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メンタルヘルス19 休職期間中に提出した退職願による意思表示につき、錯誤取消しを認めなかった事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、休職期間中に提出した退職願による意思表示につき、錯誤取消しを認めなかった事案を見ていきましょう。

マックスグループ事件(東京地裁令和7年7月30日・労経速2605号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、休職中であったXが、休職事由が消滅しており、また、退職願を提出したが、これが辞職の意思表示又は合意退職の申込みのいずれであったとしても、錯誤があったから取り消すとして、Y社に対し、〈1〉Xが雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、〈2〉賃金請求権に基づき、令和5年12月1日から本判決確定の日まで毎月末日限り、25万6750円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xについては、令和5年11月13日付けで、うつ病の症状が改善したため、同月14日より就労再開可能である旨の診断書が作成されているものの、同年12月には、同診断書を作成した医師によって、同診断書で就労再開可能とされている日のわずか2週間後の同年11月28日から同年12月24日までうつ病で就労困難とする旨の「健康保険傷病手当金支給申請書(療養担当者記入用)」が作成されている。
その上、Xは、令和2年頃から、心身症、うつ病等を理由として欠勤・休職を繰り返しており、令和5年6月、体調不良で連続して有給休暇を取得し、Y社に対し、同月30日付けでうつ病と診断された旨の診断書を提出し、同年7月も、21日以降、体調不良で連続して欠勤し(一部有給休暇の取得あり)、同年8月30日、出勤し、同年9月も、体調不良を理由として4日欠勤し、2日早退し、同年10月も、体調不良を理由として5日欠勤しており、同年においても、出勤と多数回にわたり出勤しないこと(欠勤、有給休暇の取得)を繰り返している状況にある。
これらのことからすれば、同年10月30日に休職となってからわずか2週間しか経たない同年11月14日の時点において、Xが従前の職務を通常程度に行える健康状態になったとはいえないし、また、Xを当初軽易作業に就かせればほどなく従前の職務を通常程度に行える健康状態になったともいえない。そして、上記のXの状態からして、Xが労務の提供をすることができるような配置される現実的可能性があると認められる他の業務があったとも認められない。
以上によれば、令和5年11月14日時点で、Xについて休職事由が消滅していたとは認められないし、また、その後、Xの退職願の提出までの間に、Xについて休職事由が消滅していたことを認めるに足りる証拠はない。

2 Xは、令和5年10月30日から休職となっていたところ、同年11月29日のC本部長及びBとの面談において、〈1〉週3日(1日4時間)の時短勤務、〈2〉他部署に異動した上で週3日(1日4時間)の時短勤務、〈3〉Xの意思に基づく退職の3つの選択肢を示され、一旦は、令和6年1月から週3日(1日4時間)の時短勤務で勤務に復帰することとなった。
しかし、Xは、フルタイムで復職できるようになるまで休職を延長することを希望するようになったが、C本部長からは、上記〈1〉から〈3〉までの選択肢の中から決めるよう伝えられ、また、Bからは、過去の勤務の状況等を鑑みて時短勤務での復職は必須である旨伝えられている。これらのやり取りにおいて、C本部長やBは、休職期間を延長しても直ちにフルタイムでの復職は困難で、まずは時短勤務で様子を見ることが必須である旨を伝えているにすぎず、休職期間の延長自体が不可能であるとは伝えていない。
また、Xは、過去に休職をしたことがあり、令和5年7月31日には、C本部長に対し、休職期間について尋ねていることもあり、休職期間について、一定の知識を有していたことがうかがわれるところ、同年12月のC本部長やBとのやり取りにおいては、休職期間について尋ねることはしていない。これらのことからすれば、Xは、休職期間が令和6年1月9日までで延長することができないと誤解していた旨陳述しているが、その陳述を裏付ける証拠はなく、これを採用することはできず、Xが引き続き休職することができないとの錯誤に陥っていたと認めるに足りる証拠はない

上記判例のポイント1のようなケースは決して珍しくありません。

そのため、裁判所は、診断書の記載内容のみから復職の可否を判断することはありません。

使用者としていかに対応すべきかについては、顧問弁護士の助言の下に判断するのが賢明です。