案である。
(1)上記内定取消しが無効であると主張して、労働契約に基づき、令和4年9月から同年12月まで、約定(毎月20日締め毎月25日支払)の支払日限り、各賃金(基本給月額相当額。ただし、令和4年12月分については9万0322円)+遅延損害金
(2)上記内定取消しが不法行為を構成すると主張して、不法行為に基づき、慰謝料200万円+遅延損害金

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件採用内定における就労の始期は令和4年8月2日であったところ、Y社は、要旨、同月1日、亡Aに対し、これを同月15日にしたい旨伝えたものの、亡Aがこれに対して不合理な対応に終始したことから、亡Aにおいて医療従事者としての適格性に著しく欠け、また、普通解雇事由を定めた就業規則47条1項4号に該当するものと主張する。

2 Y社が亡Aに対し、上記のとおり伝えた根拠は、亡Aにおける新型コロナウイルス感染症の発症日を同月1日としていることにあるところ、亡Aにおいて、同年7月30日に実施したPCR検査の結果が陰性だったものの、同年8月1日に実施した抗原検査キットによる検査の結果では陽性となっている。同年7月30日の時点でPCR検査を実施していたということは、亡Aにおいて同日頃には何らかの症状が出ていたことがうかがわれるが(現に亡Aは令和4年8月1日に受診したクリニックにおいて同年7月27日からの症状として咽頭痛等を訴えている。)、同月30日に実施したPCR検査の結果が陰性であったことから、陽性の反応が出た同年8月1日より前の日を発症日と扱うことが可能かは明らかではなかったといえる。
そして、厚生労働省のホームページにおいて、その頃、「発症日が明らかでない場合には、陽性が確定した検体の採取日とする。」とされていたことからすれば、Y社が同年8月1日を発症日としたことには合理性があったということができる。
そして、同省のホームページにおいて、「症状がある場合は10日間」「が経過するまでは、感染リスクがあります。」「高齢者等ハイリスク者との接触、ハイリスク施設への不要不急の訪問」「を避けること」とされ、療養期間に関し、「症状が出た日から7日間以上経過」などとされ、他の自治体のホームページにおいても、「療養期間:発症日から10日間が経過」などとされ、亡A代理人自身、本件内定取消し後の交渉経緯において、10日間を一般的な療養期間としていたことからすれば、Y社が発症日である同日から10日間の療養期間を要すると考えていたことにも合理性があったということができる。
Y社が亡Aに伝えた内容は、就労の始期を同月15日とするものであるところ、上記発症日である同月1日から10日経過後の同月11日が本件眼科における同月10日から14日までの夏季休暇期間に該当してしまうことからすれば、Y社による上記伝達内容は、合理性を有するものであったということができる。

コロナ(に限りませんが)、このような現象に対し、どの程度、センシティブかは、人によって大きく異なります。

これだけ猛暑の夏ですら、日中マスクを着用されている方も散見される中で、本件同様の問題について全員が納得できる労務管理は存在しないのでしょう。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。

本の紹介2260 カネに洗脳されるな!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

生きていくことの厳しさを感じることができる本です。

騙し合い、奪い合いの社会において、搾取されないために必要なことが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

条件が揃わないと動き出したらいけない、リスクがあるという洗脳にかかっている。それは自分で解かない事には、どうにもならない。不満があっても、変えようとしない。現状を維持する方がラクだから、そうしているだけ。大きなチャンスを失っていたり、誰かに不当に搾取されたりしているのに、じっと耐えている。『いろいろ不満だけど解消する方法がない』と、自分の不遇を環境のせいにして、本当はただラクしたいだけなのに。」(183~184頁)

みなさん、いろんなことに不満があるのでしょうね。

不満や愚痴や悪口ばかりを言っていると、不思議なことに顔つきもだんだんそういう顔になってきます。

不満を言っているうちに人生は終わってしまいます。

居酒屋で不満を言っても、状況は何一つ変わらないことは、自分が一番よくわかっています。

他人は変えられない。

変えられるのは、自分だけ。

そんなことはみんなわかっているけど、自分を変えられないのです。

労働時間125 就業規則が実質的に周知されていなかったことから、同規則が定める変形労働事件制は適用されないとした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、就業規則が実質的に周知されていなかったことから、同規則が定める変形労働事件制は適用されないとした事案を見ていきましょう。

