Author Archives: 栗田 勇

解雇62(学校法人福寿会事件)

おはようございます。

さて、今日は、専任教師に対する懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人福寿会事件(福島地裁郡山支部平成23年4月4日・労判1036号86頁)

【事案の概要】

Y社は、平成13年2月に設立された学校法人であり。A学校を運営している。

Xは、平成12年4月、A学校の専任教員として雇用され、勤務してきた。

Xは、Y社との間で、平成14年4月から平成15年3月末までとする雇用契約書を作成した。

その後、Xは、Y社がXに対し平成22年3月に委嘱期間を更新しない旨の通知をするまでの間、同学校で勤務していた。

Y社は、これとは別にXを懲戒解雇した。

懲戒解雇事由は、Xが報道関係者の取材を受け、A学校に関わる紛争や問題点を指摘する旨の報道がなされたことである。

Xは、本件通知は解雇権濫用に該当すること、懲戒解雇は懲戒解雇事由がなかったなどと主張し争った。

【裁判所の判断】

本件通知は解雇であり、解雇は無効

懲戒解雇も無効

【判例のポイント】

1 ・・・当事者間で雇用契約書が作成されたのは1回だけであり、XとY社の雇用契約書には年1回の昇給に関する記載がある等、雇用契約が1年を超えて継続することをうかがわせる記載もあった。・・・そうすると、Xらの職務内容が一時的・臨時的なものであったとは認め難い。結局、XらとY社の各雇用契約書には雇用期間を1年とする旨の記載があるが、これらの雇用契約書は本件雇用契約の内容を正確に反映したものではなかったと認めるのが相当である
・・・そうすると、本件契約は、Y社が主張するように、期間を1年とする有期雇用契約の更新が繰り返されていたものとは認められず、むしろ、本件就業規則に従い、特段の事情がない限り、Xらが定年まで勤務することを前提にした期間の定めのない雇用契約であったと認めるのが相当である

2 ・・・報道は報道機関の判断等によってなされるものであり、仮に報道によってA学校が損害等を受けたとしても、直ちにXらの行為によるものといえるかは疑問の余地がある。また、本件就業規則49条は、本件学校に関する取材に応じることを禁じたものとは認められない。加えて、Xらが取材を受けたのは本件通知の後であり、XらとY社は紛争状態にあり、Y社はXらとの雇用関係が終了したとの立場であったことを考慮すると、なおさら、XらがY社との紛争や自らの見解について、報道機関の取材に応じない義務を負っていたと認めることはできない。さらに、Xらは、報道機関の取材に対して、Y社に対し、地位保全等仮処分を申し立てた等の事実を述べたり、本件学校内の問題に対する自らの認識や見解を明らかにしたに過ぎず、虚偽の事実を述べてA学校の業務を妨害したり、学校の信用を毀損したり、本件学校に損害を及ぼしたりするために取材に応じたと認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると、Xらが取材に応じたことにより、結果として本件学校に関わる紛争が生じている旨の報道や、本件学校の問題点を指摘する旨の報道がなされたとしても、このことをもってXらが本件就業規則49条(1)、(6)に反し、学校の業務を妨害したり、学校の信用を低下させたり、学校に損害を与えたりしたと認めることはできず、Y社の主張する懲戒解雇事由があったと認めることはできない
したがって、その余の点を判断するまでもなく、本件懲戒解雇は無効である。

上記判例のポイント1、2ともに、事実認定の勉強になりますね。

有期雇用の契約書があったとしても、それ以外の資料から期間の定めのない雇用契約を想定していると評価されれば、有期雇用とはなりません。

これはもう常識といえば常識です。

形式では勝負はつきません。 あくまでも実質が重視されるわけです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介44 イノベーションのDNA(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル (Harvard Business School Press)
イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル (Harvard Business School Press)

ハーバード・ビジネス・スクール教授で、「イノベーションのジレンマ」という有名な本の著者が書いた本です。

この本の特徴は、題名通り、「破壊的」なイノベーションをいかに行うかという点が具体例を踏まえて述べられているところです。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

イノベータは人と違う考え方をするが、スティーブ・ジョブズがいうように、実はつながっていないものをつなげることによって、違う考え方をしているにすぎない。アインシュタインはかつて創造的思考を『組み合わせ遊び』と呼び、『生産的思考の本質的特徴』とみなした。」(47頁)

