賃金299 退職金にかかる支給制限・支給日規定の不利益変更を無効とする一方、賃金減額合意を有効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、退職金にかかる支給制限・支給日規定の不利益変更を無効とする一方、賃金減額合意を有効とした事案について見ていきましょう。

ジベック事件(東京地裁令和7年3月31日・労経速2593号41頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、〈1〉労働契約に基づく退職金(功労一時金)請求として、372万2400円+遅延損害金の支払を求めるとともに、〈2〉XとY社との間の賃金減額合意が無効であるとして、労働契約に基づく賃金請求として、未払賃金合計79万9200円+遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、372万2400円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 旧支給制限規定は、「退職後に懲戒解雇事由に該当する行為が判明した」場合をその対象とするものであるが、これは、従業員が在職中に行った行為が懲戒解雇事由に該当することが当該従業員の退職後に判明した場合をいうものと解されるから、従業員が退職後に行った行為(誓約事項違反)を支給制限の対象に加える改正支給制限規定は、労働条件を労働者に不利益に変更するものということができる。
また、その不利益の程度は、功労一時金の支給制限の対象を従業員の退職後の行為にまで拡大し、それに該当した場合には、原則として功労一時金の全部を支払わないとするものであるから、労働者の受ける不利益は、極めて大きいということができる。なお、その変更により不利益を受ける従業員に対し、不利益を軽減するための措置が講じられたとは認められない
Y社は、従業員代表から令和3年改正規程への変更につき異議がない旨の意見書の提出を受けているものの、従業員代表の選出方法(従業員代表の意見書には立候補による選出である旨が記載されている。)や従業員代表への説明内容、交渉経過等は具体的に明らかでないし、従業員に対する説明会等が行われたなどの事情もうかがえない。そうすると、従業員代表の意見書の提出がされたことをもって、従業員に対し、変更による不利益等に関する説明や意見聴取が十分に行われたとは認められない。
以上からすれば、Y社においては、平成29年以降、J社によるBグループの従業員に対する引き抜き及びそれに伴うY社保有情報の流出を警戒する状況が継続しており、そうした事態に対応する必要から令和3年改正規程による労働条件の変更がされたものといえ、相応の必要性があり、改正支給制限規定の内容も一定の相当性を認め得ることを勘案しても、労働者が上記の不利益変更を許容すべきほどの事情があったということはできず、改正支給制限規定への変更が合理的であるとはいえない
したがって、改正支給制限規定への変更は、無効である。

2 Xの年俸総額が減額とされたのは、Xの本件報告指示違反を原因とする責任範囲の縮小やXの査定結果の低下によるものであり、相当な理由があったといえるほか、その減額幅も不相当であるとまではいえない(なお、上記前提事実のとおり、基本給は減額されておらず、主に調整時間外手当及び深夜調整手当が減額されているところ、Xの責任範囲が縮小されていることからすれば、時間外労働の時間も相応に減少するものと考えられる。)。また、Xも減額理由を理解した上で本件賃金減額合意をしたものといえる
以上からすれば、本件賃金減額合意は、Xの自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由があったと認められる。

上記判例のポイント1はしっかりと理解しておきましょう。

賃金や退職金の不利益変更はそう簡単にはできませんのでご注意を。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。