本の紹介85 イノベーション5つの原則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

イノベーション5つの原則
イノベーション5つの原則

これまでも、「イノベーション」本を多く読んでみましたが、この本もその一種です。

世界最高峰の研究機関SRIが生みだした実践理論」だそうです。

題名のとおり、イノベーションを起こすためには、5つの原則が大切なんだそうです。

顧客に対する価値提案をポイントが示されており、参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

価値提案は、価値創出の核であり、顧客価値を生み出す際に検討しなければならない4つの基本的ポイントに答えるものである。4つのポイントとは、以下のとおりだ。
N 重要な顧客と市場のニーズ(Need)とはどんなものか?
A そのニーズに応えるための独自のアプローチ(Approach)とは?
B そのアプローチの費用対効果(Benefits per costs)はどうなのか?
C 費用対効果は、競合(Competition)や代替品と比較して、どのくらい優れているか?
」(102頁)

新しい価値提案は、競合の提供する価値を格段に上回る」(102頁)

このNABCの4つの視点から、新しい価値が提案するに値するものかを検討する必要があるということです。

どれか1つでも欠けているとうまくいきません。

あとは、実践あるのみですね。

たとえば、1枚の大きな紙に、NABCの視点を書き込み、新しいアイデアがどの程度の価値があるかを判断するわけです。

また、新しいアイデアを具体化したけれど、うまくいかない場合、NABCのどの視点が欠けているかを分析するというやり方も考えられますね。

欠けていると考えられる部分を修正しながら、再チャレンジするわけです。

一度、失敗したくらいであきらめているようでは、何一つうまくいかないんじゃないですかね。

すべて試行錯誤の連続です。 そう思えれば、あきらめるという判断はまずしなくなります。

賃金46(中央タクシー(未払賃金)事件)

おはようございます。

さて、今日は、タクシー運転手の客待ち待機時間の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

中央タクシー(未払賃金)事件(大分地裁平成23年11月30日・労判1043号54頁)

【事案の概要】

Y社は、大分市に本社を置く、タクシー会社である。

Xらは、Y社の従業員であり、タクシー乗務員として勤務していた。

Y社では、30分を超える客待ち待機時間を労働時間から除外していた。

Xらは、Y社に対し、除外された客待ち時間分も労基法上の労働時間に該当するとして、当該時間分の賃金を請求した。

【裁判所の判断】

客待ち待機時間も労基法上の労働時間に該当する

【判例のポイント】

1 労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間をいうというべきである。
Xらがタクシーに乗車して客待ち待機をしている時間は、これが30分を超えるものであっても、その時間は客待ち待機をしている時間であることに変わりはなく、Y社の具体的指揮命令があれば、直ちにXらはその命令に従わなければならず、また、Xらは労働の提供ができる状況にあったのであるから、30分を超える客待ち待機をしている時間が、Y社の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であることは明らかといわざるを得ない

2 もちろん、Xらが被告の30分を超えるY社の指定場所以外での客待ち待機をしてはならないとの命令に従わないことを原因として、Xらが、適正な手続を経て懲戒処分を受けることがあるとしても、この命令に従わないことから、直ちに30分を超える客待ち待機時間が、労働基準法上の労働時間に該当しないということはできない。Xらが、30分を超えて客待ち待機をしたとしても、その時間は、争議行為中でもサボタージュでもなく、喫茶店等に入ってサボっている時間でもなく、労働提供が可能な状態である時間であるのであるから、Y社の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下におかれている時間と認められる

3 ある時間が労働基準法上の労働時間に該当するか否かは当事者の約定にかかわらず客観的に判断すべきであるから、労働協約の規定があったとしても、Y社の指定する場所以外の場所での30分を超える客待ち待機時間が労働基準法上の労働時間に該当しなくなるわけではない

