Monthly Archives: 2月 2014

本の紹介297 マイケル・ポーターの競争戦略(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。__

←先日、事務所の近くにある「金乃鶏」に行ってきました。

写真は、「鶏前菜盛り合わせ」です。

ジムで筋トレをした後は、鶏肉を食べたくなります。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、島田の裁判所で離婚調停です。

午後は、静岡に戻り裁判が1件、新規相談が1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略

この本は、マイケル・ポーターさん全面協力によるポーターの競争戦略論のエッセンシャル版です。

めちゃくちゃわかりやすいです。まさにエッセンシャル版ですね。

いろんな事例をあげて説明をしてくれているので、とても説得力があります。

やはり具体的な例示は、説得力を高めます。

僕のような一般の人には、この本で十分です。 おすすめです!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ポーターのいう戦略的競争とは、他社と異なる道筋を選ぶことをいう。企業は最高を目指して競争する代わりに、独自性を目指して競争することができるし、そうすべきである。この競争では価値がすべてだ。生み出す価値の独自性と、それを生み出す方法がものをいう。」(48頁)

トレード・オフは、『何をやらないか』の選択を、『何をやるか』の選択と同じくらい重要なものにする。戦略を策定するにあたっては、どのニーズに対応し、どの製品を提供するかを決定することが重要なカギを握る。だが、これと同じくらい重要なのが、どのニーズに対応しないか、どの製品や機能、サービスを提供しないかの決定だ。・・・何かを万人に提供しようとすると、競争優位を下支えしているトレードオフを緩和してしまうことが多い。長年にわたって競争優位を持続させてきた組織は、あまたの猛攻から主要なトレードオフを守ってきたことがわかる。」(190~191頁)

ポーターさんは、「最高」を目指す競争はよくないと言っています。

あるべき戦略的競争とは、独自性を目指して競争することだと。他社と同じ道筋で「最高」を目指すのではなく。

なるほど。

普通に考えれば、ライバルと競争して、「最高」を目指すのが当然だと思いますが、そうではないのですね。

ポーターさん曰く、ここで重要なのが「トレード・オフ」なのです。

やろうと思ったらできるけど、あえてやらないという選択をすることにより、独自性を表現するわけです。

実は、「やろうと思ったらできる」ということを全てやっていこうとするほうが、「あえてやらない」ことよりも簡単なのです。

解雇130(乙山商会事件)

おはようございます。

さて、今日は、外付けHDDの持ち帰りを理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

乙山商会事件(大阪地裁平成25年6月21日・労判1081号19頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが懲戒解雇されたが、当該懲戒解雇は解雇権の濫用であり無効であるとして、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに解雇後の賃金及び遅延損害金の支払いを求めるとともに、違法・無効な懲戒解雇により損害を受けたとして、その賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効
→平成24年1月18日から本判決確定の日まで、毎月25日限り、月額24万1400円の割合による金員+6%の遅延利息を支払え。

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 ・・・Y社の就業規則44条7号は、28条から37条までの規定に違反した場合であって、その事案が重篤なときは、懲戒解雇に処すると定めており、29条4項は、服務心得として、会社の業務上の機密及び会社の不利益となる事項を外に漏らさないことを定めている。
これを本件についてみると、Xが本件ハードディスクをXの自宅に持ち帰った事実は認められるものの、本件ハードディスクに保存された情報が外部に流出したことは確認されていないのであるから、Xが本件ハードディスクを自宅に持ち帰った行為が29条4項に該当するとはいえない