スティーブ・ジョブズ曰く、『創造とは結びつけることだ』。彼はこう続ける。『創造的な人は、どうやってそれをやったのかと聞かれると、ちょっとうしろめたい気持ちになる。実は何をやったわけでもなく、ただ何かに目を留めただけなのだ』・・・」(52頁)

いい言葉ですね。

「実はつながっていないものをつなげること」によって、新しい商品、サービスが生み出されているということですね。

「組み合わせ遊び」というのも、おもしろい表現ですね。

私は、どこにいても、何をしていても、この「組み合わせ遊び」をしています。

「あ、このサービス新しいな! でも、もうひと工夫ほしいな~。あれと組み合わせるとかなり斬新だな。」などとひとり遊びをしています。

いつも言うことですが、大切なのはここからなのです。

いいと思ったアイデアを実行に移すことをしなければ、単なる妄想で終わってしまいます。

いいアイデアは、実行に移しましょう!!

不当労働行為29(緑光会事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合脱退勧奨等と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

緑光会事件(中労委平成23年9月7日・労判1035号172頁)

【事案の概要】

Y社は、病院のほか精神障害者社会復帰施設等を経営している。

平成20年10月、X組合は、Y社理事長がZに対して組合からの脱退を働きかけたこと、平成20年4月、X組合がカンファレンスルームの使用を申し入れても、部外者である組合員の出入りは患者に悪影響があるとして拒否したことが不当労働行為であるとして、救済を申し立てた。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 ・・・このように、短期間に100通を超える脱退届が提出された経緯をみると、個々の組合員だけでない組織的な対応がうかがわれる。しかしながら、本件においては、Y社の管理者が分会員に対して脱退を勧奨したり、上記脱退についての説明会等に出席を促したという事実は認められず、他にY社が本件脱退に関与したことをうかがわせる事情はない

2 上記事情からみれば、Y社が組合に対して強い関心をもっていたことがうかがわれる。しかしながら、Y社理事長がZに対し「外部は邪魔だ」と発言した事実は認められず、その他法人が本件脱退に関与した事実は認められない
一方、本件脱退前に、食事会で出席者の中にX1が同年4月の団交において突然代表者交渉を提案したことなど分会員とX1との信頼関係が失われていったことを示す事情が認められることからすれば、本件脱退は、分会員側の事情において発生し、進められたものとの推認を否定することはできない

3 以上によれば、本件脱退の経過、本件脱退前後の状況を考慮しても、Y社理事長がZ1に対し分会員を組合から脱退させるよう働きかけ、理事長の意を受けたZが分会執行委員らに対し組合から脱退するよう働きかけ、更にZの発言を受けた分会執行委員らが分会員に対し組合からの脱退を働きかけたとは認められない。
したがって、Y社は、分会員らに対し、組合からの脱退を働きかけた事実は認められない。

4 Y社が、組合からのカンファレンスルームの使用申入れを拒否した際に明示した、外部の者の出入りを一定の範囲で制限するという理由は、病院が精神科病院であることからその治療の観点からみて必要性と合理性があるものといえる
・・・したがって、組合によるカンファレンスルームの使用を拒否したY社の対応は、組合によるカンファレンスルームの使用を拒否して組合活動を妨害したものとはいえず、この点に関する組合の主張は理由がない。

組合員の大量脱退の理由について、会社が脱退を働きかけたとは認定されなかったため、不当労働行為とはなりませんでした。

完全に事実認定の問題ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為28(阪急トラベルサポート事件)

おはようございます。

さて、今日は、不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

阪急トラベルサポート事件(中労委平成23年11月16日・労判1036号93頁)