4 Y社は、ノーワーク・ノーペイの原則からしても、30分を超える客待ち待機時間は、労働時間に該当しないと主張するが、Y社の指定する場所以外の場所での30分を超える客待ち待機を、ノーワークということはできない。

タクシー運転手の客待ち待機時間も労基法上の労働時間か、と言われれば、やはり、裁判所の判断のようになるんでしょうね。

会社から具体的な指揮命令があれば、運転手としては、直ちに命令に従わないといけない状況にある以上、会社の指揮命令下にあるということになります。

・・・とはいえ、駅構内等の長蛇の列の中で待機しているときは、車の中で、好きな本を読んでいてもいいでしょうし、車から降りて、他の運転手と雑談することもありますよね。

そのため、会社としては、30分を超える待機時間を労働時間から除外したわけですね。

気持ちはよくわかります。 しかし、裁判になれば、このような結論になってしまうわけです。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介84 勝ち続ける経営(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 
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←マット、クリアファイル、切手、いいことばんくノート、飲み物リスト、オリジナルノートに続きまして、第7弾!

オリジナル傘です。

突然、雨が降ってきたときに、傘をお貸し致します。

 

さて、今日は本の紹介です。
勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論
勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論

原田さんの本です。「日本マクドナルド社長が送り続けた101の言葉」、「とことんやれば、必ずできる」に続き3度目の登場です。

僕は、原田さんの考え方が好きなので、飽きません。

この本もとてもいい本です。 勉強になります。

さて、この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

企業はどこにも強さと弱点がありますが、弱点はみんなよく目に付くものです。ですから経営者も『あれが悪い。これはよくしましょう』となる。でもそんなことをしたら、強いところが弱くなってしまいます。弱点をリカバリーする・強化するのではなく、強いところをもっと強化するべきです。弱点が弱点と見えないぐらい、独自の強さを強化するというところに気持ちを持っていかなければいけません。」(153頁)

弱点を強化するよりも、強いところをもっと強化することにより、独自の強さに磨きをかけるという発想です。

これだけ選択肢が多い社会で、他との違いをわかりやすく示すためには、強みをめいっぱい前面に押し出す方がいいのです。

弱点を強化すること自体は、決して悪いことではありませんが、弱点を強化しても、せいぜい平均まで押し上げるだけです。

やはり、まずは、強いところをより強くすることが大切だと思います。

そもそも時間に限りがある以上、あれやこれやと手を出してもいいことはありません。

あれもこれもと欲張らないことが大切です。 

解雇69(コムテック事件)

おはようございます。

さて、今日は、事業所閉鎖に伴う整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

コムテック事件(東京地裁平成23年10月28日・労判1043号90頁)

【事案の概要】

Y社は、システムコンサルティング事業、システムの開発・運用管理事業、営業支援・業務支援等の牛無駄意向事業等を営む会社である。

Y社は、川口事業所取扱業務にかかる主要取引先であるA社との契約が平成22年3月末で終了になることに伴い、川口事業所を閉鎖することを決定し、川口事業所の全従業員に対し、同閉鎖の通告を行うとともに、個々の従業員の処遇については、個別に対応する旨を説明した。

Xは、Y社に対し、退職意思がないことを伝え、配転による雇用の継続の希望を伝えた。

Y社は、Xが退職勧奨を拒否したことを受け、就業規則に基づき、整理解雇した。

なお、川口事業所には、平成22年2月末時点において、49名の従業員が在籍していたが、自己都合退職に応じた者が2名、退職勧奨に応じた者が31名、異動によって他の仕事に就いた者が15名であり、整理解雇の対象となったのはX1名のみであった。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 本件解雇は、いわゆる整理解雇について規定するY社就業規則41条5項に基づくものであるところ、同号に基づく整理解雇が解雇権を濫用したものとして無効(労働契約法16条)になるか否かを判断するに当たっては、(1)人員削減の必要性、(2)((1)の人員削減の手段としての)解雇の必要性(解雇回避努力義務の履行の有無)、(3)被解雇者選定の妥当性、(4)手続の妥当性等を総合考慮して判断するのが相当である。