2 ・・・懲戒解雇は、懲戒処分の中でも従業員の身分を奪う最も重い処分であるから、懲戒解雇事由の解釈については厳格な運用がなされるべきであり、拡大解釈や類推解釈は許されず情報が外部に流出する危険性を生じさせただけで、情報を「外に漏らさないこと」という服務規律に違反したことと同視して懲戒解雇ができるとのY社の主張は採用できない
なお、仮にY社の主張を前提としても、就業規則44条7号は、服務規律違反の「事案が重篤なとき」に懲戒解雇に処すると定めているところ、情報漏洩の事実を認めるに足りる証拠がない以上、服務規律違反の「事案が重篤なとき」に当たらないことは明らかであるから、いずれにしても就業規則29条4項違反を理由とする本件懲戒解雇には理由がない

3 Y社は、Xによるハードディスクの無断持帰り及びY社の業務上の秘密及びY社に不利益となる事項を外に漏らした行為が普通解雇事由にも該当するとして、予備的に普通解雇の意思表示をしたものであるが、本件ハードディスクの無断持帰りによって、Y社に不利益となる情報が外部に漏洩した事実は認められないから、情報漏洩を理由とする普通解雇には理由がない。 

非常に参考になる裁判例です。

懲戒解雇の難しさがよくわかりますね。

就業規則の規定を素直に読めば、上記のような判断になるのでしょうね。

会社が、機密情報については、漏洩のリスクを極力回避するため、従業員に対して外部への持ち出しを禁止することは合理性があります。

問題は、このルールに違反した場合に、懲戒解雇を選択できるのか、という点です。

今回の裁判例は、漏洩の事実がないことを重視し、解雇を無効と判断しています。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介296 桁外れの結果を出す人は、人が見ていないところで何をしているのか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、久しぶりに鷹匠の「アンアン」に行ってきました。

写真は、定番の「ミックスピザ」です。

ピザです。 ピッツァではありません。

他のこじゃれたピッツァとは一線を画していますね。

生地が独特で、やみつきになります。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、新規相談が1件、交通事故の裁判が1件入っています。

午後は、建物明渡しの立会いが1件、新規相談が1件、裁判の打合せが1件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。

 桁外れの結果を出す人は、人が見ていないところで何をしているのか

著者は、サンリオの常務取締役、DeNAの社外取締役の方です。

この本はいいです! 

仕事を命を懸けているという方は是非、読んでみてください。 

きっと「まだまだ自分も甘いなあ」と思い、さらに仕事に打ち込むことになると思います。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私がつねに意識しているのは、『不安定さのなかで生きていく強さを持たなくてはならない』ということです。・・・サンリオ米国法人のCOOに就任したときに、サンリオの創業者である辻信太郎社長から、『社長の仕事は何か、知っているか?』と聞かれたことがあります。『会社がうまくいっているときは『何か見落としているんじゃないか』と胃薬を飲み、会社がうまくいかないときは、『どうやって会社をよくすればいいのか』と考えて胃薬を飲んでいる。それが社長の仕事なんだ』-。結局のところ、『安住の地』はどこにもないのです。」(54~55頁)

結局のところ、「安住の地」はどこにもないのです。

今、がむしゃらに仕事をしているみなさん、どこまで走りつづけても、安住の地はないそうですよ(笑)

どこかに頂上があって、そこから見える景色ってどんな感じなんだろう・・・と思うことがときどきあります。

でも、きっと、頂上なんてない。 

死ぬ直前にたどり着けたところが、自分の頂上なんでしょうね。

ミスチルもこう言っています。

地平線の先に辿り着いても また新しい地平線が広がるだけ

「もうやめにしようか?」 自分の胸に聞くと

「まだ歩き続けたい」と返事が聞こえたよ (GIFTより)

力が続くかぎり、仕事を通じて社会貢献をしていきたいです。 

賃金73 廃業を理由に解雇された元従業員による賃金等請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、廃業を理由に解雇された元従業員による賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