【事案の概要】

Y社は、一般労働者派遣事業、旅行サポート事業等を行っている会社である。

組合支部は、Y社に登録する派遣添乗員により組織されている。

Xは、平成13年6月からY社東京支店に登録し、専ら阪急交通社に派遣され、旅行の添乗業務におおむね2か月に3回、月12日程度従事してきた。

Xは、平成19年1月の支部結成以来、支部執行委員長である。

平成21年2月発売の週刊誌に支部の活動を紹介するXのインタビュー記事が掲載された。

Y社の東京支店長は、Aに週刊誌記事を示して事情聴取を行い、同記事が事実に反しY社の名誉を毀損し、業務妨害にも当たるとして週刊誌に訂正を申し入れること等を求めた。

しかし、Xはこれを拒否したため、支店長は、Xに対し、今後添乗業務を割り振らない措置をとる(本件アサイン停止)と告げた。

【労働委員会の判断】

労組法7条1号の不利益取扱いにはあたらないが、同条3号の支配介入にあたる。

【命令のポイント】

1 Y社は、Xは派遣の都度雇用関係が生じる登録型派遣労働者であり、アサインを受ける権利を有しないなどとして、本件アサイン停止は不当労働行為に該当する余地はないと主張する。
・・・Xは、労働者派遣事業者であるY社に登録され、阪急交通社に派遣添乗の度ごとにY社との短期労働契約を結んで派遣されていたのではあるが、Y社と同人の関係は、その実態においては、派遣添乗ごとの短期労働契約が長期間にわたって専属的かつ継続的に繰り返されてきたものであり、かつ就業規則も各労働契約の期間とその間の登録期間を一体的な期間として適用対象としてきたものであるから、常用型の派遣に近似していたものとみることができる
したがって、Y社とXとの間には登録期間も含め常用型の派遣に近似した関係があり、Y社は同期間も含め労組法第7条が適用される使用者であったとみることができるから、本件アサイン停止は、Y社とXの間に存在してきたこのような関係を切断する措置として、不当労働行為に該当し得るものである。

2 ・・・Xの上記取材における対応は、・・・会社の名誉・信用を相当程度毀損するものであったと推測できることにかんがみれば、組合活動として正当化し得るものではない。また、Xが、そのような発言によって生じたY社の名誉毀損の拡大の回避、会社の名誉回復の措置をとらなかったことも、やはり組合活動として正当化し得るものではない。
以上によれば、本件アサイン停止は、Xに対する「労働組合の正当な行為」の故の不利益取扱いとはいえない。

3 しかしながら、Xに対する本件アサイン停止は、自ら執筆した記事に対する責任が問われたものではなく、同人の取材における対応が問題とされたものである。このことに、これまでXに非違行為があり、同人に注意・指導が行われたり、懲戒処分などが行われたりしたことをうかがわせる事情は認められないこと(審査の全趣旨)を勘案すれば、同人に対する本件アサイン停止の相当性には疑問がある
・・・以上のとおり、支部は、結成以来、Y社に未払残業代を支給させたり、一定の条件下にある派遣添乗員の雇用保険・社会保険の加入を実現させてきており、また、みなし労働の適用ないし未払残業代の支払をめぐってはY社と厳しく対立していたが、Xは、支部の委員長として、これら活動の中心的存在として重要な役割を担っていたものと認められる。Y社はこのようなXを快く思っていなかったことは当然に推認される
以上を総合勘案すると、本件アサイン停止は、みなし労働の撤廃等を活動する支部の中心的な存在であるXに対し、解雇と同視し得る措置を課し、同人をY社から排除することにより、組合の組合活動を減退させようとして行われたものと推認でき、労組法7条3号の支配介入に該当する。

不利益取扱いにはあたらないが、支配介入にはあたるという点が特徴的です。

通常、いずれにも該当するのが多いですが、今回のような判断もあるわけです。

上記命令のポイント3のような論理の運びは、労働者側としては参考にすべき点です。

会社側としては、組合幹部に対する対応は慎重にしなければいけません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介43 ハイコンセプト-「新しいこと」を考え出す人の時代-(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 また一週間はじまりました! がんばっていきましょう!!

さて、今日は本の紹介です。
ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ダニエル・ピンクさんの本です。

以前、ダニエル・ピンクさんの「モチベーション3.0 持続する『やる気』をいかに引き出すか」という本を紹介しました。

ピンクさんの本の特徴は、とにかくわかりやすいということです。

業界の常識をぶち破りたいと考えている若手経営者の方におすすめです。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

この時代を生き抜くためには、あらゆる人も組織も、自分たちが収入を得るために行なっていることについて考えなくてはならない。次のように自らに問いかけてみよう。
① 他の国なら、これをもっと安くやれるだろうか
② コンピュータなら、これをもっとうまく、早くやれるだろうか
③ 自分が提供しているものは、この豊かな時代の中でも需要があるだろうか
」(102頁)

