メンタルヘルス20 休職期間満了時点では、復職要件を満たしておらず、休職期間満了日からの賃金請求を棄却した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、休職期間満了時点では、復職要件を満たしておらず、休職期間満了日からの賃金請求を棄却した事案を見ていきましょう。

トヨテック事件(東京地裁令和7年8月6日・労経速2607号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、休職していたXが、令和2年12月7日時点で、従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したにもかかわらず、Y社は、Xを令和3年9月14日まで復職させておらず、Y社は、令和2年12月7日から令和3年9月13日までの期間について、民法536条2項に基づき、賃金の支払義務を負うとして、雇用契約に基づき、同期間の賃金384万3535円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、在宅勤務規程3条1項の在宅勤務対象者に該当せず、また、Xは、かつて、令和2年4月8日以降、リモートワークをしていたが、これは、あくまでコロナ禍における緊急事態宣言を受けた緊急事態時における例外的な措置にすぎないものと認められるため、Xが従前の職務を通常程度に行える健康状態になるか、当初軽易作業に就かせればほどなく従前の職務を通常程度に行える健康状態になったといえるためには、Xが出社できる状態にあったことが必要である。

2 Xは、障害者に対する合理的配慮の観点から、休職事由の消滅の判断において、出社の可否は考慮すべきではないと主張する。
しかしながら、Xは在宅勤務規程3条1項の在宅勤務対象者に該当しない以上、障害者に対する合理的配慮の必要性を踏まえても、Xが出社できる状態にあったといえなければ、休職事由の消滅は認められないというべきであり、Xの主張は理由がない。
令和2年11月26日付けの本件診断書では、Xについて、片麻痺があるため、長時間の歩行や満員電車でのAからBまでの通勤は困難であるとされていることから、Xは、同年12月7日の時点において、公共交通機関を使用しての出社は困難であったと認められる。
そして、Xは、令和3年3月29日、Y社に対し、自動車通勤を認めてほしい旨のメールを送信しているが、Y社は、自動車関連の事業を営んでおり、運転による過労や事故の危険を考慮し、安全配慮上万全を期すため、自動車通勤を認めていないところ、Y社の自動車通勤の禁止の理由は不合理とはいえないし、Xは、足に傷病を抱えており、Y社が事故の危険性をより慮るのも不合理とはいえない
さらに、Y社は、通勤ラッシュの時間帯を避けた時短勤務の許可等の配慮はする姿勢は示しており、障害者に対する合理的配慮の観点を考慮しても、Y社の対応が不合理なものとはいえない。
したがって、Xは、令和2年12月7日の時点では、出社は困難であったといわざるを得ないから、従前の職務を通常程度に行える健康状態になるか、当初軽易作業に就かせればほどなく従前の職務を通常程度に行える健康状態になったとはいえない。

障害者に対する合理的配慮の内容・程度については、明確な基準があるわけではないため、現場においては、非常に判断に悩まれることが多いです。

弁護士等と相談をしながら、合理的と思える範囲で対応するほかありません。

使用者としていかに対応すべきかについては、顧問弁護士の助言の下に判断するのが賢明です。