三和エンジニアリング事件(東京地裁令和7年7月3日・労経速2603号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結して勤務していたXが、Y社に対し、上記労働契約に基づき、〈1〉令和2年3月分から令和5年1月分までの時間外労働等に対する賃金合計636万8779円及びこれに対する遅延損害金の支払、並びに、〈2〉労基法114条が定める付加金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、649万9474円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、本件事務所において勤務中、首都高速道路で事故等が発生した場合には休憩時間中であっても出動を命ぜられて緊急点検業務に従事していた。また、休憩時間の前に出動し引き続き休憩時間中も緊急点検業務に従事したこともあった。なお、休憩時間中に保安規制調査業務に従事していたこともあった
これらの事情を踏まえると、Xは、休憩時間中においても、労働契約に基づく義務として、出動命令に対して直ちに緊急点検業務等に就くことが義務付けられていたといえる。したがって、休憩時間については、全体として、労働からの解放が保障されていたとはいえず、Y社の指揮命令下に置かれていたものであり、労基法上の労働時間に当たるというべきである。

2 変形労働時間制は、労基法が定める労働時間規制の例外として、使用者が同法32条所定の労働時間を超えて労働者を労働させることを認めるものであるから、新たに1か月単位の変形労働時間制を導入した本件改定は労働条件の不利益変更に当たる。したがって、これが原告に適用されるためには、労契法10条が定める周知性が認められることが必要となる。
この点、本件事務所においては、就業規則等が綴られたファイルが被告の担当者のロッカー内に保管されていたことが認められるところ、Y社は、上記担当者が他の従業員に対して就業規則等の保管場所や就業規則等を自由に閲覧することができる旨を口頭で伝達していたと主張し、Y社の従業員であるEもこれに沿う供述をしている。
しかしながら、Dは、本件事務所の担当者に対して就業規則等の保管場所や保管方法について特段の指示はしておらず、本件事務所における就業規則等の保管場所も把握していなかったことからすれば、本件事務所における就業規則等の保管場所や保管方法については基本的に担当者に一任されていたと認められる。
また、Y社は、Xから就業規則の周知方法について尋ねられた際も、依頼に対して個別に提示している旨を回答しており、本件事務所に備え付けている旨やその保管場所等を回答することはしていない。これらの事情に照らすと、本件事務所における就業規則等の保管が従業員に対する周知という趣旨で行われていたとは認められないから、本件事務所で勤務する従業員に対して就業規則等の保管場所やこれを自由に閲覧することができる旨に関する周知が徹底されていたかについては疑問が残るといわざるを得ない。
そうすると、Xを含む本件事務所において勤務する従業員全員に対して就業規則等の保管場所やこれを自由に閲覧することができる旨について漏れなく口頭で伝達されていたとするEの供述を全面的に採用するのは難しく、上記事実を認めることはできないというべきである。
以上のとおり、本件では、本件規定等が本件事務所の担当者のロッカーにおいて保管されていたことは認められるものの、そのことや上記のロッカー内に保管されている本件規定等を他の従業員も自由に見ることができる旨がXに対しても告知されていたとは認められない。

就業規則の周知は、基本中の基本ですが、しっかり周知されていない会社も散見されます。気を付けましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2259 彼はそれを「賢者の投資術」と言った(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

「インデックス投資」「ほったらかし投資」を推奨する本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お金を増やすことばかりに集中していた若いころには想像もしなかったが、ある程度の資産を築いた後の『使い方』こそが、実は人生の満足度を大きく左右することがわかってきた。ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンの研究によれば、年収が一定水準を超えると、お金の『量』よりも『使い方』が幸福度に与える影響が大きくなるという。」(224頁)