S社事件(大阪地裁平成25年1月25日・労判1081号87頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXらが、Y社に金銭の貸付けまたはY社のために立替払いをし、また、貸金の未払をあるとして、Y社に対し、消費貸借契約または立替払契約に基づく貸金、立替金および雇用契約に基づく賃金として、Xら合計1500万円(一部請求)の支払を求めるとともに、Y社の代表者であるAが、Y社の資産を個人的に費消して、Y社に損害を与え、XらのY社に対する上記各請求権を回収不能にしてXらに損害を与えたとして、Aに対し、債権者代位権または会社法429条1項の損害賠償請求権に基づき、同額の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xらの請求はいずれも認容

【判例のポイント】

1 本件各貸金及び立替金は、いずれもその貸付け又は立替金の日から消滅時効が進行し、Y社の業務に関するものであるから5年の商事消滅時効にかかるというべきである。
しかしながら、・・・Y社の代表者であるAは、本件各貸金及び立替金の商事消滅時効が完成した後、これらの債務について、保証金が返ってきたら必ず返すなどと述べて、その存在を承認したということになるから、Y社は、本件各貸金及び立替金について時効の利益を放棄したものといえる
よって、Y社が消滅時効を援用することは信義則上許されない

2 Aは、Y社が返還を受けた保証金1500万円のうち250万円は、C社に返済し、その余は、Y社の残務整理に一部使用した他は、上記借入金残金の返済に充てるため留保していると主張する。
しかし、・・・留保しているとする資金の保管先について何ら主張・立証がなされていないことすると、保証金相当額の資金は、すでにA自身の債務の弁済等、個人の使途に費消されたものと推認することができ、支払のために留保してあるとのAの主張は採用できない(なお、仮にAが未だ当該資金を費消していないとしても、その留保先を明らかにしない以上、Aの行為は、Y社の資産の隠匿に当たるというべきである。)。
かかるAの行為は、Y社の代表取締役として、会社財産を、善管注意義務をもって保管する義務に違反したものとして、任務懈怠行為に当たるというべきである
そして、Y社には、廃業の時点で、保証金のほかにみるべき資産はなく、Aが返還された保証金を個人的に費消ないし隠匿したことにより、Xらは、Y社から本件各貸金及び立替金並びに未払賃金の返還を受けることが実質的に不可能となったと認められるから、Aは、Xらに対し、会社法429条1項に基づき、本件各貸金及び立替金並びに未払賃金相当額の損害賠償義務を負う

X側とすれば、既に廃業しているY社からお金はとれないため、なんとかして代表者個人から回収する方法を考えなければなりません。

そこで、上記のように、代表者の取締役責任を追及したわけです。

もっとも、金額が金額ですから、代表者に自己破産をされてしまうとそこで回収不能となってしまいます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介295 成功哲学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

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←毎週日曜日は、海まで2時間ジョギングをしてから1日が始まります。

継続は力なり。 

続けることにより、あきらめない心を養っています。

今日は、午前中は、裁判員裁判の公判前整理手続が入っています。

午後は、離婚訴訟が1件、新規相談が2件、顧問先会社の社長との打合せが1件入っています。

夕方から、月一恒例のラジオです。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
成功哲学

ナポレオン・ヒルさんの本です。 自己啓発本の王道です。

先日、「悪魔を出し抜け!」を読んで、改めて著者の本を読み返してみようと思いました。

今回の本は、1967年に刊行されたものです。超ロングセラーですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

世の中には、目には見えないけれども、社会の隅々にまで行きわたって働いている力がある。徳は必ず報いられ、犯した罪は必ず罰となって帰ってくるという『代償の法則』がそれである。『代償の法則』をきちんと理解していれば、恐れや悪意が自分の心の中から消えていくのは、自分の良心に従って徳を積んでいくことで、自然と、それが自分に報いてくれるからである。人の窮状を救うために手を差し伸べれば、自分の窮状まで救われる。目に見えないこの力の働きを信じよう。」(358頁)