いかがでしょうか。

①と②は、考えやすいと思います。

場所を問わない仕事、誰がやっても同じ仕事、専門家がわざわざやらなくてもパソコンのソフトがあれば誰でもできる仕事は、当然のことながら、価格が安い方がいいわけです。

問題は③です。

③について、ダニエル・ピンクさんは、別の言葉で説明しています。

自分が提供しているものは、豊かな時代の非物質的で超越した欲望を満足させられるだろうか。」(346頁)

この本では、いくつかの例が挙げられています。

弁護士業界で、③とはどのようなことを指すのだろうか・・・と、この本を読んでからずっと考えています。

いくつかのアイデアが浮かんでくるのですが、まだまだ詰めが甘い感じです。

顧客の「非物質的で超越した欲望」とは何を指すのだろう・・・。

もう少し考えてみます。

本の紹介42 インターネットマーケティング最強の戦略(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます さ、さむい・・・
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昨夜は、労災の弁護団会議終了後、同期弁護士と「昭和ホルモン」に行きました

←昭和ホルモンの名物「ガラ揚げ」。 行ったら必ず注文します。

今日は、午前中、裁判が1件、刑事事件の判決が1件入っています。

午後は、浜松の家裁で、離婚調停です 

これで、今週は離婚調停3件目です。

夜は、静岡に戻り、同期の税理士S君と新年会です

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、本の紹介です。
インターネットマーケティング 最強の戦略
インターネットマーケティング 最強の戦略

著者の小川さんは、世界的ヒット商品「プロアクティブ」を仕掛けたダイレクトマーケティングの世界的権威ダン・ケネディさんの日本唯一の代理人だそうです。

なんだかおもしろそうだったので買ってみました。

内容が具体的で、とてもわかりやすい本です。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成功できない人は、新しい知識を得てから行動に移すまでの時間がやたらと長い。
・・・一方で、成功するタイプの人は、十分な情報がなくても、『良い』と思ったことはすぐに実行する。そして、失敗したり、壁にぶつかったりしながら、新しいことを実践に移す。
実際、やってみるとわかるんだけど、やらなければ決して理解できないゾーンというものがある。見たり聞いたりしただけでは理解できない部分があるのだ。ある特定のゾーンは経験からしか学ぶことができない。
そして、この経験から学べる部分こそが、成否を大きく分ける部分なのだ。
」(241~242頁)
 
そう。 そのとおり。

「そこまで考えているなら、どんどんやればいいのに。」と思ってしまうことがあります。

この著者は「完璧主義の罠」という言葉を使っています。

「完璧」な準備をしなければ実行に移せないことを指しています。

もちろん準備は大切です。 アイデアを出し、それが実現するに値するかを考えなければいけません。

しかし、それも程度問題です。 個人的には、「直感」の世界だと思っています。

「直感」を支えているのが、まさに日常生活の「準備」、つまり、いろんなことを考えるということなんだと思います。

情報Aと情報Bが、ばらばらの情報としてインプットされており、ある日、情報Cに出会った際、これに情報Aと情報Bを組み合わせれば、新しいサービスになるのではないか、と「直感」的に思うことがあります。

それは、日常生活において、情報A、B・・・といったものに意識して触れているからなのだと思います。

これこそが「準備」だと思うわけです。

どうでしょうか?

本の紹介41 「超」一流のサービス50のヒント(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

思わず誰かに話したくなる「超」一流のサービス50のヒント
思わず誰かに話したくなる「超」一流のサービス50のヒント

少し前の本ですが、読み直してみました。

以前読んだときに引いた赤線が残っていますが、今回読んだときと線を引く場所が異なります。

2~3年前に読んだときと今では、やはり感覚がかなり違うのだと再認識しました。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お客様の目でビジネスを見つめると、これまで見えていなかったさまざまな問題点が見えてくる。些細なことをないがしろにせず、一つひとつ丁寧に解決策を見つけていくことが、『超』一流のサービスにつながる重要なポイントだ。」(93頁)

言っていること自体は、新しいことではありませんね。

この本の帯にも書かれていますが、

「特別なことはいらない。当たり前のことを100%やれ。それが伝説になる。」

というわけです。

同じ業界の人とばかり接していると当たり前のことが何なのかよくわからなくなってきます。

先日、顧問会社の社長から、アドバイスをいただきました。

同業者からは決して出てこない発想でした。

解雇61(泉州学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、専任教員に対する整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