「量」も「使い方」もどちらも大切です。

これはお金だけでなく、時間も同じです。

毎日の時間の使い方が、自分に対する「投資」なのか、それとも単なる「消費」なのか。

また、日々の生活の中で、いかに自己投資の時間を捻出するかも重要です。

時間的にも経済的にも余裕がある人はさておき、いかにして自己投資のためのお金と時間を捻出するかが、目下の課題かと思います。

いずれにせよ、日々のほんの小さな差の集積が、人生(特に後半戦)に多大な影響を及ぼすことは明白ですので、人生のできるだけ早い段階で自己投資の習慣を身につけると、後が楽です。

有期労働契約132 非常勤講師に対する雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、非常勤講師に対する雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

学校法人青山学院事件(東京地裁令和7年7月31日・労判1342号85頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期労働契約を締結し、非常勤講師として勤務していたXが、Y社から令和6年4月1日以降の労働契約の更新を拒絶されたため、労契法19条に基づき、労働契約は更新されたと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、同日以降の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社において非常勤講師は、専任教員が担当できない授業を担当するために雇用されている。本件雇止めは、新規採用された特別教諭がクラス担任を担当しないことにより、非常勤講師に担当させるべきコマ数が減少したことを理由とするものであるから、Y社が非常勤講師を採用した目的に沿うものであって、合理性が認められる
また、非常勤講師の報酬は、担当するコマ数によるところ、非常勤講師が担当する8コマは一人の非常勤講師で担当できること、Hは被告高等部及び中等部でのみ勤務しており、他の学校では勤務していないと述べていたこと、Y社においては1日2コマだけのために勤務する非常勤講師を複数雇用するという状況は、非常勤講師にとっても割に合わないものと考えており、Xにおいてもそのような考えを持っていると認識していたこと、授業内容の統一性や質の確保、専任教員の負担軽減の観点からすると、複数の非常勤講師を雇用するよりも必要最小限の人数で実績のある非常勤講師に依頼することには相応の合理性があると考えられることなどからすれば、非常勤講師を一名のみ雇用するという判断も不合理とはいえない。
さらに、Y社高等部において3年生の授業はなるべく専任教員が担当する方針であるところ、2年生の科目である公共は、従前からHが担当していたこと、Hは約20年以上前からY社に雇用されており、労契法18条1項に基づく期限の定めのない労働契約の申込みをする権利を有していたこと、Xは在職中、複数のトラブルを起こしたが、Hについてはそのような事実は認められないことからすれば、XではなくHの雇用を継続したことも十分な理由があるというべきである。
本件契約更新の合理的期待の程度が高いとはいえないことも踏まえると、本件雇止めは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる。

非常勤講師の性質等から雇止めの合理性を導いています。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

本の紹介2258 市場サイクルを極める(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

投資に関する本ですが、人生全般に当てはまる内容です。

非常に示唆に富んでおり、勉強になります。

すべてはサイクルの中で上がったり下がったりしているのだとわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ウォーレン・バフェットいわく、『他人が慎重さを欠いているときほど、自分たちは慎重に事を進めねばならない』。他の人たちが気分を高揚させているときには、恐怖心を抱くべきだ。そして、他の人たちが怖気づいているときには、積極果敢になるべきなのだ。」(282頁)

言うは易く行うは難し。

もっとも、この感覚を持っていることで、心構えが大きく異なります。

これは投資に限った話ではなく、ビジネス全般に言えることです。

賃金303 年俸制の従業員の賃金について、客観的に合理的な年俸制の決定方法が合意されているとはいえないとして、使用者による一方的な賃金減額を否定した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、年俸制の従業員の賃金について、客観的に合理的な年俸制の決定方法が合意されているとはいえないとして、使用者による一方的な賃金減額を否定した事案を見ていきましょう。

フォーラムエイト事件(東京地裁令和7年6月5日・労経速2601号12頁)