この「代償の法則」という言葉を知らなくても、同じような考えに基づいて生活している人は多いのではないでしょうか。

周りの経営者を見ていても、日頃から支援をしまくっている人は、いざというときに仲間が自然と集まってきて手を差し伸べてくれています。

私の周りの仲間は、みんな、もらいっぱなしなのは気持ちが悪いという感覚を持っています。

この本で出てくる「徳」という言葉、いい意味の言葉であることはわかりますが、正確な意味を考えることはありませんでした。

いい機会なので、辞書で調べてみました。

【徳】 1 精神の修養によってその身に得たすぐれた品性。人徳。「-が高い」「-を修める」

2 めぐみ。恩恵。神仏などの加護。「-をさずかる」「-を施す」

いい言葉ですね。

日常生活の中でいかに徳を積んでいくか。 まさしく修業です。 

ストイック人間には、たまらないですね。 30代は、とにかく徳を積みまくっていきます。 

不当労働行為87(大阪府(非常勤講師等・雇止め)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、特別職の非常勤講師の雇止めと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

大阪府(非常勤講師等・雇止め)事件(大阪府労委平成25年9月11日・労判1080号94頁)

【事案の概要】

平成24年1月27日、大阪教育合同労働組合(教育合同)は、府および府教委に対し、AおよびBを含む公立学校の常勤講師である組合員11名および公立学校の非常勤講師である組合員5名の雇用を継続すること、同年4月1日以降、Aを常勤講師として、Bを常勤講師または非常勤講師として任用することを要求して団交を申し入れた。

これに対し、府教委は、常勤講師および非常勤講師の個別任用に関する要求は交渉事項に当たらないと回答した。

平成24年4月1日、府教委は、AおよびBを公立学校の常勤講師または非常勤講師として任用しなかった。

【労働委員会の判断】

非常勤講師の雇止めは不当労働行為にあたらない

団交に応じなかったことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 教育合同が挙げる3点はいずれも組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとする理由とはならず、この点の主張は採用できない。

2 本件団交申入れに係る非常勤講師組合員5名については、その講師としての任用は、形式的には新たな任用手続によるものではあるが、実態としては、繰り返しの任用によって実質的に勤務が継続する中で、職種、校種及び勤務地区等の任用条件の変更又は前の任用期間における任用の継続であったとみるのが相当であり、任用が繰り返しなされて実質的に勤務が継続することに対する合理的な期待を有するというべきであり、したがって、労組法適用者である非常勤講師組合員5名について、「組合員について雇い止めを行わず、雇用を継続すること」という団交申入書の団交事項は、義務的団交事項に該当する
これらのことからすると、講師の採否について府教委には支配可能性がなく、当該交渉が実質的に意味のない交渉にならざるを得ないとする府の主張は採用できない。

形式論よりも実質論を重視した判断ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介294 勝負論 ウメハラの流儀(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

 勝負論 ウメハラの流儀(小学館新書)

著者は、先日、紹介しました「勝ち続ける意志力」と同じ方です。

前作がとてもよかったので、買ってみました。

こちらもとてもよかったです。おすすめです。

ゲームで勝つことに限らない、ビジネスにおいて勝つために必要なことが書かれています。

基礎・基本をこれでもかというくらい重視している姿勢に共感します。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・トンネルを抜ける瞬間が来るのは、本当に直前になるまでわからない。だんだん明るくなるとか、遠く向こうのほうに明かりが見える、ということはあまりない。急にふわっと視界が開ける。だから、その直前まではひたすら地味で、我慢、我慢の連続だ。それでも『開けるときは急にやってくる』と信じて、毎日マイペースで努力を続ける。終わりはないようで、やっぱりあるのだと思う。少なくとも今までの僕の経験上、終わりがなかったことはない。」(152頁)

