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解雇444 接待交際費の不正請求を多数回にわたって繰り返した従業員の普通解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、接待交際費の不正請求を多数回にわたって繰り返した従業員の普通解雇の有効性について見ていきましょう。

テクトロン事件(東京地裁令和7年7月18日・労経速2605号3頁)

【事案の概要】

1 第1事件
ア Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社に対し、以下の各請求をする事案である。
Y社が令和3年9月6日付けで行った懲戒解雇が無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位の確認
イ 民法536条2項に基づき、解雇日以降の未払賃金21万4400円+遅延損害金
ウ 民法536条2項に基づき、主位的には、令和3年12月以降の賞与として毎年6月末日限り42万1333円及び毎年12月末日限り141万6500円、予備的には、同年12月以降の賞与として毎年12月末日限り67万3000円+遅延損害金の支払
エ Y社が令和3年6月1日付けで行った配転命令及びこれに伴う役職手当の減額はいずれも無効であるとして、営業推進部長としての賃金体系上の地位の確認
オ 役職手当の減額分として令和3年7月分及び8月分の差額賃金の各1万円(合計2万円)+遅延損害金の支払
カ 在職中の令和元年9月1日から令和2年3月31日までの時間外労働、深夜労働及び休日労働に対する未払割増賃金合計85万0850円+遅延損害金並びに同年4月1日から令和3年9月6日までの時間外労働等に対する未払割増賃金合計112万8246円+遅延損害金
キ 前記カの割増賃金の不払につき、労基法114条に基づく付加金126万5896円の支払+遅延損害金
ク 〈1〉Y社が令和3年5月14日付けでXに譴責処分を行い、さらにX配転命令及びX懲戒解雇を行ったこと、〈2〉Y社の取締役らがA社の取締役らにXが接待交際費を不正受給したこと等を伝えたこと、〈3〉Y社の取締役がB社の代表取締役に対し、Xが接待交際費を不正受給したために懲戒解雇した旨を伝え、これが伝播したことについて、〈1〉ないし〈3〉がそれぞれ不法行為に当たると主張して、民法715条ないし709条に基づき、〈1〉〈2〉の損害として慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の賠償並びに〈3〉の損害として慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の賠償+遅延損害金の支払
を求める事案である。
2 第2事件
Y社が、Xらに対し、Xらが共謀して、虚偽の事実を申告した請求により実態のない接待交際費を被告に支払わせたことが共同不法行為に当たるとして、民法709条、719条1項に基づき、連帯して253万8154円の損害賠償+遅延損害金の支払
を求める事案である。
3 第3事件
Y社との間で労働契約を締結していたZが、Y社に対し、以下の各請求をする事案である。
ア Y社が令和3年9月22日付けで行った懲戒解雇が無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位の確認
イ 民法536条2項に基づき、解雇日以降の未払賃金37万0700円及び令和3年11月以降の賃金として毎月28日限り月額40万9000円+並びに遅延損害金の支払
ウ 民法536条2項に基づき、主位的には、令和3年12月以降の賞与として毎年6月末日限り45万1000円及び毎年12月末日限り115万5000円、予備的には、同年12月以降の賞与として毎年12月末日限り59万円+遅延損害金の支払(前記第1の3(5))
エ Y社が令和3年6月1日付けで行った配転命令及びこれに伴う役職手当の減額はいずれも無効であるとして、次長としての賃金体系上の地位の確認
オ 役職手当の減額分として令和3年7月分から9月分までの差額賃金の各1万円(合計3万円)+遅延損害金の支払
カ 在職中の令和元年11月21日から令和2年3月20日までの時間外労働等に対する未払割増賃金合計47万2237円+遅延損害金並びに同月21日から令和3年9月22日までの時間外労働等に対する未払割増賃金合計163万5219円+遅延損害金の支払
キ 前記カの割増賃金の不払につき、労基法114条に基づく付加金163万5219円の支払+遅延損害金
ク Y社が令和3年5月14日付けで乙山に譴責処分を行い、さらにZ配転命令及びZ懲戒解雇を行ったことは不法行為に当たると主張して、慰謝料150万円及び弁護士費用15万円の賠償+遅延損害金(始期は不法行為以後の日)の支払

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、2万円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Zに対し、3万円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、5万5000円+遅延損害金を支払え。
4 Xは、Y社に対し、64万2423円+遅延損害金を支払え。
5 Zは、Y社に対し、39万3155円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 D取締役は、B社の代表取締役に対し、Xは接待交際費の不正受給により懲戒解雇にしたことを伝えた事実が認められる。
B社は、Y社が導入していたMの電子カルテシステムのサポート体制等についてY社からヒアリングをする目的で面談を打診したものと認められるところ、そのような面談の趣旨やY社の立場からすれば、Y社としてはB社に対し、Y社のガバナンスやサポート体制に問題がないことを説明する必要があったと認められるが、その限度で足りたというべきである。
仮に、サポート体制への懸念に対する対応として、多数の退職者が生じた経緯にY社の責めに帰すべき事情がなかったことを説明する必要があったとしても、B社に対して、Xという個人名を挙げて同人が接待交際費の不正受給により懲戒解雇になった事実まで伝える業務上の必要性は見出し難い。B社において、Y社との面談前にXの接待交際費の不正受給や懲戒解雇の事実まで認識していたと認めるに足りる証拠はなく、これらの事実が一般には第三者に公表されることを欲しない個人情報であることや、現にかかる事実がB社からXの雇用主であった株式会社Jに伝播したことにも鑑みれば、D取締役の上記伝達行為は、業務行為としても相当ということはできず、少なくともXに対するプライバシー侵害の不法行為を構成するというべきである。
また、D取締役は、Y社の取締役の地位にあるが、代表者として包括的な権限を有しているわけではなく、B社への伝達行為もY社の事実上の指揮監督の下でその業務を行うについてされたものというのが相当であるから、D取締役によるプライバシー侵害の不法行為について、Y社は民法715条に基づく使用者責任を負うというべきである。
したがって、B社に対する伝達行為についてプライバシー侵害による不法行為が成立し、Y社は民法715条に基づく責任を負うが、D取締役による伝達行為の態様や、伝達した事実の内容が限定的であること等の事情も考慮すれば、Xが被った精神的苦痛を慰謝するための金額としては、5万円とするのが相当である。

2 Xらは、記入した日付に接待を行った事実がないにもかかわらず、虚偽の接待の事実を経費申請書に記載して接待交際費の請求を行い、Y社から相当額の支払をさせたものであって、これらの行為はY社に対する詐欺を構成し、故意によってY社の財産を侵害したものというべきである。
他方、Y社は、平成30年1月31日から令和3年8月2日までの間、Xらが、C及びIとともに4名で共謀の上、継続して、Y社に対して、虚偽の接待交際費の請求を行っており、かかる行為が共同不法行為に該当すると主張する。
たしかに、Xらは、平成30年1月頃から、C及びIとの間において、メールやLINEメッセージを通じて接待交際費に関するやりとりをしており、その中には、接待交際費の経費申請の内容をあらかじめ情報共有し、重複や矛盾が生じないように口裏合わせをしているかのように受け取れる内容も含まれていることが認められる。
しかし、かかるメールやLINEメッセージのやりとりのみをもって、別紙3のX非違行為及び別紙4のZ非違行為の個々の不正請求行為について、Xら両名ないしCやIとの間において、具体的な共謀があったと認めるには足りないし、Xらがそれぞれ個別に接待交際費を請求し、支払を受ける行為に関連共同性があったとも認め難い

金額の多寡はさておき、上記判例のポイント1は注意しましょう。

意識しておかないとやってしまいがちですから。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。