不当労働行為28(阪急トラベルサポート事件)

おはようございます。

さて、今日は、不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

阪急トラベルサポート事件(中労委平成23年11月16日・労判1036号93頁)

【事案の概要】

Y社は、一般労働者派遣事業、旅行サポート事業等を行っている会社である。

組合支部は、Y社に登録する派遣添乗員により組織されている。

Xは、平成13年6月からY社東京支店に登録し、専ら阪急交通社に派遣され、旅行の添乗業務におおむね2か月に3回、月12日程度従事してきた。

Xは、平成19年1月の支部結成以来、支部執行委員長である。

平成21年2月発売の週刊誌に支部の活動を紹介するXのインタビュー記事が掲載された。

Y社の東京支店長は、Aに週刊誌記事を示して事情聴取を行い、同記事が事実に反しY社の名誉を毀損し、業務妨害にも当たるとして週刊誌に訂正を申し入れること等を求めた。

しかし、Xはこれを拒否したため、支店長は、Xに対し、今後添乗業務を割り振らない措置をとる(本件アサイン停止)と告げた。

【労働委員会の判断】

労組法7条1号の不利益取扱いにはあたらないが、同条3号の支配介入にあたる。

【命令のポイント】

1 Y社は、Xは派遣の都度雇用関係が生じる登録型派遣労働者であり、アサインを受ける権利を有しないなどとして、本件アサイン停止は不当労働行為に該当する余地はないと主張する。
・・・Xは、労働者派遣事業者であるY社に登録され、阪急交通社に派遣添乗の度ごとにY社との短期労働契約を結んで派遣されていたのではあるが、Y社と同人の関係は、その実態においては、派遣添乗ごとの短期労働契約が長期間にわたって専属的かつ継続的に繰り返されてきたものであり、かつ就業規則も各労働契約の期間とその間の登録期間を一体的な期間として適用対象としてきたものであるから、常用型の派遣に近似していたものとみることができる
したがって、Y社とXとの間には登録期間も含め常用型の派遣に近似した関係があり、Y社は同期間も含め労組法第7条が適用される使用者であったとみることができるから、本件アサイン停止は、Y社とXの間に存在してきたこのような関係を切断する措置として、不当労働行為に該当し得るものである。

2 ・・・Xの上記取材における対応は、・・・会社の名誉・信用を相当程度毀損するものであったと推測できることにかんがみれば、組合活動として正当化し得るものではない。また、Xが、そのような発言によって生じたY社の名誉毀損の拡大の回避、会社の名誉回復の措置をとらなかったことも、やはり組合活動として正当化し得るものではない。
以上によれば、本件アサイン停止は、Xに対する「労働組合の正当な行為」の故の不利益取扱いとはいえない。

3 しかしながら、Xに対する本件アサイン停止は、自ら執筆した記事に対する責任が問われたものではなく、同人の取材における対応が問題とされたものである。このことに、これまでXに非違行為があり、同人に注意・指導が行われたり、懲戒処分などが行われたりしたことをうかがわせる事情は認められないこと(審査の全趣旨)を勘案すれば、同人に対する本件アサイン停止の相当性には疑問がある
・・・以上のとおり、支部は、結成以来、Y社に未払残業代を支給させたり、一定の条件下にある派遣添乗員の雇用保険・社会保険の加入を実現させてきており、また、みなし労働の適用ないし未払残業代の支払をめぐってはY社と厳しく対立していたが、Xは、支部の委員長として、これら活動の中心的存在として重要な役割を担っていたものと認められる。Y社はこのようなXを快く思っていなかったことは当然に推認される
以上を総合勘案すると、本件アサイン停止は、みなし労働の撤廃等を活動する支部の中心的な存在であるXに対し、解雇と同視し得る措置を課し、同人をY社から排除することにより、組合の組合活動を減退させようとして行われたものと推認でき、労組法7条3号の支配介入に該当する。

不利益取扱いにはあたらないが、支配介入にはあたるという点が特徴的です。

通常、いずれにも該当するのが多いですが、今回のような判断もあるわけです。

上記命令のポイント3のような論理の運びは、労働者側としては参考にすべき点です。

会社側としては、組合幹部に対する対応は慎重にしなければいけません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。