泉州学園事件(大阪高裁平成23年7月15日・労判1035号124頁)

【事案の概要】

Y社は学校法人である。

Xら7名は、Y社が設置する高等学校の専任教員として雇用されていたが、平成20年3月、整理解雇された。

本件高校の生徒数は、平成元年度以降、毎年度減少傾向が続き、Y社の主要な収入である学生生徒等納付金も減少した。平成19年度のY社の補正運用資産外部負債比率は91%であり、外部負債の返済能力が不十分であり、金融機関からの借入れ等の外部資金の調達が相当困難であり、極めて資金繰りに窮した状態であった。

Xらは、本件整理解雇は無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 整理解雇は、使用者の業務上の都合を理由とするもので、解雇される労働者は、落ち度がないのに一方的に収入を得る手段を奪われる重大な不利益を受けるものであるから、それが有効かどうかは、(1)解雇の必要性があったか、(2)解雇回避の努力を尽くしたか、(3)解雇対象者の選定が合理的であったか、(4)解雇手続が相当であったかを総合考慮して、これを決するのが相当である。

2 そもそも、人件費削減の方法として、人件費の高い労働者を整理解雇するとともに、他方では人件費の安いほぼ同数の労働者を新規に雇用し、これによって人件費を削減することは、原則として許されないというべきである。なぜならば、同程度の人件費の削減を実現するのであれば、人の入れ替えの場合よりも少ない人数の整理解雇で足りると解されるし、また、このような人を入れ替える整理解雇を認めるときは、賃金引き下げに容易に応じない労働者の解雇を容認し、その結果として労働者に対し賃金引き下げを強制するなどその正当な権利を不当に侵害することになるおそれがあるからである。もっとも、本件の11名のように、任意又は雇止めによる退職の場合に人を入れ替える措置を講じることには特段の法的問題はないと解される。

3 ・・・以上のように、本件においては、(1)11名の退職が予定された段階においては、同退職により一時的な退職金差額の負担を除き少なくとも4128万円程度の人件費の削減になり、これにより財務状況は相当程度改善されると予測されたから、この点で本件整理解雇の必要性があったとは認め難いこと、(2)本件整理解雇は人を入れ替えることを意図したものと解され、その観点からもその必要性を肯定し難いこと、(3)予算ではなく平成19年度の実際の財務状態を前提に1審被告の計算式を適用すると削減人数は13名になり、その結果整理解雇の人数は2名になるから、本件整理解雇の段階で予算になる従前の計算をそのまま使用することは妥当でないことといった問題点があったことを指摘することができる。そこで、これらの諸点を総合すると、本件整理解雇時に7名の専任教員の解雇を要するだけの必要性があったとは認めることができない

4 本件では、Xらないし組合とY社は、相手方の行動、対応を逐一批判ないし非難する傾向にあり、相互不信は根深いものと認められるから、Y社が、その財務状況を踏まえて人件費削減の必要性を訴えても、Xらあるいは組合との間で結局話合いは平行線をたどった可能性も否定できないものと推測される。しかし、そうではあっても、整理解雇を行う使用者は、組合ないし労働者との間で説明や交渉の機会を持つべきである。整理解雇のような労働者側に重大な不利益を生ずる法的問題においては、関係当事者が十分意思疎通を図り誠実に話し合うというのが我が国社会の基本的なルールであり、公の秩序というべきである。したがって、Y社がこれを持とうとしなかったことに整理解雇に至る手続に相当性を欠く瑕疵があるといわなければならない

一審とは異なる判断をしました。

上記判例のポイント4は、手続きの相当性を考える上で、留意しなければいけません。

「どうせ話したってわかってもらえないよ」というあきらめは、基本的には認められません。

会社側とすれば、やはり被解雇者や組合と事前協議を行うべきだということです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介40 コトラーのマーケティング3.0(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

コトラーさんのマーケティングに関する本です。

3.0ということで、1.0から2.0ときて、さらにバージョンアップしたということです。

マーケティングは、モノを売り込む「製品中心」の「1.0」、顧客満足をめざす「消費者志向」の「2.0」を経て、「3.0」にバージョンアップしたようですよ。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