2 ・・・本件における人員削減の必要性は、差し迫った高度のものであったとは認められないというべきである。
そして、川口事業所閉鎖に伴う整理解雇をY社が決定したのが平成22年3月中旬であり、かつ、その対象がX1名のみであったことからすれば、本件における人員削減の必要性の有無の判断は、本件解雇時点において、従業員1名を指名解雇しなければならない程の必要性があるか否かという観点から判断すべきこととなるところ、本件において、かかる必要性があったとまでは解し難い

3 人員削減を実現する際に、使用者は、配転、出向、希望退職者募集等の他の手段によって解雇回避の努力をする信義則上の義務(解雇回避努力義務)を負うものと解され、同義務履行の有無を判断するに当たっては、当該使用者が採択した手段と手順が当該人員整理の具体的状況の中で全体として指名解雇回避のための真摯かつ合理的な努力と認められるか否かを判断すべきである
とりわけ本件においては、本件解雇に係る人員削減の必要性が差し迫った高度のものであったとは認められないことに加え、Y社が多様な部門を有する相当規模の企業であること、川口事業所閉鎖に伴う整理解雇の対象者がX1名のみであったこと、Xがこれまでの間、営業、企画、予算管理、売掛金管理、倉庫管理、人事労務等の幅広い経歴及び職歴を有することからすれば、Y社が解雇回避努力義務の履行としてXの配転を検討するに当たっては、Y社内部の欠員等の有無を形式的に確認したり派遣検討先企業の意向を確認したりするだけでは足りず、少なくとも、Y社の組織全体を視野に入れて、Xの従事できる合理的可能性のある業務の有無を真摯かつ十分な時間を掛けて検討する必要があるというべきである

4 Y社は、川口事業所閉鎖に当たり、同事業所従業員の全員を削減対象とした上で、自主退職又は退職勧奨に応じたことにより退職した者及びY社において異動先を見つけられた者について退職及び異動の措置をとった後、最終的に、退職勧奨に応じず、異動先を見つけられなかったX1名を解雇したものであるから、少なくとも、Y社において、被解雇者の選定について、客観的で合理的な基準を設定していたとは認められない
加えて、Y社がXの異動先を検討するに当たっては、Xの経歴及び職歴を踏まえた幅広い職種・職務内容を対象にはしていないことからすれば、Y社において異動先を見つけて異動の措置をとった者と異動先を見つけられなかったXとを振り分けるに当たって、合理的な判断がされたとも解し難い

4要素を検討しています。

各要素を検討していますが、いずれも足りないと判断されています。

特に解雇回避努力については、まだまだやるべきことがあるでしょ、という感じです。

整理解雇の必要性が差し迫った高度なものではない場合には、4要素説では、解雇回避努力については厳格に判断されることになります。

総合考慮ですから。

やはり、整理解雇は大変ですね。なかなか有効とは認めてくれません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介83 ONE to ONEマーケティング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 また1週間が始まりましたね! がんばっていきましょう!
写真 12-05-18 9 50 05
←マット、クリアファイル、切手、いいことばんくノート、飲み物リストに続きまして、第6弾!

B5サイズのオリジナルノートをつくりました。

ご相談者等にお配りしています。

栗坊シリーズ、まだまだ続きます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略
ONE to ONEマーケティング―顧客リレーションシップ戦略

本の表紙には、小さな字でこのように書いてあります。

一人一人の顧客のニーズに応えるためには、顧客からの協力が不可欠である。個々の要求に取り組むためには、まずどんな要求があるのかを理解しなければならない。そのためには顧客の一人一人と対話し、彼らの個人的要求を十分満たすような製品やサービスを選んだりデザインしたりする必要がある。

ONE to ONEマーケティングって、そういうことを指すんですね。

これの対概念が「マス・マーケティング」です。

すべての人を対象に同じ商品を生産し、あらゆる店舗で販売し、幅広く宣伝を行い、共通のベネフィットを打ち出す」ということです。

マス・マーケティングからワン・トゥ・ワン・マーケティングに発想を変える必要があるというお話です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