司法試験などの資格試験をやってきた人は、この感覚がわかるのではないでしょうか。

最初のうちは、なんかわかったようなわからないような状態が続きます。

全体像(いわゆる「森」)がちゃんと見えていないので、どこを走っているのかよくわからないのです。

一周して、二周して、と何度も繰り返しているうちに、徐々に1本1本の「木」が「林」になっていき、最後に「森」の形が見えてくるのです。

大切なのは、「森」が見えるまで、我慢して走り続けられるかどうかなのです。

じっと我慢して、いつの日か必ず「森」が見えることを信じて、こつこつ努力を積み重ねられる人こそ、成功(合格)する人なのです。

1度、このプロセスを体験している人は、どんな仕事も試験も、結局、最後には「森」が見えることを知っているので、トンネルの中で走るのをやめたり、引き返したりしないのです。

地道な努力の積み重ねに勝る成功術は、未来永劫存在しないと確信しています。

解雇129(東京都(M局職員)事件)

おはようございます。

さて、今日は約3年間で72回に及ぶ遅刻等を理由とする停職処分の有効性に関する裁判例を見てみましょう(解雇事案ではありませんが、懲戒処分のカテゴリーがないので、便宜的に解雇のカテゴリーに入れました。)。

東京都(M局職員)事件(東京地裁平成25年6月6日・労判1081号49頁)

【事案の概要】

本件は、Y社がその職員であるXに対し停職3月の懲戒処分を行ったところ、Xが、Y社に対し、本件停職処分の取消しを求めるとともに、本件停職処分等に伴う減収分や慰謝料等として557万0198円の損害賠償の支払いを求めている事案である。

なお、本件停職処分は、Xが、平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間に、少なくとも72回にわたり、電車の遅延等を理由として出勤時限に遅れた上、72回のうち71回について、部下の職員に指示して、出勤記録を出勤の表示に修正させたことが地方公務員法32条及び35条の規定に違反し、同法29条1項1号から3号までの規定に該当することを根拠とするものである。

【裁判所の判断】

停職処分は無効
→停職処分に伴う減収分および慰謝料等として386万1239円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 ・・・以上によれば、Y社が本件停職処分の対象とした72回の出勤時限に遅れたとの事実は、本件全証拠によっても、その全てが客観的事実であると認めるに足りないものといわざるを得ない。確かにそのうちの一定の部分については客観的事実に沿うものであることがうかがわれ、この点はX自身も自認するところではある。しかしながら、Xが出勤時限に遅れたことがいつ、いかなる回数あったのかについて、具体的に特定することは困難といわざるを得ない

2 Y社が本件停職処分の対象とした72回にわたり出勤時限に遅れたとの事実及び71回にわたる出勤記録の出勤の表示への修正指示の事実は、Xが出勤時限に遅れたことが一定の回数あったことが認められるに止まり、その回数や日付を具体的に特定することは困難であると認められる。また、具体的な修正指示があったことを認めることは困難であるから、結局、本件停職処分は、その根拠となる主要な事実の存在を認めるに足りないものというほかなく、違法な処分として取り消されるべきものである

3 Y社が本件停職処分に至ったのは、Y社の担当職員がXの弁明にもかかわらず、職務上通常尽くすべき調査義務に違反して、漫然と本件停職処分の根拠となる72回の出勤時限の遅参と71回の出勤記録の修正指示を認定したことにあるといわざるを得ないから、Y社による本件停職処分は国家賠償法上も違法であり、Y社はこれによりXが被った損害を賠償する責任があるというべきである。
また、Y社は、M局の45歳の男性副参事に対し本件停職処分を行ったことを報道機関及びY社ホームページ等に講評し、本件停職処分の対象者として、Xの実名こそ報道されなかったものの、所属局名、職層、年齢、性別が報道されたことが認められるが、Y社による本件停職処分の公表も、Y社が通常尽くすべき調査義務に違反して、漫然と本件停職処分が行われたことによるものと認められるから、Y社はこれによりXが被った損害についても賠償する責任があるというべきである