【事案の概要】

本訴は、Y社との間で雇用契約を締結し、就労していたXが、Y社に対し、〈1〉Y社が、Xの給与につき、令和2年7月1日付けで、従前の年俸800万円から年俸650万円に改定したのは、違法な減額であるとして、Y社に対し、同年8月分から同年12月分まで賃金不足額として各月12万5000円+遅延損害金の支払を求めるとともに、〈2〉Y社がXに対し、令和2年7月1日に上記賃金の減額を行ったこと、同年12月9日に退職勧奨を行ったこと、令和3年6月21日に総合職から一般職に降格させるとともに、年俸を650万円から480万円に減額したこと、同年7月6日にNへの転勤及び営業職への変更を命じたことは、いずれも違法・不当であり、不法行為を構成するとして、Y社に対し、慰謝料として700万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

反訴は、Y社が、Xに対し、不当利得返還請求権に基づき、令和4年7月31日までにY社が立替払を行った原告の社会保険料等(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険、雇用保険及び住民税をいう。以下同じ。)及び勤怠控除すべき賃金の合計45万7200円の支払+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、62万5000円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、110万円+遅延損害金を支払え。
3 Xは、Y社に対し、45万7200円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件雇用契約にかかる雇用契約書には、「給与の改定は、原則として7月と1月に実施する。ただし、改定が実施されない場合は上記年俸を継続して適用する。」(以下「本件給与改定合意」という。)とされているほかに、同書面及び本件就業規則上も、年俸額決定のための成果・業績評価基準、年俸額決定手続、減額の限界の有無等具体的な定めが置かれていない
賃金が労働条件の中でも最も重要なものの一つであり、このような労働条件は、労働者及び使用者が対等の立場で合意して決めるべき事項であること(労働契約法3条、労働基準法115条、89条参照)に照らすと、本件給与改定合意は、XとY社が客観的で合理的な年俸額の決定方法を合意した場合に、これに従って、Y社にXの年俸額を決定する権限を付与することを合意したものと解するのが相当である。
Y社は、力量基準レベルに基づいて各従業員の力量・成果を各グループ長が査定し、100点を最高点として評価点を付け、従業員を順位付けし、かかる人事評価の序列と年収(諸手当、賞与等を加えたもの)が可能な限り一致するよう均衡を図り、給与額を決定するという方法をとっていたものである。力量基準レベルは、求められる力量が3段階で示されたものであり、査定する際の考慮要素は示されているものの、これがどのように評価されて点数化されるのかは明らかでなく、また、どのような場合に、どの程度の金額が減額されるのかといった客観的な基準が示されたものでもない
Y社は、Xについて、その査定の序列とXの年収の乖離が激しいとして、Xの年収を減額しているが、序列とそれに見合う年収の乖離率といった基準があるとも認められないし、そもそもその序列は新入社員を含めた全社員を一律に並べるというものであって、そのような序列とXの年収の乖離を見るということ自体の合理性も疑問がある。
さらに、減額の限界も設定されておらず、減額の幅が大きくなりすぎないようY社において事実上配慮して給与額を決定するというのであり、制度的に恣意性が排除されることが担保されているものともいえない。
そうすると、XとY社との間で、客観的で合理的な年俸額の決定方法が合意されているとはいえないから、本件給与改定合意をもってY社がXの年俸額を一方的に決定する権限を有しているとは認められない
したがって、Xの同意なくされた本件賃金減額〈1〉は無効である。
また、本件賃金減額〈1〉は、年俸を800万円から650万円とし、減額の幅は18.75%に及び、労働基準法91条が定める減給の制裁についての限界をも大きく超えるものであることからしても、無効であるというべきである。

2 本件賃金減額〈1〉は無効であり、その減額の幅は18.75%に及び、Xの生活を脅かす重大なものであったといえ、不法行為に当たるというべきである。Xの精神的苦痛は、減額分の給与が支払われることにより相当程度慰謝されるものといえることのほか、本件に顕れた一切の事情を考慮し、かかる不法行為に基づく精神的苦痛を慰謝するために必要な金額は、10万円と認めるのが相当である。

年俸制を採用する際の留意点がとてもわかりやすく記載されています。

本件裁判例が求める程度の具体的な年俸制度の内容を取り決めていないケースも散見されますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。