もはや『規模』は資産ではない。マス・マーケティングにおいて必要とされた規模の威力も、今は意味をもたない。・・・膨大な数の製品と顧客を抱える巨大組織は、企業間競争の複雑化にともない、製品管理を主体とした既存のマーケティング組織では対応しきれず、すでに苦戦し始めている。規模が小さく、余分な贅肉のない組織として急速な成長を遂げている企業が巨人たちを乗り越える。それは、そのような組織が単に敏速で柔軟性に富んでいるという理由からではなく、顧客により近いという理由から競争に有利なのである。」(273頁)

この本を読んだとき、以前、紹介をした「小さなチーム、大きな仕事-37シグナルズ成功の法則-」という本を思い出しました。

組織の規模が大きくなるにつれて、どうしても顧客との距離がどんどん遠ざかっていってしまいます。

今まで、すべて自分1人で対応していたのが、規模が大きくなるにつれて、それではまわらなくなってくるわけです。

地位があがるにつれて、部下が増えるにつれて、顧客との距離は離れていきます。

今の時代、組織の規模で組織の価値を見せつけるようなことをしても仕方がありません。

最大化を図るのではなく、あくまで最適化を図ることが大切です。

組織としての柔軟性、敏速性、安定性等の点で、いかなる規模や形態が最適なのかを常に考えながら運営しなければいけません。

大きくするのは簡単ですが、一度大きくした後で、小さくのは大変です。

大きくするときには、慎重に判断しなければいけませんね。

労働時間26(ドワンゴ事件)

おはようございます。

今日は、専門型裁量労働制に関する裁判例を見てみましょう。

ドワンゴ事件(京都地裁平成18年5月29日・労判920号57頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピュータ及びその周辺機器、ソフトウェア製品の企画、開発、製造、販売、輸出入及び賃貸などを業務内容とする会社である。

Xは、平成15年9月、Y社との間で雇用契約を締結し、平成16年7月、退職した。

Xは、Y社に対し、未払い残業代を請求した。

Y社は、専門型裁量労働制が適用されると主張した。

【裁判所の判断】

専門型裁量労働制の適用はない。

【判例のポイント】

1 専門型裁量労働制について、労基法38条の3第1項は事業場の過半数組織労働組合ないし過半数代表者の同意(協定)を必要とすることで当該専門型裁量労働制の内容の妥当性を担保しているところ、当事者間で定めた専門型裁量労働制に係る合意が効力を有するためには、同協定が要件とされた趣旨からして少なくとも、使用者が当該事業場の過半数組織労働組合ないし過半数代表者との間での専門型裁量労働制に係る書面による協定を締結しなければならないと解するのが相当である。また、それを行政官庁に届け出なければならない(労基法38条の3第2項、同法38条の3第3項)。
同条項の規定からすると、同適用の単位は事業場毎とされていることは明らかである。ここでいう事業場とは「工場、事務所、店舗等のように一定の場所において、相関連する組織の基で業として継続的に行われる作業の一体が行われている場」と解するのが相当である。
Y社の大阪開発部は、その組織、場所からすると、Y社の本社(本件裁量労働協定及び同協定を届出た労働基準監督署に対応する事業場)とは別個の事業所というべきであるところ、本件裁量労働協定はY社の本社の労働者の過半数の代表者と締結されたもので、また、その届出も本社に対応する中央労働基準監督署に届けられたものであって、大阪開発部を単位として専門型裁量労働制に関する協定された労働協定はなく、また、同開発部に対応する労働基準監督署に同協定が届け出られたこともない。そうすると、本件裁量労働協定は効力を有しないとするのが相当であって、それに相反するY社の主張は理由がない。
そうすると、Xに対しての裁量労働制の適用がない。したがって、Y社は、Xに時間外労働や休日労働があれば、それに応じた賃金をXに支払うべき義務を負っているというべきである。

2 Y社は、Xが深夜労働の申告承認の手続をとっていなかったため、同人の深夜労働に係る割増賃金支払義務を負っていない旨主張する。しかし、Y社は、Y社のタイムカードの記載からXが深夜に労働をしていたことを認識することができ、実際にもXが上記認定した範囲で深夜労働をしていたことからすると、上記手続の成否は深夜労働に係る割増賃金請求権の成否に影響を与えないものというべきである。そうすると、Y社の上記主張は理由がない