忘れてはならないのは、企業は変化を生み出す解決策を単独で提供することを期待されてはいないという点だ。企業は他の企業やステークホルダーと協働しなければならない。」(196頁)

これを士業で考えると、顧客に対して、他士業、他業界と連携してスムーズなワンストップサービスを提供できるように仕組みをつくりあげることなのだと思います。

他士業とのコラボはすでに動き出していますので、今年は、他業界とのコラボを重点的に取り組んでいこうと思います。

銀行、生保会社、損保会社、不動産会社等とのコラボを実現していきたいと思います。

また、新しいサービスの準備ができましたら、発表します。

賃金40(全日本手をつなぐ育成会事件)

おはようございます。

さて、今日は、証人出頭に伴う不就労と賃金カットに関する裁判例を見てみましょう。

全日本手をつなぐ育成会事件(東京地裁平成23年7月15日・労判105頁)

【事案の概要】

Y社は、知的障害者の援護・育成を目的とする団体との連絡等に携わる社会福祉法人である。

Xは、Y社の正規職員である。

Y社の給与規程には、正規職員が所定時間内に休業した場合には、不就労時間数に応じて基準内給与から控除する旨の規定が置かれている。

Xは、平成21年5月から平成22年9月にかけての時期に、東京都労働委員会から6回にわたり証人として呼出を受け、出頭した。

いずれの呼出とも午後2時からの出頭を求めるものであり、これによりXには各日につき4.25時間の不就労が発生した。

Y社は、Xの不就労を理由に賃金、賞与をそれぞれ控除した。

Xは、本件賃金カット等を理由とする未払賃金及び未払賞与の支払を求めて提訴した。

【裁判所の判断】

未払賃金及び未払賞与の支払いを命じる

【判例のポイント】

1 本件各不就労時間は、労基法7条にいう「公の職務を執行するために必要な時間」に該当するものと解されるところ、同条は、労働者がその労働時間中に公民権の行使等のために必要な時間を請求した場合、使用者はこれを拒んではならないことを規定するにとどまり、公民権の行使等に要した時間に対応する賃金についてはこれを当事者間の取決めに委ねるという趣旨の規定であると解するのが相当である。

2 本件就業規則等の変更は、本件旧就業規則15条によって保障されていた公民権の行使等の有給扱いを取りやめるものであって、Xの重要な労働条件の一部について既得の権利を奪う内容のものである。
・・・就業規則の不利益変更の有無・程度は、単に量的な側面からだけではなく、質的な側面(とりわけ権利の性格等)を併せ考慮して判断すべきものと解され(労契法7条の合理性審査において考慮される労使双方の利益のうち労働者側のそれとしては「特定条件下での就労利益、憲法・法令が保障する権利等も含まれるものとされるが(土田・140頁)、この理は、同法10条の合理性審査における労働者の不利益性の内容についても妥当するものと解される。)、そうだとすると本件就業規則等変更によって不利益に変更されるXの労働条件とは、単なる賃金額の減少にあるのではなく、上記のとおり、より実質的に「有給扱いという待遇の下で公民権の行使等の公的活動に容易に参画し得る地位ないし権利」をいうものと解するのが相当であり、このような観点からいうと、減少する賃金の額が小さいからといって、直ちに本件就業規則等の変更の不利益性が小さいということにはならな
い。

3 本件就業規則等変更は、Y社職員が既得の権利として有していた「有給扱いという待遇の下、公民権の行使等の公的活動に容易に参画し得る地位ないし権利」に対して、かなり大きな負の影響を与えるものということができ、その意味で、本件就業規則等変更は、全体的にみて、重要な労働条件につき実質的な不利益性を有するものというべきである。
・・・以上のとおりであるから、Xは、本件各不就労によっても、その部分に関する賃金請求権を失わず、したがって、本件各賃金カット等は、いずれも違法である。

非常に珍しいケースです。

ただ、内容としては、就業規則の不利益変更の問題です。

公民権行使を重視した判断がされていますね。

今回、Y社が社会福祉法人であることも一考慮要素となっています。

普通の民間企業であったとして、今回の結論は変わったでしょうか?

日頃から顧問弁護士に相談し、適切に労務管理をすることがとても大切ですね。