解雇441 医療従事者としての適格性を欠くとして行われた内定取り消しを有効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、医療従事者としての適格性を欠くとして行われた内定取り消しを有効とした事案を見ていきましょう。

Y眼科事件(東京地裁令和7年7月30日・労経速2603号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から採用内定を得て、これを取り消された亡Aの父母であるXらが、Y社に対し、以下の各金員をそれぞれ法定相続分である各2分の1の割合で相続したとして、上記相続分に対応した金員の各支払を求める事案である。
(1)上記内定取消しが無効であると主張して、労働契約に基づき、令和4年9月から同年12月まで、約定(毎月20日締め毎月25日支払)の支払日限り、各賃金(基本給月額相当額。ただし、令和4年12月分については9万0322円)+遅延損害金
(2)上記内定取消しが不法行為を構成すると主張して、不法行為に基づき、慰謝料200万円+遅延損害金

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件採用内定における就労の始期は令和4年8月2日であったところ、Y社は、要旨、同月1日、亡Aに対し、これを同月15日にしたい旨伝えたものの、亡Aがこれに対して不合理な対応に終始したことから、亡Aにおいて医療従事者としての適格性に著しく欠け、また、普通解雇事由を定めた就業規則47条1項4号に該当するものと主張する。

2 Y社が亡Aに対し、上記のとおり伝えた根拠は、亡Aにおける新型コロナウイルス感染症の発症日を同月1日としていることにあるところ、亡Aにおいて、同年7月30日に実施したPCR検査の結果が陰性だったものの、同年8月1日に実施した抗原検査キットによる検査の結果では陽性となっている。同年7月30日の時点でPCR検査を実施していたということは、亡Aにおいて同日頃には何らかの症状が出ていたことがうかがわれるが(現に亡Aは令和4年8月1日に受診したクリニックにおいて同年7月27日からの症状として咽頭痛等を訴えている。)、同月30日に実施したPCR検査の結果が陰性であったことから、陽性の反応が出た同年8月1日より前の日を発症日と扱うことが可能かは明らかではなかったといえる。
そして、厚生労働省のホームページにおいて、その頃、「発症日が明らかでない場合には、陽性が確定した検体の採取日とする。」とされていたことからすれば、Y社が同年8月1日を発症日としたことには合理性があったということができる。
そして、同省のホームページにおいて、「症状がある場合は10日間」「が経過するまでは、感染リスクがあります。」「高齢者等ハイリスク者との接触、ハイリスク施設への不要不急の訪問」「を避けること」とされ、療養期間に関し、「症状が出た日から7日間以上経過」などとされ、他の自治体のホームページにおいても、「療養期間:発症日から10日間が経過」などとされ、亡A代理人自身、本件内定取消し後の交渉経緯において、10日間を一般的な療養期間としていたことからすれば、Y社が発症日である同日から10日間の療養期間を要すると考えていたことにも合理性があったということができる。
Y社が亡Aに伝えた内容は、就労の始期を同月15日とするものであるところ、上記発症日である同月1日から10日経過後の同月11日が本件眼科における同月10日から14日までの夏季休暇期間に該当してしまうことからすれば、Y社による上記伝達内容は、合理性を有するものであったということができる。

コロナ(に限りませんが)、このような現象に対し、どの程度、センシティブかは、人によって大きく異なります。

これだけ猛暑の夏ですら、日中マスクを着用されている方も散見される中で、本件同様の問題について全員が納得できる労務管理は存在しないのでしょう。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。