裁量労働時間制に関する珍しい裁判例ですが、内容としては形式的な要件をみたしていないからダメよ、という話だけです。

上記判例のポイント2については、よくあるパターンですね。

残業に関して許可制を採用し、仮に従業員が許可をとらずに残業をしていたとしても、会社が、従業員の残業を認識し得た場合には、このような結論となります。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介82 君の歳にあの偉人は何を語ったか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
君の歳にあの偉人は何を語ったか (星海社新書)
君の歳にあの偉人は何を語ったか (星海社新書)

コンセプトがとてもユニークで、すばらしいです。

野口英世は、20歳のときにこんなことを言っていましたよ。

ダーウィンは、22歳のときにあんなことを言っていましたよ。

といった具合に、総勢38人の偉人の言葉が集められています。

単なる名言集とは切り口が違うという点で、すでに参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『忠告はほとんど役に立てません。自分自身のやってきたことと激励だけが役に立ちます』とアインシュタインは74歳で言った!」(212頁)

どの偉人の言葉を選ぼうか悩みましたが、アインシュタインさんのこの言葉にしました。

この言葉についてのエピソードがまとめられています。

・・・74歳の誕生日に記者とこんなやりとりがあった。
記者 『科学の研究を仕事としようとしている学生には、どういうことを忠告したいとお考えですか?』
アインシュタイン 『研究への意欲をもつ人はすでに自分の道を発見しているものです。忠告はほとんど役に立ちません。自分自身のやってきたことと激励だけが役に立ちます』
」(214頁)

応援だけしてくれればいいんですよね。

大切なのは、自分でいろんな経験をするということですよね。

あまりにも人の忠告に頼ってしまうと、いざというときに決断できなくなります。

自分で決断し、実行してきたことこそが、自信につながるのだと信じています。

派遣労働10(アデコ(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣会社が派遣先に対し、派遣社員の経歴を偽って告げたこと等による慰謝料請求に関する裁判例を見てみましょう。

アデコ(雇止め)事件(大阪地裁平成19年6月29日・労判962号70頁)

【事案の概要】

Y社は、一般労働者派遣事業、有料職業紹介事業等を業とする会社である。

Xは、平成14年、Y社に雇用された者である。

Xは、Y社に採用された後、Y社において、スーパーバイザー(SV)職の研修を受けた。

SVとは、テレマーケティングスタッフのマネジメントを実施する者をいい、具体的には、スタッフの応答品質の維持・管理、ヘルプ・クレーム対応、スタッフの育成・監督、業務管理などを行う者である。

Y社アウトソーシングサポート部運営課マネージャーのBは、Xに対し、平成14年12月、A社に提出するXの経歴表を見せたが、同経歴表には、「教材関連 アウトバウンド(教材継続勧奨・新規購読勧奨)」と記載されていた。

Xには、本件虚偽記載に係る経歴はない。

Xは、成15年2月から、A社のコールセンターで就労を開始し、SV業務に従事したが、上手くこなすことができなかった。

その後、Xは、Y社から解雇ないし雇止めをされた。

Xは、Y社に対し、不法行為に基づく損害(慰謝料、治療費、弁護士費用)の賠償等及び地位確認を求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 甲32号証中にはカレンダーアンケートを少しした旨の記載があるが、これは「少し」であるに過ぎないことのほか、Xはアウトバウンド業務の研修を受けていたこと、甲31号証中にインバウンド業務のみでアウトバウンド業務を行っていない旨の記載のあること及びX本人尋問結果中にも、Xがアウトバウンド業務を担当していない旨の供述が存することに照らすと、Xが実質的なアウトバウンド業務に従事し、ひどく難渋していたような事情は認められず、アウトバウンド業務に関してXが負荷を感ずることがあったとしても、社会通念上、受忍限度内のことと解するのが相当である