「72回の遅刻と71回の出勤記録の修正指示をしたにもかかわらず、停職処分は無効なんて・・・」と考えるのは早計です。

会社側が調査を十分に尽くすことなく、懲戒処分に踏み切ったことから、訴訟になり、懲戒処分の対象事実を立証できなかったわけです。

解雇理由をはじめとして、懲戒処分をする際は、十分な調査をした上で、慎重に処分をすることをおすすめします。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介293 悪魔を出し抜け!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

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←先日、顧問先の社長と七間町にある「天文本店」に行ってきました。

昔ながらのお店で、伝統の味を提供しています。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、離婚調停が入っています。

午後は、浜松の裁判所で刑事裁判が入っています。

夜は、静岡に戻り、打合せが2件入っています。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は本の紹介です。
 悪魔を出し抜け!

 「思考は現実化する」で有名なナポレオン・ヒルの最新刊です。

1938年に書き上げながら、親族の反対により70余年封印されていたそうです。

ヒルさんと悪魔との対話という形で話が進められています。

なかなか読み応えがある本でした。 

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どんな一時的な敗北にも、どんな失敗にも、どんな逆境にも、必ずそこにはそれに見合うだけの成功の種が含まれているということだ。・・・四半世紀にわたる研究の結果、私はさまざまな原理をいくつも発見してきたが、なかでも最も印象深かったことは、過去の偉大な指導者たちの中で私が記録を調べた人々は、一人残らずその『到着』の前に、困難にさらされたり、一時的な敗北に襲われていたことだった。」(64~65頁)

要するに、成功というゴールの前には必ず失敗がつきものだということです。

このことは、多くの成功者の本を読めばよくわかります。

途中で、何度か失敗を繰り返すことが、成功への必要条件であるようにさえ思えてきます。

すぐにあきらめずに、修正を加えながら、最後までやりきることが成功する最良の方法ではないでしょうか。

不当労働行為86(大阪市(組合事務所退去)事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、組合事務所の退去を議題とする団交に応じなかったことと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

大阪市(組合事務所退去)事件(大阪府労委平成25年8月28日・労判1080号95頁)

【事案の概要】

平成24年1月30日、大阪市は、市労連、市従、学職労らおよび学給労に対し、各組合が使用している本庁舎地下1階事務室について24年度以降は使用許可を行わない方針であり、同年3月31日までに退去するよう求める文書を交付した。

これに対し、市労連らは、市に対し、事務室退去に関する団交を申し入れたが、市は、団交申入れには応じられないと回答した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 本件申入事項はいずれも、組合らと市との団体的労使関係事項であり、原則として、義務的団交事項に当たる。

2 市は、本件申入事項の主要議題が組合事務所設置に係る本庁舎の目的外使用許可であり、目的外使用許可を与えるか否かは管理運営事項に当たる旨主張する。
確かに、行政財産である本庁舎について目的外使用許可を与えるか否かの判断そのものについては、市が自らの職務、権限として行う事項であって、管理運営事項に該当するものの、本件申入事項は組合事務所に関連する事項全般であって本庁舎の目的外使用許可そのもののみを対象としているとみることはできず、また、組合事務所設置に係る本庁舎の目的外使用許可に関する処理が組合らとの団体的労使関係に影響を及ぼす範囲において、義務的団交事項に当たるとみることができるのであるから、本件申入事項が管理運営事項に当たるため、本件団交申入れに応じる義務がないとする市の主張は採用できない。

3 以上のことからすると、本件申入事項については、行政財産である本庁舎について目的外使用許可を与えるか否かは管理運営事項に該当して団交事項とすることはできないものの、組合らとの団体的労使関係に影響を及ぼす範囲では義務的団交事項に当たるとみるべきであり、市はその影響の及ぶ範囲において本件団交申入れに応じなければならない

団交の内容の一部に義務的団交事項でないものが含まれている場合であっても、それ以外の内容が義務的団交事項であれば、やはり原則通り、団交に応じなければなりません。

義務的団交事項であるか否かは、広く解釈されますので、ご注意下さい。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。