2 Xは、甲29号証及び同34号証で、A社におけるSV業務遂行中の苦労について縷々陳述しており、同人がA社でSV業務遂行中、管理職ないしSV業務の経験がなかたことや共に派遣されたZが経験者であったことから、同人と比較される等してストレスないし精神的負荷を負ったことは窺える。
しかしながら、これらは、旧知の同僚等のいない、かつ、新しい体制を構築しようとする職場において、未経験の者が新しい職場にて就業する場合(このような場合は、社会生活の中ではしばしば見受けられることである。)にしばしば経験することであって、Xの負った負荷ないしストレスが、社会通念上受忍すべき範囲を超えるものと認められない。また、Xの負った負荷ないしストレスは、本件虚偽記載の存否に関わるものというよりも、SV経験のないことや、X自身の管理監督職への適格性・OJTによる業務吸収能力・対人関係処理能力などの要因により、SV業務を円滑にこなすことができなかった結果によるものと解される

3 Xは、SVないし管理職の経験がないにもかかわらず、SV業務についており、その分負荷が大きかったと解されるが、そもそも、Xは、SVや管理職の経験がないにもかかわらず、管理職を募集していると考えてSV業務に応募したものであり、その後も研修を通じて、SV業務が如何なる業務かについてある程度理解し、あるいは概略的なイメージを持つことができた(なお、現実に就労しなければ分からないことまで事前に理解する必要はない。)にも関わらず、自己がSV業務の経験がないことを理解しながら、事前に他の業務に就くことを申し出ることもせずに、自ら希望してA社のSV業務についたものである
そして、SVないし管理職経験のない者が自らこれらの職業を選択し、相当大きな苦労をしながらも、これをこなしていくことも正常な社会生活上の営みといえるところ、そのような選択をした者が経験不足等により相応の負荷を負担することも相当といえ、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱するような特段の事情のない限り、業務遂行に伴う負荷ないしストレスについても受忍すべきである。このことはXについても妥当するのであって、本件記録上、Xの負った負荷が社会生活上相当と認められる範囲を逸脱するものと認めるに足る証拠はない。

Xが派遣先でストレスを感じたことは否定していないものの、それは、新しい仕事をする際、多くの人が感じる程度の負荷やストレスであり、受忍すべき範囲のものだとしています。

個々の事情を総合的に判断することになるので、この裁判例から一般的な判断基準をつくりだすのはなかなか難しいですね。

今回のケースでは、業務内容が近かったこと、X自身が希望してSV業務についたことが大きいですね。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介81 日本の心がマーケティングを越える(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
日本の心がマーケティングを超える: おかげさまの心 ぶれない心
日本の心がマーケティングを超える: おかげさまの心 ぶれない心

一瞬で題名にやられました。

興味をそそる題名ですね。

この本では、マーケティングを以下のとおり定義づけています。

マーケティングとは、消費者が持つ不満や欲求を知りその解決策を考え出して実践してこれまでになかった需要を創り出す『お役立ち』の競争です」(20頁)

どれだけ顧客に「お役立ち」のサービスを提供できるかがポイントになるわけですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

すべてのコストの負担者は顧客だ、顧客に関係ないコストが発生し始めた会社は潰れる。・・・顧客からいただいたお金を関係ないところに使うのは顧客への還元にならないので、いずれ競合に負けるわけです。・・・企業は利益が出始めると、次期商品の開発研究、新規事業への投資へと向かいます。顧客に関係ある費用です。ところが、時には社長室が豪華になり、車と運転手が付き、取引を有利にするための接待が増加します。それが社内の上から始まり全体にはびこります。これを止めようという者がいなくなります。徐々に顧客から遠いコストが発生してきます。・・・顧客からいただくお金を大切に顧客のために使う精神に戻れば、経営の道を踏み外すこともなくなることでしょう。」(85~86頁)

「顧客からいただくお金を大切に顧客のために使う」。

大切なことですね。

弁護士も同じです。

報酬を全てプライベートに使っていては、サービスは一向に向上しません。

設備投資をどんどん行い、顧客に還元することを忘れてはいけないと思います。

自分の会社や事務所をよくしたい、その結果、顧客の満足度を上げたいと思っていれば、自然とそのように思えるのではないでしょうか。

解雇68(日本ヒューレット・パッカード事件)

おはようございます。

さて、今日は、無断欠勤等を理由とする諭旨退職処分に関する最高裁判例を見てみましょう。

日本ヒューレット・パッカード事件(最高裁平成24年4月27日)

【事案の概要】

Y社は、電子計算機等およびそれらのソフトウェアの研究開発、製造等を目的とする会社である。

Xは、Y社に平成12年10月、雇用されたシステムエンジニアである。

Xは、平成20年4月以降、Y社に対し、Xに対する職場での嫌がらせ、内部の情報の漏洩等を申告し、その調査を依頼した。

Xは、B部長と電話で相談し、問題が調査されるまで、特例の休暇を認めるよう依頼した。

その後、B部長は、Xに対して、調査の結果、本件被害事実はないとの結論に達した旨回答した。

Xの有給休暇は、すべて消化された状態となったが、Xは、その後、約1か月間、欠勤を継続した。

Y社の人事統括本部のC本部長は、Xに対し、「貴職は、会社が認める正当な理由がなく、2008年6月上旬以降、勤務を放棄し、欠勤しています。理由なき欠勤は、あなたが会社に対して負っている労務提供義務についての著しい違反となり、このままの状態が更に続くと、最悪の事態を招くことにもなります。よって、会社として、直ちに出社し就業するよう命じます」とのメールを送付した。

XはY社に対し、明日から出社する旨をメールで伝え、翌日、出社した。

Y社は、その後、Xに対し、諭旨退職処分とする旨通告した。

Xは、本件諭旨退職処分の効力を争った。

【裁判所の判断】

上告棄却
→諭旨退職処分は無効

【判例のポイント】

1 原審の適法に確定した事実関係等によれば、Xは、被害妄想など何らかの精神的な不調により、実際には事実として存在しないにもかかわらず、約3年間にわたり加害者集団からその依頼を受けた専門業者や協力者らによる盗撮や盗聴等を通じて日常生活を子細に監視され、これらにより蓄積された情報を共有する加害者集団から職場の同僚らを通じて自己に関する情報のほのめかし等の嫌がらせを受けているとの認識を有しており、そのために、同僚らの嫌がらせにより自らの業務に支障が生じており自己に関する情報が外部に漏えいされる危険もあると考え、Y社に上記被害に係る事実の調査を依頼したものの納得できる結果が得られず、Y社に休職を認めるよう求めたものの認められず出勤を促すなどされたことから、自分自身が上記の被害に係る問題が解決されたと判断できない限り出勤しない旨をあらかじめY社に伝えた上で、有給休暇を全て取得した後、約40日間にわたり欠勤を続けたものである。

2 このような精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては、精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想されるところであるから、使用者であるY社としては、その欠勤の原因や経緯が上記のとおりである以上、精神科医による健康診断を実施するなどした上で(記録によれば、Y社の就業規則には、必要と認めるときに従業員に対し臨時に健康診断を行うことができる旨の定めがあることがうかがわれる。)、その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり、このような対応を採ることなく、Xの出勤しない理由が存在しない事実に基づくものであることから直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして諭旨退職の措置を執ることは、精神的な不調を抱える労働者に対して使用者の対応としては適切なものとはいい難い。

3 そうすると、以上のような事情の下においては、Xの上記欠勤は就業規則所定の懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤に当たらないものと解さざるを得ず、上記欠勤が上記の懲戒事由に当たるとしてされた本件処分は、就業規則所定の懲戒事由を欠き、無効であるというべきである

高裁の判断が維持されました。

メンタル不調者に対する会社の対応は、実際のところ、とても難しいです。

メンタルヘルス関連のご相談が最近とても増えたことからも、顧問先をはじめとする多くの会社の関心事であることは間違いありません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。